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SkyrimとFallout4・76の二次創作メインブログです。 たまにMODの紹介も。
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04.20.04:57

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  • 04/20/04:57

09.07.20:02

Compassion.

※Skyrim二次創作小説第4チャプターです。その手のモノが苦手な方はブラウザバックでお帰りを。

これは第4話です。1話から読みたい方は「Taken.」からお読み下さい。(二次創作カテゴリから楽に飛べます)


 夜が明ける。
 しかし、ソルスセイムは殆ど毎日灰が空中に舞うせいで空を雲が覆い、日差しを遮ってくれるせいもあって、セラーナは特に気にも留めなかった。留める事さえ最近は疎ましく思うようになっていた。
 彼女はぼんやりと港の方を見ている。ソルスセイム唯一の玄関口があるレイブンロックの港。お世辞にも港とは言いがたいこぢんまりとしたそれではあったが、それでもスカイリムとこの島を繋ぐ重要な場所だ。レドランの衛兵がひっきりなしに見回りをしている姿はそこかしこに見受けられるのがそれを物語っている。
 小さい港だからこそ、他の港と違って船が手狭に押し込まれている事もなく、また泊めてある船の数も少ない。目に写る分だけでも、小さなボートとスカイリムへ行くやや中型の船が係留されているだけだった。
 そんな港の入り口付近で、セラーナはぼんやりと船を待っていた。ソルスセイムからスカイリムへ向かう船を、唯一人で。
 傍らに、長い時を共に行動を続けてきた男の姿は──無い。何故なら自分は昨夜、その男に別れを告げられたからだ。……ものすごく一方的に。

『……えっ?』
 当惑を滲ませた声をセラーナは上げた。聞き間違いかと思ったのだ。別れよう? 別れようってどういう意味だ、と。
 目前に座っている男は、連日眠れないせいで顔全体に疲労度をべっとり滲ませたまま、うんざりするような態度で再度同じ事を言った。
『今言った通りだ。……この辺で別れよう。今まで世話になった』
『そういう事を聞いているんじゃありませんの。私が聞きたいのは、』
 セラーナが食い下がるようにまくし立てようとしたのを止めるかのように、男──ジュリアンだ──は手でそれを制した。聞きたくない、と言いたげな態度にセラーナは軽く胸が痛む。
『俺から言えるのはそれだけだ。……長い間、色々と俺を助けてくれて本当にありがとう。……感謝している』
 勝手に結論付けようとしている。セラーナはむかむかと苛立ちがつのり、立ち上がってテーブルをばん、と強く叩いた。木製のテーブルがびりびりと震える。
『何を勝手に決め付けてるんですの? 私の意志は関係ないと思っているんでして? ふざけないでいただけます?』
『ふざけてなんかいない!』
 ジュリアンが見上げる形でセラーナの目をまっすぐ見ながら叫ぶ。セラーナはその時、ジュリアンの瞳の中に怯えとも畏怖とも似つかぬ何かが蠢いているような気がした。
 何に怯えているのだろう? 眠れていない事、そして今切り出してきた突然の別れ……全ては繋がっている。しかし、当の本人が彼女に話そうとしないのだから始末におえない。
 大声で反論してしまった自分に気づいたのか、ジュリアンははっとした表情を浮かべ、その後セラーナに目を向けず、逸らすようにして俯く。
 何かを隠している事を気取られまいとでもいうのだろうか。誰の目にも彼が何かを隠しているのは手に取るように分かるというのに。
『……すまない。大声を出してしまって』
 ばつが悪そうにぼそぼそと謝るジュリアン。
『なら何を隠しているのか仰ってくれませんですこと?』
 尚も食い下がるセラーナ。……しかしジュリアンは話す替わりに頭を数回横に振った。
『それは……出来ない』
『何故?』
 間髪を入れず問い返すセラーナ。その剣幕にジュリアンは圧倒したかと思いきや、すっと立ち上がったのでセラーナは話が終わらず寝室に戻るのかと身構えた。もし戻るのなら阻止してやろうとでも思ったのだろうが……そうではなく、テーブルをぐるりと回ってセラーナの傍までやってきた。
『……?』
 何をしでかすのか、と思った次の瞬間……がしっ、とセラーナの両肩に手を置いた。置いたというよりは掴みかかったと言っても過言ではない、彼の大きな手のひらに華奢な彼女の肩はじわりと痛みを訴えてくる。
 セラーナは痛いと言ってやろうかと思ったが、言えなかった。じっと自分を見つめる彼の顔を見たら言えなかったのだ。その顔は悲しみよりも悔しさを滲ませていた。
『お願いだ──俺に、最後まで君を守らせてくれ。それだけが、今言える精一杯の説明なんだ。……別れを告げたのに、こんな事を言うのは変かもしれない。けどいつか、これが正しいと分かってもらえると信じているから……』
 間近に居たため、つん、とジュリアンの汗の匂いがセラーナの鼻につく。ここ数日毎晩のように汗で濡らした衣服を見ていたため、セラーナは別段嫌だとは思わなかった。
『別れを告げておいて“最後まで守らせてくれ”ですって? 意味が分かりませんわ。納得できる説明を要求いたしましてよ?』
 ジュリアンは渋面のままだったが、次にはふっと自嘲めいた笑みを浮かべた。
『ああ、そうだな。……こんな事をすれば、俺に対して嫌気が差すかもしれない。でも……それでもいい。言い訳がましく言いたくはない……が、一つだけ言わせてくれないか。
 君を守るという約束を反故にしたつもりはない。守るために別れを選んだと思って欲しい。……失礼だと承知で言ってる。悪く思わないで欲しい。
 スカイリムに戻ったら、ヴォルキハル城のヴァレリカの所にいれば安全だ、ミラークの影響範囲はソルスセイムを出れば無くなるからな』
 その名前が出た瞬間セラーナはぴんときた。やはりその名前が原因か。『ミラークの事なんですのね、やっぱり。ジュリアンがやたら怯えるその理由は?』
 ジュリアンはしまった、と小さく舌打ちをしたが、今更言い訳をしても無駄な事は分かっていた。しかし、彼女の問いには答えず、
『明日、スカイリム行きの船が発つ筈だ。それに乗ってスカイリムに戻ってくれ。
 ……話は以上だ。ごめん、突然な話で』
 ゆっくりと、セラーナの肩においていた手を離すと、ジュリアンは悲しいとも寂しいとも取れる表情を見せて、黙って寝室へ戻っていった。話は終わってないと尚も食い下がるセラーナを無視して、彼は寝室の扉を閉め切ってしまった。

 何度も呼びかけたが、反応は無く。
 朝になっても扉を開けようとしないジュリアンに、自分が出て行かない限り彼はここから出てこないんじゃないかと思ったりもした。
 ……でも別れを言われたのは間違いない。最早自分がこの場所に留まる必要はないのだ。──セラーナの心の中でそう結論が出た時、彼女は一晩中叩いていた寝室の扉から離れた。
 扉を叩く事も、反論する事も、する必要がない──何故なら自分はもう彼の連れでもなければ従者でもない。
 ホワイトランの首長の謁見の間で、ジュリアンが彼女に忠誠を誓った事も、今となっては過去に誰かと交わした口約束同然の行為に過ぎなかった。……全ては終わったのだ。別れを告げられ、暇を出された時点でジュリアンとセラーナには縛る契約も忠誠も何一つ泡沫同然に消えてしまった。
 そんな簡単なものだったのだろうか。一方的に別れを告げられる程、自分と彼の間には何もなかったのだろうか。常に見ていた、追っていた者の姿が無いだけで、自分はこれほど胸騒ぎがした事があったか……
 と、物思いに耽っているセラーナを余所に、カーンカーンとけたたましい金属音が鳴り響いてきた。彼女は思わず伏せていた目を開けてみると、
「スカイリム行きの船間もなく出港ー! 乗る方は急いでご乗船をー!」
 船員のどら声と、その船員が叩く金属音──どうやら金属のお椀の底を短剣で叩いているようだ──が同時に鳴り響いているため、聞きにくい事この上なかったがとりあえず急いで船に乗らないといけないのは確かなようだった。
 セラーナは立ちつくしていた足をゆっくりと桟橋の方へと歩き出した。船と桟橋を掛ける板の前に船員らしき男が乗る者から乗船代を受け取っているのが見て取れる。払えばあとはスカイリムに着くまで船の中に居ればいいだけだ。
「へい、お嬢さん、スカイリムまではセプティム金貨250枚ね」
 馴れ馴れしい言い方に、かつての自分だったら眉を吊り上げて反論していたかもしれないな、とセラーナが思った途端はっと気づいた。
 ──そうだ、かつて数年前にも、同じ胸騒ぎを覚えた事があった。あれは自分がディムホロウ遺跡の中で目覚め、ヴォルキハル城まで送ってもらった際──彼が父、ハルコンと対峙した際に──

『悪いが──吸血鬼には、ならない。俺はあんたの娘を送っただけだ。お土産に吸血鬼にされるのはまっぴらごめんなんでな』
 四面楚歌──そう言われてもおかしくない。
 周り一面吸血鬼しかいない中、ジュリアンは父にそう言ったのだ。彼の言い方に周りの吸血鬼はどよめいた。人間の分際で王になんたる言い方を、といったような事がセラーナの耳に入ってくる。
 父ハルコンはジュリアンの言い草に眉を吊り上げたりはせず、黙って頷いた後、
『それもよかろう……だが、二度とこの地に踏み込むな。お前は我らにとって敵、それはお前も同様だろう? 娘を助けてくれた事には礼を言う。……さらばだ』
 そう言った後父によってジュリアンは昏倒させられ、島の外れ、船を泊める係留所に捨て置かれたのだ。
 ジュリアンが島から出て行く姿を、城の中でセラーナは黙って見ていた、その時と同じなのだ。
 あの時は、たった数日しかジュリアンと旅をする機会はなかった。それなのに、前に居る者の姿が居ないだけで自分はこんなにも胸騒ぎがする。
 何故だろう? 母ヴァレリカの傍に居た時はそんな事なかった……いつもヴァレリカの傍に居たから。
 それは自分が────

「……やっぱり、やめますわ。まだやり残した事があるんですの」
 船員にそういい捨ててセラーナは踵を返した。足早に港を出てそのまま右へ曲がり、そのままレイブンロックを出て行く。
 行く先は一つしかなかった。ジュリアンが言わないのなら、彼が何に苦しめられているか聞くしかない──スコール村のストルンに。


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 前回がめちゃくちゃ長かったので今回はちょっと短いところで区切ってみました。いや、ほんとはもう少し先で終わらせるつもりだったんですが・・・多分前回以上に長くなるのが見込まれたので・・・。

 俺の書くセラーナは悉く色んな方から「かわいい!」といわれます。多分俺の願望が120%超で出てるためでしょう(笑)。
 今回も相当そういう俺の願望が脳汁としてだだ流れした妄想1000%な話になると思いますがほんとすいません。懲りずに読んでやっていただけたら幸いです。

 俺はドラゴンボーンDLCはまだ全然終わって無いし自キャラどばきん(ジュリアン)は岩の開放すらやりたくねーという(?)理由で全然やってません。
 まぁでも多分このDLC、ミラークさんが強敵なだけじゃつまらないと思うんですよ。ストルンも言ってましたけど(最初の頃)、
「あんたはミラークと同じなのか? ならあんたも同じ道を通る奴なのか?」
 多分ミラーク側に着いちゃうシナリオはないんでしょうけど(俺の知る限り)、同じ道を通るならミラークさんは気に食わないか、もしくは今後自分の話で出てくるような手段を取るか、二択になると思うんですよね。
 でも確かドラゴンボーンて同じ時代に二人以上居る事もあるって本に書いてなかったっけ? ならミラークさんとキャッキャウフf……じゃなくて仲良くやっていける道だってあってもおかしくはないんでしょうけど。
 あ、でもだめか。ミラークさん竜教団を裏切ったとかいってたしミラークさん元々死んでる人だからだめですな(あっさり完結

 
 中の人は話を考えるのが好きです。だからドラゴンボーンDLCも「自分のキャラだったらこうするだろうな」とか「自分(以下略)ならここから別の話を作ってこうなってああなって」とかそういうのがたまらなく好きです。
 今までこのブログに書いてきたプレイ日記ならぬリプレイ小説(新ジャンル確立しました!w)、や妄想で作ったアナザーストーリィ(今書いてる奴ですな)も全て自分がプレイしながら考えて作った妄想の産物です。
 話を作るとき、やはり表立って出てくるのは自キャラ(ここではジュリアン)なので、各々の世界で作られるスカイリムにはちょっとどうかなぁと思ってた時もありましたが、2年半書いてきて、好評も得られるようになってきたのに改めて感謝しております。
 自分の作り出す世界を貫き通していけば、やがてそれが一つの個性となり受け入れられる──
 今もそう願って、話を細々書(描)いております。
 
 初めてスカイリムの二次創作を書いた時(ここで)、当時は誰も見に来る人はいませんでしたw
 まぁ自分のマーケティング能力が0だったからってのも(ビビリなせいもありますが)あって、ブログを開設して数ヶ月は誰も来ない日が続いたかな。
 それだけ、自分の世界を、自分の作る話を認めてもらえる(見てもらえる)のは大変な事なんだなぁ~~~と痛感しました。
 コミケで新刊出したときだって誰も来なかったしね(笑)
 今でこそわざわざ自サークルに来て下さる方が細々増えてきて、ビビリなだけじゃだめなんだなぁと痛感する事ばかりです^^;
 なので、ココの話もしっかりアピールしていこうと・・・いや無理かな・・ビビリな性格を直したい(涙

 色々書きすぎましたorz
 まだまだ続きますが、読んだ感想その他ご意見ご指摘つまらない等の意見もお待ちしております^^
 ではまた次のブログ更新日に。

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08.31.03:12

Threat.

※Skyrim二次創作小説第3チャプターです。その手のモノが苦手な方はブラウザバックでお帰りを。
1話から読みたい方は「Taken.」からお読み下さい。

 ザッ、と風を切る音。直後、ざくっと何かに突き刺さる鈍い響き。
 オォォ……と叫ぶ異形の敵は、致命傷だったのか痛みをこらえて思わず上げた断末魔。しかしまだ耐えられるらしく、よろよろとその場で身をよじりながらも、こちらに対する鋭い敵意の目を向けることを止めてはこない。
「っ……まだ倒れないのかよ」
 手にした両手剣を再度相手に向けようと力を込める。疲労を蓄積させないように腕をまっすぐ伸ばして構えるものの、ずしっとのしかかる両手剣の重さが腕の疲労を物語っていた。……長くは持ちそうにない。
「セラーナ、俺が斬りかかった後、魔法で援護してくれ。次こそ仕留めてやるからよ」
 傍らで魔法の詠唱を始めているセラーナに小声で話しかけると、彼女は返事をする代わりに僅かに頷いた。詠唱中は話すことが出来ないとこちらも分かっているため、そのまま再び異形の“敵”──ルーカー・ガーディアンというらしい──の方へ向き直り、間髪を入れず大地を蹴って走り出した。
 しかしルーカーはこちらの動きを読んでいたらしく、長い腕で身体を防護するかのように腕を交差し、身構える。そんな事をしたって無駄だ!
「これでとどめっ……!」
 走りながら剣を振りかぶり、一気に間合いを詰めて──振り下ろした時だった。
 腕が鉛のように重かったのを無理して振りかぶったせいではなかった。腕よりも自分の身体全体が悲鳴を上げていたのを今この時に──振り下ろす剣と同時に体勢を崩し、灰交じりの雪に足をとられて剣ごと前のめりに倒れこんだ瞬間に気づいたのだ。
 はっとした瞬間、既に剣は敵の脇を逸れ、代わりにルーカーの腕がこれ幸いと俺の右脇腹にクリティカルヒットしていた。
「がは……っ!」
 自分が走ってきた勢いと、ルーカーのアタックが相殺されたかのように一瞬、互いの動きが僅かに止まった。が、敵の攻撃の方が威力が凄まじかったらしく、成す術無く俺は無様に吹っ飛ばされてしまう。
 しかし幸いなことに、地面から足が離れる事なく殴り飛ばされたのもあって遠くまで飛ばされることはなんとか免れた。が、貫かれるような鈍い痛みに耐え切れずその場で倒れこむ。殴られたせいで胃液が逆流し、俺は息をする間もなく咳き込みながら口から胃液を吐き出すのが精一杯だった。
 吹っ飛ばされた影響で剣は俺の手から離れてしまっている。やや後方からがしゃん、と地面に当たる鈍い金属音が聞こえた気がしたが、それを取りに走れる体力なぞ残っていない。
 膝を着いて息を荒げる俺にゆっくりと、ルーカーが音も無く近づいてきた。武器を失い、肩で息をしている俺は既に刃向かう手段すら持たないと思っているようだった。……気取られるな。相手に隙を与えるんだ。
 息を整えようと努力しつつ、心臓は高鳴りを止めなかった。ルーカーがじりじりとこちらに近づいてくる姿から目を離さないまま、右手で腰に括り付けてある短剣をゆっくり引き抜く。カシッ、と鞘から抜き身が引き抜かれる僅かな音が響いたが、敵は気づいていない。
 ガーディアンは俺の足元でひたり、と止まると押し潰そうとでもするかのように、大きく腕を振り降ろしてきた。今しかない、右手に持ったダガーを振り下ろす奴の腕に突き刺そうとした刹那──光の粒がガーディアンの腕をざしっ、と音を立てて貫いた。いや、光ではない、それは光を反射する凍てついた氷の礫──
「ジュリアン! 何ぼさっとしてるんですの! 今ですわ!!」
 セラーナの声と、ルーカーの顔がぐるり、と彼女の方に向いたのはほぼ同時だった。敵の腕を貫いた氷の刃は簡単に溶けはしない。じわじわと貫いた箇所から凍らせるその魔法──アイス・スパイク──はセラーナの得意魔法の一つだった。得意なだけあってその威力は凄まじく、時々標的を間違って俺に突き刺さる場合もあるのだが、それがまた痛いの冷たいのなんのって……
 などと悠長な考えに耽ってる暇はなかった。ルーカーは俺よりもセラーナを先に始末しようと決めたのか、足早に彼女の方へと近づいていく。低い呻り声を上げているのは、痛みからくる悲鳴だろうか。
 とはいえこの僅かな間を与えてくれた事は有り難かった。俺は重い身体をよじるようにして立ち上がる。呼吸はまだ荒いが肩で息をするほどではなくなっていた。敵が気配を察してこちらを向いたと同時に、どん、とそいつの身体が揺れた。──ルーカーの巨体にぶつかる勢いで、先程から握り締めていた親父の形見である鋼鉄のダガー、その抜き身を敵の背中に突き刺したからだ。
 そのまま力任せに押し込む。手ごたえは確かにあったが人間のそれとは全く違う感触だった。抜き身が食い込む度、ばりばりと硬いなにかを突き破るような音が体内で鈍く響く。あまり聞きたくない音だった。
 先程セラーナに受けた氷の刃の時よりもさらに大声で呻き声を上げ、ルーカーがじたばたともがく。何せ背中に突き刺したのだ……相手は手も足も出せなかった。
 何度か無駄な抵抗を試みた後、ルーカーは体力が尽きたのか、抗う行為を突然止め、ふっ……と力が抜けたようにその巨体を地面に叩きつけた。どしん、と地響きがあがる。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
 完全に力尽きたのを確認してから、俺は突き刺したままのダガーを引き抜いた。血すら流れない無機物の身体を見ていると不気味というより奇妙にも思えてくる。これもまた、ミラークの作ったモノなのだろうか……
「大丈夫ですの?」
 セラーナが駆け寄ってきた。途中どこかに落ちてたのだろう、俺の両手剣を差し出してくる。探す手間が省けた。
「ああ……、大丈夫だ。ありがとう」
 剣の柄を握って彼女の手から離れた瞬間、ずしりとその身の重さを感じた。腕が悲鳴を上げる程の重さじゃない筈なのに……
「……ルーカーも倒したし、岩の浄化をしないと終わらないな。下がってろ、セラーナ」
 そう、俺達はミラークによってソルスセイム島の島民が洗脳──操られているといった方がいいのか? ──されている原因であろう島の各地にある岩をミラークの呪縛から解くべく行動していた。これで三つ目の岩を浄化することとなる。
 ストルンから助言を得て、風の岩でスコール村の村人を解放させてから俺とセラーナは数日おきに岩を開放する作業を行っていた。
 だが、風の岩を開放してすぐ、俺は毎晩同じ場所の夢を見るようになった。以前はこの島で眠るとミラークによって岩や聖堂の復活作業をするよう操られていた事が、今度は夢の中で呪縛に苦しんでいる。……しかしそれは、ミラークが岩の浄化を止めさせようと、俺の夢に直接呼びかけているに違いない。
 だからこそ俺は岩がある場所まで出向き、優先的に浄化を行ってきたのだ。岩の浄化が全て済めば、ミラークの、島民や俺に影響を及ぼす力が無くなる筈だ──と。
 風の岩を浄化してまだ10日も経ってないのに、石を浄化するのは骨が折れる事ばかりの連続だった。ソルスセイムは小さい島とはいえ、岩は島のあちこちに点在しているし、北部は山岳地帯が連なっている事もあって平坦な場所は殆ど無く、挙句雪が降り積もっていれば自然と慎重に進まねばならず時間も食う。毎晩満足に眠れないのと、移動に時間がかかるのとで岩に着く頃には疲労困憊になっている事のが多かった。
 先程のように岩の浄化を行おうとすると現れる、ルーカーと今回で三度目の戦闘だったが、毎回僅差で勝てるような具合だった。セラーナの援護がなければ勝てていたかどうか……。
 などと悠長に考えている暇はない。今は岩の浄化を済ませないと。
 身体はよろよろと、まだ吹っ飛ばされた影響から脱せない状態ではあるが、俺は岩の前に立ち、叫んだ──“Gol.”
 発したはずの“叫び”は音すら出ず、しばしの間何の変化もなかったが、やがて岩の周りに覆われてあった緑色の光が力尽きたようにふっと消えた。それと同時にルーカーが出てきたと同時に倒れてしまった、島の人々が徐々に目を覚ましていった。
“服従”のシャウト、人々を操られる呪縛に陥れている原因──岩にかけられたミラークの力を解放させるに必要なシャウト。今はミラークの力から人々を解放させる程度の能力しかないが、段階を経ていけばやがて凄まじい力をも得ることが出来るという……ストルンはそう言っていた。
「やれやれ、終わったな」
 その場で座り込みそうな位疲弊している身体だったが、一度でも座れば立ち上がれなくなるのが分かっていたので我慢した。既に日は西に大きく傾き始めている。今からレイブンロックまで戻るのはきつい道だ。急がねばならないな。
 心の中で一人ごちりながら、俺は腰のベルトに括り付けてある薬瓶を取り出して口に含んだ。休息の薬──体力ではなくスタミナを回復させる生体賦活剤の一つ。眠れない日が続くようになってから、俺はこの緑色の薬瓶を口にする事が増えた。体力だけ回復しても、スタミナが減っていては打撃攻撃は力が入らないし先程のように、いざという時に倒れてしまっては今後に支障が出る──
「ジュリアン、こんなに無茶しなくてもよろしいじゃありませんでして?」
 岩の浄化をするために、一時離れてたセラーナが傍らに戻ってきていた。彼女は俺の顔と口に運んでいる緑色の薬瓶を交互に見ている。
「……無茶してるって? 俺が?」
 努めて平静に答えたつもりだったが、彼女は最近よく見せる、俺を気遣うような心配するような眼差しで見据えたまま、
「ええ、何かにとり憑かれたかのように岩の開放に躍起になっているみたいに見えますわ。まるで何かに怯えるように……」
 数日前、セラーナの目前で見せてしまった醜態のことを言っているのだとすぐに気づく。情け無いよりも今はただ──怖かった。夢が夢でなくなるような気がした。だから俺は浄化を続けるしかなかったのだ。
 普通なら馬鹿げていると思うであろう事を、今の俺は否定ができないから。
「……怯える事なんてないさ。暗くなる前に帰ろうぜ、セラーナ。山の天気は変わりやすいからな」
 目が覚めた島民達は首を振りながら、自分が何故この場所に居たのか分かっていない様子で帰路についた。リークリングの姿も見えたが夢から醒めたかのようにぼんやりとした足取りでいずこかへ去っていく。俺とセラーナも帰巣本能に従って歩いていく島民の人に倣うようにして岩から離れた。
 セラーナは納得しない様子で俺の後方をついてきているが、俺は彼女の顔をまともに見れなかった。気遣ってくれる彼女の気持ちは素直に嬉しい。それなのに何も言えないのは失礼だと分かっている。なのに──この時の俺はまだ、自分のプライドが許さなかった。話せば夢が現実になりそうな気がしたのだ。
 意を決して打ち上げて、彼女が笑い飛ばしてもらえたらどんなに気が楽になるだろう……。
 そう思った事も何度もあった。でもミラークの力が計り知れない今、迂闊に話すべきでないのも事実だ。現に島の住人が眠れば、聖堂や岩を再建する為に操られてきている。
 今の俺に出来るのは、一日も早く岩を浄化し、ミラークの力を取り戻そうと操られる島の住人たちの呪縛を解くことだ。それが終われば俺も安眠できるようになる。きっと。
 今夜も眠れないのだろう。そして夢でまた──ミラークが俺を脅してくるに違いない。岩の浄化を止めようと……


『……それ以上刃向かえば、次目覚めた時、貴様は青ざめるだろう。
守りたいものを守れず消え行く自分の愚かさと、守りたいものがじわじわ嬲られていく、狂気の有様を!!』


「……にをするつもりだっ!」
 口から出た言葉に目が覚めたのは、これで何度目だろうか。目を開き、仰ぎ見るといつもと変わらぬ光景。セヴェリン邸の寝室の天井。
 しかし今回だけは違った。俺は慌ててベッドから飛び起き、汗で張り付いたチュニックを脱ごうともせず寝室の扉を開けた。
 その途端、
「ど、どうしたんですの?」
 自分が扉を開けようと思ったのだろう、右手をドアノブに向けて差し出した格好のセラーナと鉢合わせする感じになってしまった。ぎくりとする。まさか彼女の様子を見に飛び起きたなぞ言える筈が無い。彼女は俺の呻き声を聞いただろうか?
「え、あ、あぁ……水が飲みたくなって」
 咄嗟に誤魔化してみせた。セラーナはきょとんとした表情で俺を見ていたが、ふい、と突然背を向けるとキッチンのある台まで無言で歩いていく。何をするのかと思えば樽の中に入っている水をジョッキに入れてくれていた。
「また眠れないんですのね。……どうぞ」
 扉の前で所在無く突っ立っているのもあれなので、やむなく俺はキッチンの傍にある長椅子に腰かけると、彼女がテーブルにことり、と水の入ったジョッキを置いてくれる。飲まないのも変なので一気に呷ると、思いの外自分の喉が渇いてたのだと気づかされる。
「──ジュリアン」
 と、セラーナがテーブルを挟んで向かい側に座った。じっとこちらを見据えている。帰りがけに見せたあの視線と同じ……
「……これで十日以上、ジュリアンは満足に眠れてませんわね? あなたは私と同じ闇の眷属に入った訳でもないのに、毎晩うなされて汗びっしょりで目覚めてばかり。なのに私にその理由をいつまで経っても教えてくれないのは何故でして? そんなに話したくない事なんですの?」
 いい加減、何でもない、で済まされる状況でないのは分かっていた。彼女も本当なら俺から言ってくれる事を待っていた筈だ。しかし言わないばかりか、毎晩夢にうなされ、挙句起きている時は戦闘を行うのもやっと……普通なら体力回復を最優先することを、俺は岩の浄化ばかりに捉われている──と思われてもおかしくはない。
 全てをあらいざらい話したかった──けれど。先程夢に見た、ミラークの発した言葉。
『次目覚めた時、守りたいものがじわじわと嬲られる──』 
ぞくりと悪寒が背筋を這う。間違いなく俺に対しての脅迫だった。あいつは知っているのだ。俺が命を賭して守りたいものが何なのかを。そして、次に俺が目覚めた時……つまり、これから先。
「セラーナ、頼みがある……」
 え、とセラーナの口から意外そうな言葉が漏れる。──こんな事、絶対に言いたくはなかった。言う事もないと思っていた。彼女に対して出来ることはこれしかないのか、と諦めたくない気持ちと、これしかないんだ、と決心した気持ちがせめぎ合っていた。──でも俺の腹は既に決まっていた。これしかないんだ。
 俺は彼女の視線を受け止めようと、まっすぐその目を見て、穏やかに言った。
「別れよう」と。





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遅くなって本当にすいません(すいませんといってるけど読んでくれる奇特な方がいらっしゃるのかどうか^^;
今回は本当にココまで来るのにめちゃくちゃ難産で・・頑張りました。一応結末まではしっかりプロットあるのでちまちま書いていきます。どうぞよろしく。
そして現在夜中の3時(笑)おやすみなさい。

ご感想その他意見いつでも大歓迎デース!

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08.22.14:15

Fear.

※Skyrim二次創作小説第2チャプターです。その手のモノが苦手な方はブラウザバックをどうぞ。
これは第2チャプターです。1話から読みたい方は前回の日記「Taken.」からどうぞ。


 同じ夢を繰り返し繰り返し見ることは、あるかい?
 それが全く違う場所から始まったとしても、行き着く先は同じ場所、同じ光景、同じ“コトバ”──
 でも夢から醒めれば、それは夢だったって胸を撫で下ろすだろう。

 “起きた”場所も、夢の世界でなければ、ね──

「───ッ!」
 目を開ければ、まっすぐ瞳孔を貫くように飛び込んでくる光。焼き尽くされるような痛みと共に俺は思わず手を目前へかざす。
 かざした手によって目を焼き尽くされることは免れたが、その次には倦怠感が全身を包み、持ち上げていた腕すら支えているのもままならない。
「……はぁ、はぁ、はぁ……」
 荒い呼吸音を整えつつ、薄ら目を開けたまま、ゆっくりと腕を下げると……そこには変わらず見慣れた天井。いつも眠る場所で、瞼を閉じる寸前まで見ているであろうもの。
 ……また、あの夢を見たのか……。
 あの日から始まった、毎日繰り返す夢。繰り返し見る光景……思い出すだけで吐き気がする。枕の上で転がすようにして頭を数回振った。今はあのおぞましい思考を振り払いたかった。一体なんで、こんな悪夢を見るようになっちまったんだろう……
 これか、と思う原因はあった。だから出てくるのだろう、ミラークが。復活を邪魔する俺を阻止しようと……。
 眠気はすっかり失せてしまった。仕方なく俺はベッドから上半身だけ身を起こす。落ち着こうと思わず胸に手を当てたとき、また自分の身体が汗でじっとり濡れていることに気づき、思わず舌打ちを打った。またセラーナに訝しがられてしまう……
 そう思ったところで、俺が起きた事を察して彼女が寝室に来たりしないかと思わず息を殺して気配を窺ってしまう。
 ……が、寝室に向かってくる足音は聞こえてこなかった。俺が寝ている間、セラーナは大抵、上にしつらえてある暖炉の辺りで身を温めている事が多い。眠らない彼女にとって俺が寝ている時間はさぞ退屈らしく、暖をとりながらそこで俺が起きる朝まで過ごしているのだ。
 すっかり目が覚めてしまったため、ベッドから起き上がりしな、また汗でじっとり濡れてしまったチュニックを脱ぎ捨てた。
 ……ここ数日、満足に眠れていないのは自分が一番分かっていた。毎日毎日、同じ夢を繰り返し見るのだ……同じ場所で、同じ光景を。
 悪夢を司るヴァーミルナのせいかと最初は思った、が、それは違うとすぐに思い至った。夢で見る場所はハルメアス・モラのアポクリファの中だけだったし、それに……
「………」
 無言で自分の手のひらを見つめる。何も掴んでないし、何もない。やや汗ばんだ手のひらが視界に写るだけだ、何もおかしなところなど無い。
 俺は重い腰を上げてベッドから立ち上がり、寝室を出る。上半身裸に素足という井出達でぺたぺたと室内を見て回るが、やはり地下にセラーナの姿は無かった。首を動かして辺りを見回したところで、やはり上か、と建物の真ん中にある幅広の階段を上っていく。
 階段を上がろうとした時、何か上着を着てくればよかったかなと思ったが、家の中は寒いと感じない位の暖かさだったため、戻ろうとせずそのまま階段を上がる。
 一階に着くと、玄関扉が正面に現れた。そして階段を中心にぐるりと開けたホール状の部屋。間仕切り等はされておらず、玄関扉と向かい合わせの壁に暖炉と鍋がしつらえてあるだけの簡素な部屋だ。
 階段を上りきったところでくるり、と反対側を向くと、セラーナが暖炉の前に置かれた椅子に座ってぼんやり本を読んでいた。地下にある書架にあった一冊を持ってきたのだろう、目を左右に動かしている様子がないことから本を読んでいる様子はなく、ただ暇つぶしに持ってきた、という感じにしか見受けられなかった。
「セラーナ」
 呼ぶとすぐ、彼女は本に向けてやや俯かせていた顔をあげ、声が聞こえてきた方──即ち俺──に視線を向けた。直後嫌なものでも見るかの如く眉を顰めてこちらを凝視してくる。奇異の目、というより怪訝そうなそれだった。
「……また深夜に徘徊ですの? いつからあなたは年寄りに成り下がったのかしら?」
 勿論冗談で言っているのだろうが、やや刺々しい言い方に彼女なりの気遣いが出ているようで、ずきん、と胸が痛んだ。……毎晩見る夢の話を一切彼女にしていないからだ。毎晩夜中に起きている──眠れない理由がある事に気づかないほど彼女は愚かではない。
「失礼なこと言うなよ、……ちょっと眠れないだけさ」
 ばつが悪そうに彼女の方へと近づいていく。セラーナははぁ、とため息を一つこぼし……手に持っていた本をぱたん、と閉じて手近なテーブルに置いた。
「何故突然眠れなくなったんですの? それまでは私が起こさない限り昼近くまで寝ることもあったのに?」
 そういうことは前の晩に酩酊した時しかないぜ、と言いたかったが今は口論する気ではなかったし、喋りたい気分でもなかった。身体は休ませろと言っているのに頭が冴えて眠れない時のような倦怠感が全身を覆って、余計な事を喋るつもりにはなれなかったのだ。
「それは……その、寝るとまたミラークに操られてしまうんじゃないかって思うと、どうしても寝付けなくなっちまってさ、はは……」
 口だけで笑ってみせたが、目は笑っていないのを自分自身も、そして目前に居るセラーナも分かっていた。怪訝そうな視線は先ほどから変わらず、何かを隠している、という事が分かっているのは明白で、
「こないだ、うなされてた時からですわ。……毎晩汗でじっとりベッドシーツが濡れているのを私が気づかない訳ありませんのよ。お分かりでして?」
 牽制するかのようにぽつりと自分の意見を漏らす。言い分は最もだった。一人しか寝ていないベッドシーツが毎晩濡れているのだ、ソルスセイムはスカイリム程ではないにしろ、ヴァーデンフェルの北側に位置する島だ、雪がちらつく日こそあれ、汗ばむ陽気の日など殆ど、というより滅多に──無い。
 ベッドの上で汗をかくような行為を一人で行う訳がないとしたら……セラーナが疑わない理由など無かった。
 俺が黙っているのに痺れを切らしたのか、セラーナは食い下がらず、
「ジュリアン、話したくないならそれでも構いませんわ、けど私はあなたが毎晩眠れず憔悴しきっていくのを見ていくほど悠長な性格ではありませんでしてよ、毎晩何故眠れないのか話していただけませんの?」
 珍しくストレートに聞いてきた彼女に俺は驚きを隠せなかった。普段なら俺が言うまで何も聞いてこないのに……それはつまり、彼女が焦るほど俺の身を案じているって事か?  心の中で葛藤する自分が居た。けど話したところで毎晩同じ夢を見る感覚をセラーナに分かってもらえるかと思えばそれも疑問だった。
 そう、そうなのだ、俺は毎晩、アポクリファの中で───

『……これ以上……すれば、貴様………してやっても……』
『我は見つけたぞ…………がどうなって……貴様の……弱さを………』
『開放………ば、……女………し……』

『───ジュリアン!』

「……っぁあああっ!」  瞼の裏で、閃光と共に思い出す光景。
 耐え切れず俺は頭を抱えてテーブルに突っ伏していた。思わずセラーナが駆け寄るも、俺は手で大丈夫のポーズを取る。彼女に心配をかけたくはなかった。……今となってはそれも無理な話だが。
 深呼吸を何度かし、息を整える。大丈夫だ、大丈……
 と心の中で言いながら彼女に向けた手をつと見ると──透けていた。輪郭を残して手のひら部分が半透明に透けていたのだ。半透明の先には──セラーナの心配そうな顔。
「……なっ!?」
 ばっ、と両手のひらを先程寝室でやったように再度見つめるが、一瞬目にしたような手が透けて向こう側が見えるなんて事はなかった。浅黒く雪焼けした手のひらがそこにある。
 ──見間違いなのか? これじゃ……まるで、夢で見た光景……
「ジュリアン?」
 セラーナが気遣うように小声で俺を呼んでくる。くそっ、と内心毒づいた。
 話したっていいじゃないか、と思う自分も居る──けど話せば俺が彼女を巻き込むことになるのは明白だった。自分だけの問題なのだ。これは──俺とミラークとの。
 ……けど、もしさっきのようになったら?
 もし“夢が夢じゃなくなったら?” 
 ──ぞくり、と背中を這い上がるような恐怖。
 よほど俺の顔が青ざめていたのか、セラーナが尚も俺の名前を呼んだ。しかし、その声は俺に届いていなかった。
 フラッシュバックのように現れた夢の断片──毎晩見る悪夢。その時俺に叫びかける──ミラークは毎晩俺にこう言っていた。

『何故我が貴様の夢に現れているか分かるか? 自分が何をしているか分かっているだろう?
 貴様は我の復活を邪魔しようとソルスセイム各地の岩を我の呪縛から解こうとしている。それが許せんのだ。
 貴様がこれ以上岩の開放を続けようとするなら、貴様をの弱点──我は知っておるのだぞ? それを殺してもいい。貴様を消す事だって赤子の手を捻るも同然だ。
──中途半端なドラゴンボーン。貴様は弱い。我と同じ道を辿るなど笑止! それ以上岩の開放を続ければ──』
 ミラークがこちらに手をかざす。旋風のような風が俺に襲ってきた直後。
 身体が透けて消えていく自分と──俺の目前で、ハルメアス・モラの触手に絡められて悶え苦しむ、セラーナの姿が視界に飛び込んでくるのだった─────

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 当初の話を少し練り直して作ってみました。
 え? 最後のシーンがエロいって? いよいよ速水(ジュリアンの中の人です)も触手MOD投入したかって?
 いやーあれ入れたいんですけどね、エロMODは沢山入れてるけど(ぁ)、触手プレイにそこまで重きを置いてない人間なので入れてません。面白そうだなぁとは思うのですけど。
 次で終わらせたいけど、多分無理だな(ぁ
 次辺りで今回書いてる最中に思いついた要素を取り入れていきますけど・・まぁ、相変わらずの超展開及び自キャラどばきんとセラーナのキャッキャウフフマンセー全開になるので、そういう話がお嫌いな方はブラウザバックをお勧めします。
 大体ここら辺で出てきますが、どばきんさんが内面から崩されています。ソルスセイム各地にある岩でしたっけ、あれを開放しようとしたら変なモンスター出てきますけど、あんなちゃちい奴だけでミラークが対策打つわけないだろうと勝手に考えて勝手に作ってみましたw
 ミラークさん、せっかく初代DBならもうちょっと未知なる力を持っていたっておかしくないよね? だって岩で人を操っていたんだもんね? 寝ると人を操るんだもんね? なら寝てれば相手の意識をのっとることも・・・って考えて作ってみたんですが。
 話を作るのは大好きなんで・・w
 コミケが終わっても相変わらず創作だけは楽しんでやってますw

 え? ゲームはどうしてるって? ぜんっぜんやってません(ぉ
 久々にこの後ゲームをのんびりプレイしようかな。

 次辺りはまたCTD関連の記事書きたいですね。まだまだCTDのことで飛んでくる方が続々いらっしゃるので。

 ではまた、今週は木曜日にUPできなくてごめんなさいorz
 また来週^^

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08.18.22:52

夏コミ新刊DL販売開始とかステマ全開だよね。

・・・タイトルどおり。
ステマ全開で短いブログ発動っっ!!

というわけで。
夏コミスカイリム新刊「Liberation Hallucination」のDL販売を開始致しました。
直リンクはこちら。
http://www.dlsite.com/home/work/=/product_id/RJ139438.html

ここで、びっくりする方もいるかと思います。
お値段が432円だからです。

紙ベースで購入する(つまりイベント会場で直接買う)人は200円で販売してますが、
DL販売は販売するサイトを運営する会社に委託を行う形で販売するため、
中間マージンが発生して、若干お値段がお高めになってしまいます><;;
なので「ブログでは200円って言ってたじゃねぇか?!」と言われると大変恐縮ですが、ご理解くださいませ。
まぁ、アレだ・・・通販で購入する場合の送料だと思ってくれればorz
だから一番イベントで直接購入するのがいいんだけどね・・ごめんなさい。

というだけのブログでした。
え? まだTaken.の続き? 書いてません(ぁ)気長にお待ち下さい。放置はしない予定ですのでw

では、また。今週木曜のブログ更新日に^^ノシ

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08.17.00:15

Taken.

 人間は時として、夢の続きを現実に見ている錯覚に陥ることがある。
 それはおそらく、脳の中で勝手にそう決め付けているだけであって、本来ならばそんな事ある筈が無い、ある訳が無いと思い込み、否定する。
 でもそれは現実を否定している訳ではない──夢を否定しているのだ。夢は醒めれば現実になんら影響は無い、と──

「でも、そうじゃないとしたら?」


 その瞬間まで俺は“そこ”に居たという事を覚えていなかった。
 だから夢だと思った、夢の中に居る自分が夢を見ていると自覚していたのだ。そういう夢を見る事もあると、以前誰かが言っていたような気もする。
 しかし。
「……ってぇ……二日酔いかよ」
 重い瞼を開いて、辺りを見回そうと頭を振った瞬間、ずきりと痛む頭の疼き。思わず顔をしかめ、頭に手を当てる。勿論そんな事で痛みが治まる筈も無い。
 ずきずきと疼く頭を抱えた状態なんて久しぶりだった。はて、俺は昨日そんなに飲んだりしただろうか、などと記憶を探るも夢の中でそれもおかしな話だ。
 荷袋に疾病退散の薬がある筈だったが、荷袋そのものを抱えていない自分に再び顔をしかめる。夢なのに、何故こうも頭が痛むのか不思議だった。夢なら痛みなぞ一瞬で取り除けるだろうに。
 ……仕方なく薬を諦め、痛む頭をなだめつつようやく辺りを見回してみる、が、藍色よりさらに黒く塗りつぶした空と、そのおかげで先がよく見えない街道が伸びている場所に俺は一人で突っ立っていた。誰かいやしないかと背後を振り向くも、誰の姿もない。
「セラーナ……」
 いつも傍らに居る彼女が居ないだけで、背後が一層寂しく感じられるのは……気のせいか。
 やはり夢だ、さっさと目覚めてくれないものか、と思ったと同時に──道の先にぼう、と光が浮かび上がった。一筋の光とはこういう事を言うのだろう。導くようにこちらを照らしているその光は、今の俺にとっては何も無い漆黒の海を星の灯りで船を動かす船長と同じく、俺はその光に導かれている気さえして……足が自然に光へ向かっていた。
 その場に留まる事だって出来た。しかし留まっていたとしてどうする? 何故自分がココにいるのか──夢の世界だとしても、だ──分からないまま暗闇の中で一人、留まるのは居心地が悪かったし、導くかのように差し込む光を無視するのもこれまた居心地が悪かった。この世界が夢だろうが現実だろうがなんにせよ、現状が分からない以上、従うに越したことは無い。
「歩いているのにどんどん遠ざかっていくとかはないよな……」
 ごちりながら歩き進めるが、そんな事はなく自分は確かに歩いてその光に近づきつつあった。辺りが真っ暗なため距離感が全く掴めないが、導く光が大きくなるにつれ、近づいているのは分かった。……が、次の瞬間。
「つっ……! なんだ、頭がさっきよりも痛く……!」
 ずきんずきんと脈打つように頭痛が痛みを増してきたのだ、一歩進むごとに。まるで──その光に近づくな、と脳が訴えているかの如く。
 頭の痛みで足はふらつき、酔っ払いのようにふらふらとした足取りでも俺は歩くのを止めなかった。近づくのをやめろと言われても今はあの光に縋るしかなかった。いつ光が消えるかもしれない……そうと思えば足を止めている暇なぞなかったのだ。
 はぁはぁと息を弾ませながら、俺は光の輝く場所まで歩き……ついにその輝きが放たれている場所まで後一歩。思わず俺はその光に手を伸ばした……それなのに。
「……え?」
 光は確かにそこで輝いていた──俺を導くように。……けど、違うのだ。その光が悪いんじゃない。光っているものが……
「黒い、本……」
 どくん、どくん、と脈打つように輝いていたものは、本の表紙に描かれてある禍々しい魔方陣のような紋章を輝かせていた──巨大な黒い本だった。
 その本を開けばデイドラの王子のオブリビオンへと“連れ込まれ”る──
「なんで、こんな所に……?!」
 その瞬間、ぶわっと一気に俺の周りを覆っていた黒い世界が開けた。まるで俺の周りを覆っていた黒い布が一気に剥がれ落ちたように。
 そこに現れたのは、薄緑色の空、どこか崩れた本の山で出来た尖塔、黒く塗りつぶされた禍々しい形で出来ている建物の中、足元には敗れ落ちた書類が散乱した──アポクリファ。ハルメアス・モラのオブリビオン。
 周りを見渡している暇は無かった。輝く本がどす黒い光を輝かせて勝手にその身を開いたのだ。風もないのに勝手に開き──開いたページから音も無く現れた触手が、光に触れようと伸ばしていた俺の手に巻きついてきた。
「なっ……離せ!」
 無理な話だった。本を開けば必ず俺をその世界へと連れ込むその本に抗う事など不可能に近い──ひどく痛む頭痛が何故光に近づくにつれ痛みを増していったのかが今になってはっきり分かった。危険を訴えていたのだと──けど、もう遅い。
 触手はさらに俺の首へと周り、本の中へと引っ張る。
「嫌だ、俺は──俺はまだ死にたくない! セラーナ! セラーナぁぁっ!!」
 叫びがアポクリファの静寂な空気を打ち破るも、それはほんの一瞬で──俺の身体は本の中へと引きずり込まれていった。

“最早お前は我の手中にあり。お前の心もソルスセイムの人々も、何人たりとも逃れる術はないのだ”


『ジュリアン、起きて』

 はっ、とする。
 長い時間、息を止めていたようで息苦しかった。ぜいぜいと息を弾ませつつ、深呼吸を何回かするうちに肺が落ち着いた……後に周りを見渡す。
 見慣れた天井だった。ソルスセイム島のレイブン・ロックにある俺の家として提供されたセヴェリン邸の寝室。レイブン・ロックの住居はどれも地下に穴を掘って居住区を構える構造になっているため、天井がスカイリムの建造物に比べると若干、高い。なのでベッドに横たわると天井までが高く感じられて、最初は落ち着かなかった……などととりとめのない事を考えてしまう。
「ジュリアン、起きましたの? ……ずいぶんうなされていたようですわね」
 聞きなれた声。俺は上半身だけをベッドから起き上がらせると、寝室の扉を開けてセラーナが入ってきた所だった。手には洗面器を抱えており、それをサイドテーブルに置くと、中に水と一緒に浸していた布を硬く絞って俺に手渡ししてくれた。
「……そんなに、うなされてたのか?」
 鸚鵡返しのように聞き返すと、彼女は返事をする代わりに肩をすくめて見せ、
「ええ、何度も呻き声をあげてましたわ。苦しそうに……よほど悪い夢を見ていたのではありませんでして?」
 こちらを気遣うような視線だったので、俺は努めて笑ってみせた。……内心は全く笑える状況ではなかったが、彼女を心配かけさせたくはない。
「ああ……ちょっとな。いつもの夢さ。……この島に居るだけで、俺はミラークに監視されてるのかもしれないな」
 彼女から渡された布で汗を拭う。ひんやりした布で火照った身体を冷やすのは気持ちよかった。薄手のチュニックは汗でじっとり濡れているため、やむなく脱いで上半身のみ肌をさらしたが、セラーナは意に介さない様子で黙ってこちらを見ていた。……言えないな、夢で彼女の名前を叫んでたなんて。
「確かに、この島の人たちはミラークによって塔や神殿を再建させようと操られておりますものね……でも不思議ですわ、何故ジュリアンまで操られてしまうのかが」
 考える仕草をするセラーナ。彼女の言う通り、おかしいといえばおかしかった。毎晩ではないが、寝て次の朝、気づけば塔の作業に携わる自分に気づいた事が幾度となくあったのだ。我に返れば手を止める事が出来るのが住人たちとは違うにしろ、それが何度もあって、俺自身嫌気がさしていた。ミラークと力の差をまざまざと見せ付けられている気がして。
 そして夢にも出てきた黒い本も、だ。このソルスセイム島でしか影響力を持たない事も分かった。スカイリムに一度戻ったとき、気になって本を開いたのだが、例の触手は現れるどころか何も起きなかったのだ。
 それは即ち、この島でミラーク、そしてハルメアス・モラが何らかの力を張っているという事──
「そうだな。…とりあえず、ストルンが教えてくれたように、俺達はまず塔を元に戻す事からやるべきだろう、そうすれば島の住民も正気に返る。ミラークの影響力も少しは減ると言ってたしな。その頃には俺も……操られたりする事がなくなるかもしれないし」
 一通り汗を拭い終わり、布を再び水に浸す。彼女が再度絞ろうとするのを手で制した。
「余計な心配させちまったかな? ……でももう大丈夫だ。ありがとう、セラーナ」
 お礼を言うと、彼女は何も言わずふっと口元に笑みを浮かべてくれた。こういう時、何も追随してこない彼女の性格が俺は好きだった。俺が言うまで聞いてはこない──それは使い方によっては相手を騙す事も可能だろう、しかし俺とセラーナは長い間苦楽を共にした仲間……だ、俺が隠し事をしていてもそれは彼女にとって必要ない事かいずれ時が来たら言うことのどちらかであって、セラーナはその時まで待っていてくれるのを俺は知っていた。
 さすがにもう一度眠る気にはなれず、俺はベッドから起き上がった。下半身も汗でズボンが濡れているが、さすがに今ここで脱ぐわけにはいかない。
 地下なため窓もないから外の様子は分からなかったが、まだ夜なのは間違いなかった。セラーナに上の暖炉に行こうと提案し、寝室から出る。
 セラーナに気取られまいと、必死に笑顔を作ってはいたが、内心引っかかるものがあった。
 夢ではない、問題はあの時──意識を失った後に聞こえた、ミラークの“声”だった……。
 
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 ご無沙汰してました、やっと前に告知していた話「Taken」をぼちぼち上げていくことができそうです。何で原稿から開放されたのにまた創作やってるんだよって言われたらゲームより絵や話を描くのが楽しくてしょーがなくなっちまったせいでw としか言いようがないです><w

 今回の話は冒頭からまぁばればれですが、今回のテーマはミラークのミエナイチカラの話です。なんでどばきんさんはあの島で寝ると何をしなくても塔のカンカンに参加しているのかが不思議でしょうがありません(後々理由が分かるのかもしれませんが俺はまだ進めてないので分かりませんw)セラーナ同様吸血鬼だったらカンカンに参加しなくてもいいんでしょうけど・・
 どうも調べると長時間寝ると起きるぽい? 違ったらすいませんw

 あと若干分かる人にはわかるであろう、某ゲームの影響をちょろっと受けてます。夏コミ原稿描いてる最中、Steamサマーセールで買った某ゲームにはまってスカイリムできない分そっちで埋めてた(ォィ)んですが、セラーナの冒頭のセリフなんて100%バレバレですね、ごめんなさい。話は全然違いますが(当たり前だ)。

 人間てのは目で見える恐怖より見えない恐怖のが恐怖度を倍増させるようです。そういう見えない力をミラークさんは何度かゲーム中でも使ってますけど、そういうのを怖がる・・いや、畏怖するといった方がいいか、どばきんさんがどーなるか自分でも全然分かってませんが最後までお付き合いできれば幸いです。そんな長い話ではないと思いますが。

 ではまた次回ブログ更新日に。
 原稿から脱稿してすぐの二次創作開始ですが、また次のコミケまでぼちぼちだらだらやっていくのでどうぞよろしくお願いします。合間にプレイ日記も書きますw

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