05.25.14:57
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10.03.00:08
Concord.(1/2)
※Skyrim二次創作小説第7チャプター(の1/2)です。その手のモノが苦手な方はブラウザバックでお帰りを。
これは第7話(の前半)です。1話から読みたい方は「Taken.」からお読み下さい。(二次創作カテゴリから楽に飛べます)
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ごめんなさい。
いやーほんとはですね、まだまだまだまだ長いんです。これで半分いくかいかないかの所です(勿論この先も現在必死で書いてますが)。
第七チャプターは分けずにこれで終わらせるつもりだったんですが、あまりの文章量にちょっとこれは一つの日記で書くとダレてしまう人が続出するやもしれぬ、と思ってやむなく第七チャプターは7-1、7-2という形で取らせて頂くことになりましたorz
後半の方は今あと少しというところですが、そのあと少しがまだまだ長いので実を言うと終わるのは恐らく今週末・・になりそうです。2週間ぶりのブログ更新となってしまった事、楽しみにしてた方(居るかどうか分からんが・・・)には待たせてしまったこととまだもう少し待ってもらう事に重ね重ねお詫び申し上げますorz
大体の事はここで判明してますね(まだ分からん点もありますが)。
岩を浄化してはいけんかった事とかの原因はこの後のセラーナ&ストルン(&フリア)パートで明らかになります。
・・・にしてもこの話、なんでここまでこんがらがったんだろう(-_-;)
前にも言ったと思いますが、夏コミ原稿描いてたときにふと思いついたのが、Takenという言葉が襲われるという意味になるってので、ならこの言葉にちなんだ短い話でも、という感じで思ってました。その時は恐らくミラークの夢から醒めたら聖堂修復云々のところを書くつもりだったと思ってます、たぶん。
でも原稿脱稿してこの話を書き始めた時、それじゃつまんねぇなと練り直して思いついたのが
「セラーナと別れさせてみよう」というところでした(笑)。中の人はご存知の通り、ドヴァー×セラが大好きです(笑)。なのでそこらへんを夢小説がらみ的にするのには別れてもなお、セラーナが活躍できるような話をということで、ジュリアン(どばきん)と別れてもセラーナに焦点を当てる感じに落ち着いたらこれがまたすさまじい難産でorz
話はごじれるわおかしな伏線(一応全部回収しますので・・多分)出てくるわで風呂敷広げすぎたなぁとかなり後悔orz
面白いなんて感想も聞かれないのでまぁ、100%俺の妄想垂れ流しになりますが、実を言うとこんくらいミラークさんは恐怖の対象だとほんとよかったなぁ。・・・でも俺の書くミラークさんなんだかおちゃらけた人みたいでこれまた表現不足が露呈(-_-;)
長くなりました、後半も早めにUPしますのでお楽しみに。
ではまた近いうちに^^
これは第7話(の前半)です。1話から読みたい方は「Taken.」からお読み下さい。(二次創作カテゴリから楽に飛べます)
ばん、と扉が一気に開け放たれた音によって、静寂は突き破られた。そのままがたがたと音を立ててこちらに近づいてくる。
奥の部屋で調合を行っていたフリアははっと顔をあげて背後を見ると、ストルンと、その後ろに居るセラーナが何かを担いで室内に入ってきたところだった。担いでいるのは、ヒトの姿をしたもの。奇妙な事に全身が輝いている。
二人とも肩ではぁはぁと息を喘がせながら、手近な長テーブルに担いできた人物──ジュリアンだ──を載せた。載せたといっても担いでいた腕から滑らせる感じだったため、再びがたがた音を立ててテーブルに落とし込まれた形になる。
「フリア、生体賦活剤は作っておいたか?!」
休む間もなくストルンは家に残っていた娘にそう告げた。フリアは黙って頷き、いくつか薬瓶を手渡す。セラーナはというと、相当疲弊したらしく汗を垂らしながらテーブルに仰向け状態で横になっているジュリアンの顔を見ていた。
ストルンはフリアから薬を受け取りしな、ジュリアンの寝ているテーブルに戻った。フリアも父親同様、ジュリアンの傍にやってくると、彼女はあまりの様相に顔をしかめた。発光しながら全身に纏わりつくその異様な輝きに圧倒されたのだろう。
「まずは体力を保たせないといかん。尽きれば彼の身体は消えてしまう」
薬の入った瓶の栓を開け、そのままジュリアンの口に咥えさせる。意識はないため口の端から液体が何度かこぼれたが、咳き込む事なくいくらかは嚥下はしてくれた。
飲み終わるのを確認しないまま、ストルンはジュリアンの姿を呆然と見ていたフリアの方を向く事無く、
「手伝え、フリア。ミラークの力を今は少しでも抑えなければいかん。彼の身体を贄として復活するのを止めるんだ」
勿論とばかりにフリアは頷いてみせたが、ストルンはそれを確認する事無くぐるりとテーブルの外周、ジュリアンの頭頂部側にまわると、人差し指を彼の額にぐっ、と押し込むように当てた。
「彼の思念に直接、全創造主の力を送り込んでみる」何をするのか、としげしげとこちらを見ていたセラーナに対してぽつりと言うストルン。「セラーナは時々、ジュリアンに体力の薬を与えてくれないか。彼の体力が尽きれば私の力の及ぶ範囲ではなくなるのでな」
「……消えてしまう、ということですの?」
「そうだ」
一方的に話を切ろうとストルンは短く答えた後、再び意識を集中させ始めた。娘のフリアはというと、なにやら両手をかざしてぶつぶつと唱えている。それに応じて両手がぼぅ、と光り始めたが、その光はどんどん大きくなり、室内全体を覆うように広がった。
何が起きたかは見当がついた。この部屋に結界を張ったのだ。しかし、ミラークの意思はジュリアンの内部から起きている筈だ、なのに何故結界を張ったのだろう?
しかしそれを聞けるような雰囲気ではない。先程さえ、手短に自分に用件のみを伝えただけだ。未だセラーナには分からない事が多すぎて自分がどう動けばいいのかすら分からないというのに──歯痒い思いでジュリアンを見ていた彼女であったが、ふいにストルンが声を上げたので何事かとストルンを見やる。
「……おかしい。あの時は確かに……」
と、彼は呪文の詠唱を止め、押し当ててた指を離してしまった。フリアの方は詠唱を止めていない。
「あの時って何ですの?」
「ジュリアンの血に触れた時だ。あの時は確かにミラークの影響を感じた筈なのに、今は彼の体内にそれらしきものが感じられない。──つまり」
言葉をふいに切り、ジュリアンの身体を覆うように光り続けるドラゴン・アスペクトのそれをストルンは黙って指差し、「これが、ミラークの力なのは間違いないのだが、彼の体内にそれらしき残留物もなければミラークの意思すら見つけられないと私には手も足も出せない。
ミラークが何処からジュリアンを苦しめているのか、それを探らなければ、彼の命の炎はやがて燃え尽き、消えてしまうだろう。ミラークの力を感じ取るべく、雑念が入らないようフリアに結界を張らせたのだが……」
考え込んでしまうストルン。……ジュリアンに対してミラークが攻撃をかけているのは別の所かららしい。しかしそれが何処からきているのかが分からないのだ。
どうすればいい? セラーナは内心、焦っていた。目を瞑っていながらも、時折苦しむ表情になるジュリアンを見ていれば、あまり時間が残されていないのは明白だ。
考えるんだ──そうだ、岩からきている可能性は? しかし、全ての岩は浄化が終わった。そう、浄化が全て済んだ瞬間にジュリアンは突如こうなってしまった。
何故? 岩の浄化が済めばミラークの復活は遅らせられるはずだとストルンは言っていた。それなのにストルンは浄化を止めさせないとと言ったのだ。しかし止める事は出来なかった。……そもそも、岩の浄化が始まったのはミラーク聖堂で……そうだ、あの“黒い本”を見つけた時から──
「……黒い、本……」
誰とはなしに呟くセラーナ。その時彼女は断片的ではあるが、数ヶ月前の事を思い返していた。
『……だから俺は力を得た。ミラークに抗する力を得る段階に来れたんだ。セラーナ、見ていてくれよ』
アポクリファで見つけた力は、ミラークと対等に渡り合える力だ、彼はそう言っていた。しかしそれはミラークも同様。セラーナ自身は見ていないが、ミラークが同じシャウトを叫んでいたとジュリアンは以前話していた。それと同じ力を得られたんだ──ミラークの潜むその場所で!
「ストルン、分かりましたわ。……と、ジュリアンの荷袋は……」
小屋に入った際、玄関前に置きっぱなしだったそれを拾い、荷袋を開いた途端、ぼぅ、と袋の中が緑色の光で満たされている。
セラーナはその光放つものを躊躇う事無く取り出すと、奇妙な事に全面に開かれた黒い本が出てきた。開かれているページは何も書かれてはおらず、生きているかの如く脈打つように輝く様は異様にすら見えた。
「これに間違いありませんわ。恐らくミラークの力はここからきている筈」
テーブルに横たわるジュリアンの傍らにそれを置くが、ストルンはそれに手を触れようとせず、恐る恐るといった様子で両手を翳し、再び呪文の詠唱に入った。詠唱に応じて両手がにわかに輝きだす。
そういえばストルンはこの本をひどく畏れていたな、とセラーナはふと思い出した。邪悪で、自然に作られたものではないと──
「……居るな。間違いなく。……そうか、だからあの血に触れた時──」
一人納得しているストルンに、セラーナは今日何回目かの気分を憤慨した様子で、
「お一人だけで納得しないでいただけます? 私はまだ蚊帳の外に居て概要も何も分かってないという事をお忘れではありませんでして?」
まくしたてるセラーナに、ストルンは分かっている、とでも言うように両手を本に翳したまま首を縦に振った。
「……分かっている。暫し待ってくれんか。必ず全て話す」
またお預けか……。はぁ、とセラーナは重いため息をつく。そんな態度を見てまずいとでも思ったのか、
「こんな事になったのは予想外ではあったが、幸いな事に岩の浄化は聖堂にあるもの以外は全て済んでいるからな、全創造主の力は島全体に戻りつつある。必ず話すから、暫し待っていてくれんか」
黙って頷く彼女を見て、ストルンは再度詠唱に入った。手の輝きが黒い本の中へと吸い込まれるようにして入っていく。
そんな様子をぼんやり見ながら、セラーナはつい数時間前、気づいた事を再び頭の中で思い返していた。港で思い出したあのときの事を──
『ジュリアン、起きて』
はっ、と目が覚める。
視線の先にあるのは、いつも見慣れたセヴェリン邸の天井──ではなかった。
薄緑色の空で覆われているが、いつも見るタールような黒光した蠢く海の上ではなく、石畳の回廊が続く先に巨大な塔がぼんやり見える。
この世界──知っている。ハルメアス・モラの“アポクリファ”だ。
そしてあの塔も前に見た事があった。あれは初めて黒い本を開いた時に見た──
“目が覚めたか、ドヴァーキン。……いや、ジュリアンと呼んだほうが良いか”
倒れている自分の頭上から声がした。何度も俺の夢に出てきたから忘れようにも忘れる訳が無い。
“ミラーク……”
倒れたままでは分が悪いと思い、俺は立ち上がろうとしたが、うまくいかない。腕も足も動かそうとしている……そう、動かそうと頭の中で命令が飛んでいる筈なのにも関わらず、腕も足もばたばたとその場で力なく動くだけだった。なんだこれ、くそっ……一体何がどうなって……
“動かせまい。自分の手足を見てみろ……いや、見せてやろう、か”
こちらを屈み込むようにして覗き込んでいたミラークだったが、ふいに自らの片手を自分の顔と俺の顔の真ん中辺りにまで伸ばしてくると、人差し指で何かを指差すようなポーズを取ってくい、とその指で円を描くようにして回して見せた。
“……何をす、”
不可思議な動作に何をしでかすのか、と警戒心を持ったまま凝視していた俺の目前に突如右手が視界に割り込んできた。……え? 右手?
“な、何で……右手が、急に……っ?!”
驚きを隠せないままだったが、更に驚いたのはその右手が最早輪郭のみをうっすら表示させているだけで、殆どが消えていた。だから、視界に割り込んできてもミラークの人差し指も、彼の仮面さえも遮らず見る事が出来たのだ。
“毎晩私が夢の中で言っていた事を忘れたのか? 岩を浄化するのを止めろと言っていたのに、貴様は島に点在する全ての岩を浄化した。その報いだ”
“報い、だと───?!”ぎりっ……と強く歯をくいしばりながら呻き声を上げるのが精一杯だった。
何故だ? 何故、全ての岩を浄化したのに、ミラークは復活を遅らせる事が出来ないばかりか、毎晩見続けていた夢──セラーナが蹂躙され、俺自身が消えてしまう──その通りになって……?
“セラーナに手を出すんじゃねぇ! 彼女は無関係だぞ!”
言ってからはっと気づいた。意識が途切れる瞬間、いや──岩を浄化する刹那、セラーナが俺を止めたんだった……駄目だ、と。
彼女は知っていたのだろうか。俺がこうなる事を……だから駄目と言ったのか?
“ふん、貴様の弱点はそこだ、自分自身が窮地に立っているのに、ここまで来てまだ自らの弱点を曝け出しても守ろうとするのか?”
仮面のせいで表情は窺い知ることは出来ないが、その口調は明らかに皮肉たっぷりだった。
“あんたには分からないだろうさ、ミラーク。守りたいものは最後の最後まで守り通す。それが俺のやり方だ。……竜教団を裏切ったあんたにゃ一生かかってもわからねぇだろうよ”
嘲笑うように言ってやると、明らかに気分を害した様子でふん、と鼻で返してくるミラーク。
“それが愛というやつか。はっ、笑止。そのような愚かな感情、そんなものがあるせいでヒトは腑抜けになる。弱い者同士が傷を舐めあって慰めあうのと同じ事よ”
ははっと嘲笑するミラークだったが、俺の表情を見ておや、と思ったらしくすぐ笑いを止めてしまう。
この時の俺は、怒ってる表情でもなければ悲しいそれでもなかった。ただ目を丸くして驚いていただけだ。そう……俺は驚いていた。俺の、セラーナに対する感情をぶつけみたら、ミラークが返ってきた言葉が自分の想像していたものとはかけ離れすぎていたため──
セラーナを守りたい、それだけだった。ヴァレリカにだって誓ったさ。でも……ヴァレリカはそれをなんか別のモノと勘違いしていたきらいはあった……気がする。今思えば。
しかし、と思う。前にスコール村の少女、アエタに聞かれた時──セラーナと結婚するのかと──俺はそのあどけない少女にだけ耳打ちした。そうしたいとは思っている、と。
けど、それは彼女を守るためにであって──くそっ! 今更自分の心に嘘ついたって仕方ないじゃねぇか! 俺は……俺は、セラーナの事が──
“なんだ、その腑抜けた顔は? ……そうか。ようやく気づいたようだな? 貴様のその、セラーナというのは貴様の弱点を探るエサだったということに?”
何を勘違いしたのか、ミラークは俺の驚いた表情を勝手に解釈したようだった。
“我はソルスセイムにいる者全てに我の意識を植え付け、意のままに操る事が出来る。だから貴様も容易く我の手中に収まったという事。……しかし、貴様の弱点であるその女、我の術中に嵌る事が出来なかった。だが貴様の意識の中にいる残像を得て、貴様に悪夢を植え付けることが出来たわけ……ん?”
途中から俺は堪えきれず、ぷっと吹き出して笑っていた。そうか、そういうことだったのか。
笑う俺に腹が立ったのか、ミラークは両手を翳す格好をしたかみなかで、俺の身体が意思に反してぐい、と腰を上げ、そのまま立ち上がる格好にさせられた、が相変わらず両手両足の感覚は無い。
“何がおかしい、ドヴァーキン!”
これが笑わずにいられるか? ……勿論それは自虐めいていた部分も中にはあった。もっと早くに気づいていればセラーナと別れる、なんて無駄な事しなくたって済んだのに、と思う自分至らなさへの。
“彼女は眠らないんでな──分かるだろ? 吸血鬼なんだよ。闇の眷属たるセラーナに、夢の中でヒトを操る能力の長けたお前の力なぞ効果が無かった訳さ。”
面白くない様子で仮面の内側から呻き声を上げるミラーク。が、しかしすぐに平静を取り戻した様子。
“はっ。何言おうと、貴様はじきに消えるのだぞ、ジュリアン。消えている手足を見て怖くないのか? 恐れを感じないのか?”
泣き叫べ、命乞いをしろとでも言いたいのだろうか、こいつは? ふつふつと怒りが沸いたが、自らの身が消えかかっている事、岩を浄化することによってむしろこうなった事の方が俺は知りたかった。セラーナが無事ならそれでいい。
“……消えたらどうなるんだ? あんたは何度も俺の夢の中で……いや、夢から醒めた後でも、何度か俺の手が消えたりする幻覚を見せ付けてくれたよな?”
聞いて欲しかったとでも言わんばかりにミラークは俺の目前で深く頷いてみせる。
“いかにも。……貴様は我の聖堂から黒き本を取ったな? そして、その本に導かれ、貴様は我と同じ力──ドラゴン・アスペクト──を取得した。これにより、貴様と我の道は繋がったのだ。
かつてドヴァーキン……いや、ジュリアンも通っただろう? 『声の道』を? そこで貴様は力を得た筈だ。ドラゴンシャウトの、限られた者にしか扱えない未知なる力。定命の者のみに与えられしドラゴンに仇名す力。それと同じ事をしたのだ。ジュリアンは黒き本を使い、今居るこの場所であり違う場所、デイドラの王子、ハルメアス・モラの領域『アポクリファ』に誘われ、そこで導かれるままシャウトを得た。
シャウトは三段階で最大級の力を得る。即ちそれは我と同じ力を持つという事。そして我と同じ道を辿る事を許された力。ハルメアス・モラが知識の海からそのシャウトを拾い出してこなければ道は繋がる事はなかったやもしれぬ。
それを知った時、もしやと思ったのだ。貴様を通せば、我の復活を岩や聖堂が復興せずとも出来る事ではないか、と。貴様は一つの命を持っているが、竜の魂を屠れる者だ。我と同じくな。貴様が今迄倒してきた竜の数、そして我と同じドヴァーキン。……これほど都合のいい贄はおるまい”
聞いていてはらわたが煮えくり返る思いではあったが、心は努めて冷静だった。怒りで我を忘れてはならない。“──つまり、あんたは俺の身体を使って、俺の中にいるドラゴンの魂と、力を以ってすれば復活が楽に出来るというわけか”
“そうだ。だから我は貴様に岩を浄化するようにわざと仕向けるため、夜な夜な悪夢を見せ続けた。岩を浄化すれば貴様は消えるだの何だのと言う脅し文句をつけてな。
ヒトは眠れなくなると正常な判断や思考能力が格段に落ちる。満足に眠りを得られぬ分苛立ちや焦りが生じ、貴様はこう思うはずだと我は確信していた。『岩を全て浄化すれば悪夢は見られなくなる筈だ』と。
しかしそれは無理な話よ。貴様と我の道が繋がった以上、最早ジュリアン、貴様には消える道しか無くなった。我の後を追ってくるなど、どだい無理な事。──見ただろう? 意識がなくなる刹那に、自分の身体が二つに分身したかのような光景を?”
覚えている。ぶん、という音がして──いや。その前にミラークの声が──そうだ、確か……
『──見つけたぞ!』
見つけたぞ? その言葉が何を意味しているのかは分からないが、恐らく見つけたのは……俺だろう。岩の浄化が何故、俺を見つけた……になるんだ?
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ごめんなさい。
いやーほんとはですね、まだまだまだまだ長いんです。これで半分いくかいかないかの所です(勿論この先も現在必死で書いてますが)。
第七チャプターは分けずにこれで終わらせるつもりだったんですが、あまりの文章量にちょっとこれは一つの日記で書くとダレてしまう人が続出するやもしれぬ、と思ってやむなく第七チャプターは7-1、7-2という形で取らせて頂くことになりましたorz
後半の方は今あと少しというところですが、そのあと少しがまだまだ長いので実を言うと終わるのは恐らく今週末・・になりそうです。2週間ぶりのブログ更新となってしまった事、楽しみにしてた方(居るかどうか分からんが・・・)には待たせてしまったこととまだもう少し待ってもらう事に重ね重ねお詫び申し上げますorz
大体の事はここで判明してますね(まだ分からん点もありますが)。
岩を浄化してはいけんかった事とかの原因はこの後のセラーナ&ストルン(&フリア)パートで明らかになります。
・・・にしてもこの話、なんでここまでこんがらがったんだろう(-_-;)
前にも言ったと思いますが、夏コミ原稿描いてたときにふと思いついたのが、Takenという言葉が襲われるという意味になるってので、ならこの言葉にちなんだ短い話でも、という感じで思ってました。その時は恐らくミラークの夢から醒めたら聖堂修復云々のところを書くつもりだったと思ってます、たぶん。
でも原稿脱稿してこの話を書き始めた時、それじゃつまんねぇなと練り直して思いついたのが
「セラーナと別れさせてみよう」というところでした(笑)。中の人はご存知の通り、ドヴァー×セラが大好きです(笑)。なのでそこらへんを夢小説がらみ的にするのには別れてもなお、セラーナが活躍できるような話をということで、ジュリアン(どばきん)と別れてもセラーナに焦点を当てる感じに落ち着いたらこれがまたすさまじい難産でorz
話はごじれるわおかしな伏線(一応全部回収しますので・・多分)出てくるわで風呂敷広げすぎたなぁとかなり後悔orz
面白いなんて感想も聞かれないのでまぁ、100%俺の妄想垂れ流しになりますが、実を言うとこんくらいミラークさんは恐怖の対象だとほんとよかったなぁ。・・・でも俺の書くミラークさんなんだかおちゃらけた人みたいでこれまた表現不足が露呈(-_-;)
長くなりました、後半も早めにUPしますのでお楽しみに。
ではまた近いうちに^^
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09.19.00:19
reality.
※Skyrim二次創作小説第6チャプターです。その手のモノが苦手な方はブラウザバックでお帰りを。
これは第6話です。1話から読みたい方は「Taken.」からお読み下さい。(二次創作カテゴリから楽に飛べます)
これは第6話です。1話から読みたい方は「Taken.」からお読み下さい。(二次創作カテゴリから楽に飛べます)
黙って後からついて歩くだけではあったが、セラーナは村から出て西側に山道を歩いている事に気づいていた。……最初は水の岩から向かうようだ。吹雪でよくは見えないが、ちらっとミラーク聖堂が右手に見える。
あれからストルンに何度か話しかけようとするものの、吹雪の音で掻き消されて全然伝わらなかった。──最も、今話しかけたところで先程のように立ち止まって話してくれる状況ではなさそうだ。ジュリアンが岩の浄化を行う事を止めさせないといけないらしいが、何故止めなければいけないのか理由が分からずじまいのセラーナは置いてけぼりを食らった感が否めなく、ほんの少しではあったがストルンに対して憤慨していた。
「ここを抜ければすぐだ。西に向かうにはこの山道が一晩楽だからな」
大声で先導を行くストルンが叫ぶ。ザッと吹雪の音で聞きづらい点も否めないが、何を言っているかは大体は予想がついた。
水の岩はスコール村から見て真西に位置する。荒波押し寄せる海岸に置かれた岩ではあるのだが、スコール村からやや手近な太陽の岩より水の岩を優先させたのだろう。ジュリアンの体力面からいっても、水の岩から浄化させると踏むのは至極当然に思えた。
もしかしたら水の岩を開放して今日は終わりにするかもしれない、躍起になっているとはいえ体力が持続しないのは明らかだし、今まで共に戦っていたセラーナは彼の傍にはおらずここにいる。──別れを告げられても尚。
「こんな雪の中進んで道に迷ったりしませんわよね? 凍死はご免ですわよ」
辺りは真っ白で何の目印になるものすら見えないのにずんずん先へと進むストルンに、セラーナは愚痴っぽく言った。ジュリアンから借りた外套を被っているとはいえ、吹き込んでくる凍てつく風は容赦なく二人を攻め立てる。こんな状態で迷われたら一巻の終わりだ。
「大丈夫だ、この山を抜ければあとは下るだけだ。そうすれば水の岩は山の中腹あたりにある、すぐに着く」
長年厳しい土地で生きているだけあって、土地勘は優れているようだ、どこをどう見ても変わり映えのない山岳地帯だが、ストルンには今何処を歩いているかはおおよそ分かっているのだろう、セラーナはひとまず彼を信じる事にした。
辺りは白一色で自分が今歩いているのは山なのか丘なのかの区別もつかない。これだけ白い世界だと一歩踏み出したらそこは崖で転落してしまわないだろうか、と一抹の不安がよぎるが、ストルンはそんな事すら臆さない様子で歩いている。この道中がいつ終わるのか、とセラーナが半ばうんざりした時、吹雪が小止みになってきているのに気づいた。
「峠は越えたぞ、セラーナ。あと一ふん張りだ」
ストルンがこちらを向きしな、彼女を励ますように言った。その顔はフードを被っていても雪でまみれている。伸びた髭にも細かな雪の結晶がくっついていた。
セラーナが黙って頷くと、黙ってストルンは再び前に向き歩き始める。ぱらぱらと雪を降り散らす空を仰ぎ見ると、うっすら太陽の光が見えた。既に東の空からぐんぐん上がって真上手前まで来ているのが分かる。
急がなければ、とセラーナが思うと同時に耳にざざ……と何かが押し寄せる音が微かにに聞こえてきた。……海?
と、にわかにストルンがざっざっと雪積もる地面に音を立てて走り始めた。目的地が近いのだろうか、セラーナも走ろうと思った矢先、
「着いたぞセラーナ、水の岩だ!」
着いたぞといっても目前に岩があるわけではない。見える範囲にあるという事だろうがセラーナも同じく走り出した。ストルンの隣までやってくると、彼の見てる方向に目を向ける。
今まで歩いてきた山道が山を囲むようになだらかに下っている。それはソルスセイムの海岸まで伸びていた。海岸に出る手前、山道の中腹に分かれ道があり、その道の終点に岩はあった。……しかし。
「ジュリアンの姿は見えませんわ」
岩の辺りには誰の姿もなかった。ミラークに操られているであろう人々の姿も見えない。──まさか。
「遅かったか……」
先程と同じようにざくざくと雪を掻き分けてストルンが山道を下っていく。殆ど掻き分けるというより滑っている感覚だったが、無様に転げ落ちたりしないのにセラーナは感心した。どうやってあんな早歩きで雪道を歩けるのだろう?
などと感心してる場合ではない。慌てて彼女も山道を下る。ストルンに追いついた頃には彼は地面に手を当てて何かを調べていた。
「足跡だ」ストルンは誰に聞かれるまでもなく言う。「我々スコールの民は、狩りを覚えないと生きていく事は出来ない。勿論生きていくために必要な分のみだ、我々は遊びで命を奪う行為はせんのでな。
雪道は獲物の場所を教えてくれる手がかりだ、足跡を残すし、それがどの方向へ行ったかを示してくれる。……だが、ジュリアンはもうこの岩の浄化を済ませてしまったようだ。降った雪でうっすら見えなくなってるが、確かにここに足跡が残っている」
ストルンが指差したそれは、山道から岩へまっすぐ伸びていた。岩の辺りは水が溜まっているため足跡は判別がつかないが、岩周辺に居たものが散り散りになってどこかへ去る足跡だった。
岩へ近づくと、浄化する前に見える緑色の光は完全に消えてなくなっており、ルーカーの死体も見当たらず、数時間前にはここでの戦闘が終わったのを暗に示していた。地面に血痕がいくつか飛び散っており、戦闘の状況を想像してセラーナは思わず顔をしかめる。
「じゃあ、ジュリアンは……」
ストルンは無言で頷いた。「太陽の岩だ、急がねば」言い捨てて彼は再び山道を下っていく。山道を降り海岸線に出る頃にはすっかり雪は止んでしまった。
「ジュリアンが岩を浄化すると何がまずいんですの?」
ストルンの隣に歩きながらセラーナは彼に問いただす。先程から自分だけが置いてけぼりを食らった感じで気に食わない様子が口調から窺える。
ストルンだって話したくない訳ではないのだろう、話す以上にジュリアンを止めなければいけない理由で動いているのだから。それはセラーナにだって分かってはいた。だけどそれ以上に彼女はジュリアンの今の立ち居地がどれだけ危ういそれに立っているかを知らないのだ。
「確かな事はいえない。けどもしや……と思う事がある。全創造主がそう呼びかけている気がする。兎に角、急ぐしかない。彼を止めなければ」
今は不安が現実にならない事を願うばかりだ。そう思いながらストルンは海岸を南に向かって歩き出した。少しでも早く、太陽の岩に行かなければ。
痛い。
痛い。
身体も、心も、痛い。
身体の痛みはもうずっと慣れ親しんだものなのに。
痛みなんてとうの昔になくした筈なのに。
それなのに──痛む。心の奥がじんじん痛む。
「……っ、てぇ……」
思わず呻く、その痛みは腕から来るもの。──見れば、右腕から血が滴っていた。
数時間前にやられた、ルーカーの一撃が防具を貫通して斬られていたらしく、小手の裏側からじわりと血が滴り落ちている。背後を見やると、血が点々と砂と灰の大地に染みを作って足跡のようになっていた。痛みで麻痺しているらしく、ここまで全然気がつかなかった自分に呆れこそすれ、笑う余裕などない。
「さすがにこれじゃ、まずいな……」
荷袋を肩から下ろし、生体賦活剤──俗に言う体力の薬だ──を一瓶、取り出す。中の液体は真っ赤で血のように思え、血が彼女を連想させた。
──セラーナ。
貫くような、疼く痛み。腕の痛みだけなら耐えられるのに、この痛みだけは耐えられそうにない。……何故だ。傍らにいつも居た人がいないだけで、こんなにも胸が痛む事なんて、あったか……?
「くそっ……」
思考を振り払うように栓を指で弾き飛ばし、ぐいっ、と瓶を呷る。そのまま一気に喉へ流し込んだ。息苦しさも今の自分には罪滅ぼしのような気さえあった。
薬の効果は瞬時に表れ、傷口からの血は止まる。幾ばくかではあるが身体の疲れも取れた気がした。薬で散らしているせいとはいえ、この感じは今だけはありがたかった。
太陽の岩は目前だ。あと少し、そうすれば全創造主の力も戻る。ミラークも俺には手を出せなくなる筈……
今日中に片をつけたかった。そうすれば今夜から悪夢も見る筈がない。そう思いながら俺は小手を外し、血が流れていた右腕の傷に包帯を巻こうとした時だった。
「……っ!」
気のせいか、自分の腕が透けて地面が見える。毎晩夢に見る光景……。
慌てて頭を振って再度腕を見ると、透けてなどおらず、ちゃんと血の通った腕がそこにあった。
疲れているんだ……俺は、酷く疲れている……
海岸線に沿って歩いていくうちに開けた場所に出た。辺りは砂なのか灰なのかよく分からない砂地が続き、時折、穏やかな波が打ち付けている。
砂浜をなぞるようにして先を見渡すと、やや遠くに巨大な茸の形が見えた。風変わりな魔術師ネロスの住むテル・ミスリン。そこから北に歩いていけば太陽の岩がある。恐らくジュリアンはそこに居る筈だ。
セラーナは岩に向かう前に、居住となっているセヴェリン邸に入って中を確かめてみたが、やはり彼は居なかった。寝室の扉は開け放たれ、装備品一式と荷袋がなくなっていたのだ。
やはりジュリアンは岩を両方とも浄化するつもりなのだ──そう思えば急がなければならないのに、セラーナは未だにストルンが急く理由が分からなかった。彼が話さない理由が果たして現実になるのか、そもそも岩を浄化しろとジュリアンに言っておいて、今更止めるとは一体どういうことなのか。
「セラーナ、待て」
不安やストルンへの不満やらで考え事をしながら歩いていたせいか、最初彼女は自分に声をかけられている事に気がつかなかった。慌てて足を止める。
「……どうしたんですの?」声をかけたストルンの方を見やると、彼はすっと地面を指差した。
「あれを見ろ、血痕が点々と落ちてる」
彼が指差す先に、灰色の砂地に映えるほどの血痕が点々と落ちていた。血は一定間隔で点々と落ちており、かなり先まで落ちているのが見て取れた。
「これは……ジュリアンの血痕ですの?」
水の岩周辺に飛び散っていた血を思い出す。致命傷ほどではないにしろ、かなりの血が飛び散っていたのは事実だった。相当の痛手を負っていてもおかしくはないほどの。
セラーナが血を調べてみようと血痕に手を伸ばした時だった。
「触るんじゃない!」
突然ストルンが叫んだので、思わずセラーナは萎縮して手を引っ込めた。が、萎縮してしまった行為に気恥ずかしさを覚えたのか、憤慨した様子でストルンに向かって言い放った。
「触るなって、どういうことですの? さっきから何も教えようとしないばかりで、挙句怒鳴り散らされる筋合いなんてありませんわ!」
眉を顰めて明らかに怒っているセラーナを余所に、ストルンは表情ひとつ変えないまま、黙って何かぶつぶつ唱え始めた。……呪文?
怪訝そうに見るセラーナを余所に、ストルンはぶつぶつ何かを唱えていくと、ぼぅ……と両手がにわかに白く輝きだした。
この光はセラーナも以前見た事があった。スコールの民がミラークの呪縛にかかっていた時、村を守ろうと結界を張っていた時、見た光と同じだ。
両手が白く輝きだすと、ストルンは黙ったまま腰を落とし、片手を血痕に伸ばした。──触れるか触れないかで、伸ばした手が電気にでも触れたかのようにびくん、と揺れる。
「……やはりそうか。もしやと思ったのが本当になってしまうとは……」
詠唱を止めると、輝いていた光がふっと消えた、と思いきや、
「急げセラーナ! ジュリアンがこのままではミラークに乗っ取られてしまうぞ!」
突然走り出した。えっ、とセラーナは瞬間たじろいだ。乗っ取られる? ジュリアンが?
理解する数秒の間の後、セラーナも走り出す。それでも砂交じりの灰に足を取られて思いの外うまく走る事が出来ない。
「乗っ取られるってどういうことですの?」
走りながら喋るというのは苦労するものなのだな、とセラーナはこの時知った。そもそも思い切り走るなんて果たしていつぐらいぶりのことだろう?
「……血だ。血に触れた時、同じだと思った。あの本の事をネロスに訪ねられた時も、あの本を見た時も同じ感じがした。デイドラの王子が世界中にばら撒いたと云われる、おぞましき本──黒い本だ。
ハルメアス・モラがばら撒いた黒い本の中には、庇護されし存在のミラークが居る。ミラークがジュリアンに毎晩悪夢を見せている時点でもしやとは思っていた。それが今、血に触れた時に感じた事で嫌な予感は間違っていなかったと知った」
ふうふうと時折息を上げながらストルンは話してくれたが、それでもまだ全貌は見えてこない。とりあえずミラークが毎晩ジュリアンに悪夢を見せてきたのは彼の体を乗っ取る為──乗っ取る? どうやって?
と、話しながら言ったせいか分からないが、ストルンの走るスピードがどんどん遅くなっていった。それでも彼ははぁはぁと息を喘がせながら、
「……セラーナ。彼を、ジュリアンを止めろ。岩の浄化を止めさせるんだ。止めないと、彼は彼を媒体にし……ゲホッ!」
急に咳き込み、足を止めてしまうストルン。だがセラーナとて元々肉弾戦が得意でもなければ体力もずば抜けて高い訳ではない。彼女の息もとうに根を上げつつあったが、それでもジュリアンを止めろ、と言ったストルンの剣幕に圧倒され、彼女はストルンをその場に残し走り出した。
彼女は懸命に走った。やがて山から下りてくる小川が見えてくる。あの川を渡れば岩は目前な筈だ。疲れた身体に鞭打って川を渡った。
はぁ、はぁと息を弾ませてなだらかな斜面を駆け上がると、岩の先端部分が見えてきた。──まだ緑色の光を帯びている。浄化が済んでいない証だ。
「ジュ、ジュリアン……」
叫ぼうにも声がかすれてうまく出せない。足は休ませろと訴えてきたが、セラーナは無視してよろめきながら走った。浄化を止めるまで休むなんて暇は与えられそうにない。
山の麓の斜面を上がりきると、周辺はテル・ミスリン同様の巨大化した茸が点在する荒地だ。そのなだらかな斜面を下っていけば岩はもう目前にある。
走りながらセラーナは見た。岩の前に誰かがいる。黒い巨大な何かと戦っている。辺りでミラークの呪縛に縛られていた人たちはばらばらに倒れていた。気を失っているだけだというのはセラーナも何度か同行していたため分かっていた。
「ジュリアン、だめですわ、岩を……」
と、戦っていた黒い何かが地面に倒れた。“誰か”は肩で息をしながらも岩に向かって近づいていく。──まずい。
「駄目ですわ、ジュリアン!」
セラーナが走りながら叫んだ。ここまできて、間に合わないなんて訳にはいかなかった。
「………リァン」
誰かが、俺を呼んだ気がした。
えっ、と辺りを見回すも、誰の姿もない。先程何とか倒したルーカーも、こと切れて大地にその身を伏しているだけだった。
「また、疲れてるんだよな……でも、これで終わる」
岩に近づく。一言叫べば済むだけだった。──しかし。
「駄目ですわ、ジュリアン!」
今度ははっきり聞こえた。さほど遠くはない。……後ろから?
ばっ、と上半身だけで背後を見やると、見紛うことなきセラーナが、やや離れた位置からこちらに向かって走ってこようとしているではないか。
「………セラーナ……?」
はっとした。後ろにはセラーナ。前には岩。
岩を開放させなければセラーナに危害が及ぶ。夢でみたあのおぞましい光景が頭の中をよぎる。
しかし彼女が叫ぶ何が駄目なのかが、その時の俺には全く理解できなかった。──突如そこに居る筈の無い人が視界に入ってくれば、誰だってそうなる。思考と現実が切り離され、目の前に見える事象が幻覚ではないかとさえ思い始める。
……セラーナがここに居る訳ないだろ。疲れてるんだな、俺は。でも──これで終わる。
俺は岩の方に向きしな、後ろを振り向かず“叫んだ”──Gol.
「ジュリアン、駄目ですわ!! 叫んでは駄目!!」
殆ど悲鳴に近い声で叫んだのに。
彼は自分に気づいているのに“叫んだ”のだ──岩に向かって、その言葉を。
これで、ミラークの悪夢から開放される。
俺は重い身体を引きずるようにして後ろを振り向くと、彼女はまだそこにいた。……幻覚じゃないのか?
「セラーナ……本当に、君なのか?」
そう言った時だった。
『──見つけたぞ!』
突如自分の体がぶん、と音を立てた。……何の音だと自分の手を見ると、目が疲れているのか、はたまたおかしくなったのか、今見ている自分の手が二重に重なっているように見える。重なっているのに、俺の身体は透けている──透けている、だと?
え、と思う間も与えず、次の瞬間には猛烈な激痛が頭のてっぺんから足の爪先まで電流を食らったかのように全身に行き渡った。あまりの痛みに瞬間意識が遠のく。
「ぐぁ……ああああっ!」
痛みに堪えきれず悲鳴を上げた。──体の奥から何かが出てくる。何かが俺の身体を破ろうとしている。腹を食い破ろうとするが如く体内で蠢くそれは、俺の意識を痛みと強烈な力で捻じ伏せようとしていた。
振り払おうにも、それは全身から溢れ出てくる。その次には二重にぶれていた俺の体の片方がぶわっ、と光を帯び始めた。──光ではない。これはあれだ、ドラゴン・アスペクトを叫んだ時に自分の身体にまとわりつく“力”──
「セラーナ、逃……げ…」
それが精一杯だった。自分の身に何が起きているのか自分自身すら分からないまま、痛みに意識を奪われ混沌へと落ちていく。
意識を失う直前、セラーナの顔を見た。──泣きそうな顔の彼女を。
彼女の名をジュリアンが再び呼んだ直後、彼の足元から夥しい触手が溢れ出てきた。それはまるで、ルーカーや、シーカーの攻撃時に見られる蠢く触手の群れ──
「いかん、遅かったか!」
ふうふうとセラーナの背後から走ってきたストルンが、ジュリアンの居た方向を見ながら毒づいた。セラーナはどうすればいいのか分からず立ち尽くしている。
彼の全身は光を帯びていた。あの光は見た事がある。ドラゴン・アスペクトのシャウトを放ったときに見られる半透明の光──それは形を変えながらジュリアンの身体を守るもの──だった。それなのに、今見るその光は毒々しいほど蠢いていて、まるでジュリアンの身体を縛り付けている鎖のようにも見える。
「このままでは彼の身体を寄り代としてミラークが復活してしまう。セラーナ、ジュリアンを助けたかったら手伝え。彼をミラークの術中から剥がさないといかん」
「何故……ジュリアンは叫んだんですの、私は駄目と言ったのに……」
悔しさと、それ以上の感情をない交ぜにした表情を浮かべながら、セラーナがぽつりと言う。
意識のないジュリアンの体が、力抜けたように血が飛び散る地面に倒れる。倒れてもなお、ドラゴンアスペクトの光は輝きを収めず、おぞましい輝きを放っている。
──それは、彼とミラークを繋ぐ楔。同じ道を往ける者──即ち、竜の魂を屠る者でしか現せない“鎖”だった──
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前回に引き続き長くお送りしております。
大分佳境です。でも次で終わらせます。終わらせないと延々と続きそうで嫌だw
まだ全貌が見えてませんが、大体はストルンさんの言った通りですな。まぁ、勿論このままジュリアン(どばきんさん)が死ぬ事にはならんので(お決まりですが)ご了承を。
でもまぁ、まさかここまで長くなるとは当時(原稿執筆時7月あたり)の俺に予想が出来ただろうか…(~_~;)
最初は短い話で終わらせようと思ったのに、気づけば大風呂敷敷いてしまってる状況になってしまって大わらわ。でもまぁ一応話としては完結できる終わりまでしっかり考えてはいるのでご安心を。
まぁ次はラブラブキャッキャウフフあまあま1000%LOVE!!! なドヴァー×セラが拝めると思いますのでそのテが目当てで読んでる方、お楽しみに(多分いないと思うが)。
でもまぁ話が佳境になってくると中の人はノリノリに(かけている音楽にもよるが)なるので若干楽に書けました。難産だった頃にくらべると。
ただ、今回一人称(ジュリアン視点)と三人称(セラーナ・ストルン視点)がごっちゃまぜになってるので読みづらさ100%です。ごめんなさい。まだまだ文章力が下手糞な奴と思ってください<(_ _)>
ゲームのほうのSSもぺたっと貼っておきます。ブログ限定の久々にやっちゃったよSS。
話の中ではこんなのまだまだ出てきそうにないですが、ゲームの中ではよく中の人がムラムラしてこういうSS撮ってます(笑)
元画像は相当暗い画像でしたが、フォトショで加工してなんということでしょうw
ほんと、ゲームのSS画像もフォトショでがらりと変えられるのでフォトショ様様です・・w
という今回もイミフなブログですいませんでした。
次回で話は終わりになりますが、次回当社比1.5倍の文章量になると思うので少し時間がかかるかもしれません><; でも早めに上げますので気長にお待ち下さい。
ではまた。
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前回に引き続き長くお送りしております。
大分佳境です。でも次で終わらせます。終わらせないと延々と続きそうで嫌だw
まだ全貌が見えてませんが、大体はストルンさんの言った通りですな。まぁ、勿論このままジュリアン(どばきんさん)が死ぬ事にはならんので(お決まりですが)ご了承を。
でもまぁ、まさかここまで長くなるとは当時(原稿執筆時7月あたり)の俺に予想が出来ただろうか…(~_~;)
最初は短い話で終わらせようと思ったのに、気づけば大風呂敷敷いてしまってる状況になってしまって大わらわ。でもまぁ一応話としては完結できる終わりまでしっかり考えてはいるのでご安心を。
まぁ次はラブラブキャッキャウフフあまあま1000%LOVE!!! なドヴァー×セラが拝めると思いますのでそのテが目当てで読んでる方、お楽しみに(多分いないと思うが)。
でもまぁ話が佳境になってくると中の人はノリノリに(かけている音楽にもよるが)なるので若干楽に書けました。難産だった頃にくらべると。
ただ、今回一人称(ジュリアン視点)と三人称(セラーナ・ストルン視点)がごっちゃまぜになってるので読みづらさ100%です。ごめんなさい。まだまだ文章力が下手糞な奴と思ってください<(_ _)>
ゲームのほうのSSもぺたっと貼っておきます。ブログ限定の久々にやっちゃったよSS。
話の中ではこんなのまだまだ出てきそうにないですが、ゲームの中ではよく中の人がムラムラしてこういうSS撮ってます(笑)
元画像は相当暗い画像でしたが、フォトショで加工してなんということでしょうw
ほんと、ゲームのSS画像もフォトショでがらりと変えられるのでフォトショ様様です・・w
という今回もイミフなブログですいませんでした。
次回で話は終わりになりますが、次回当社比1.5倍の文章量になると思うので少し時間がかかるかもしれません><; でも早めに上げますので気長にお待ち下さい。
ではまた。
09.14.02:12
Nightmare.
※Skyrim二次創作小説第5チャプターです。その手のモノが苦手な方はブラウザバックでお帰りを。
これは第5話です。1話から読みたい方は「Taken.」からお読み下さい。(二次創作カテゴリから楽に飛べます)
これは第5話です。1話から読みたい方は「Taken.」からお読み下さい。(二次創作カテゴリから楽に飛べます)
ソルスセイムはモロウウィンドの北にあるレッドマウンテンを抱えた島、ヴァーデンフェルよりさらに北に位置する島なのは旧知に知る所だ。スカイリムよりやや北に位置するのと、島の北部は標高が高い地域が多く、雪と氷に閉ざされており島に住むダンマー達も滅多に訪れる事は無い。その代わり、比較的降雪量が少ない南側にスカイリムと島を繋ぐ玄関口があるレイブンロックや、そこから海岸線に沿って東に歩いていけば、気難しいダンマーの魔術師ネロスの住むテル・ミスリン等がある。
しかし、ソルスセイムのノルドが住むスコール村は降雪量の少ない海岸線に位置してないばかりか、島中央部あたりの険しい山脈地帯にこぢんまりと居を構えていた。太陽が出る日が殆どなく、絶えず雪が降りしきる厳しい土地で逞しく生きる彼らの姿に興味を惹かれてやってくる旅の者も少なくない。
だが、厳しい気候の中生きる彼らにとって、スコール村の住人はある意味、一つの共同体として生活をしているためか、ムラ社会として構築されている所に余所者が入る隙は無く、大概は受け入れられない場合が多い。それだけ、厳寒な場所での生活というのは皆生きるのに必死なのだ。この村では個々の生活を重んじる都市と違って、村が一つの家族同然だった。ある者は狩りをして得た獲物を村人に均等に与え、またある者は傷ついた防具の補修を買って出たりする。誰一人欠けては生きていけない。
そういう社会で成り立っているスコール村には、村全体を治める顔役のファナリ、そして呪術師であり導き手であるストルンが主体となって動いていた。彼らが頷かない限り、スコールの民は余所者と口を利くこともしないほど。
岩の浄化を行っただけでなく、ストルンの口利きがなければ、ジュリアンとセラーナはスコールの民に受け入れられないばかりか、村人が彼らに気さくに話しかけられてはこなかっただろう。それだけファナリとストルンの影響力は村人にとっても無くてはならないものなのだ。
何度か村人の手助けや依頼された品を送り届けたりもしたおかげで、村人は次第にジュリアンとセラーナに対して打ち解けていった。ストルンやファナリにスコールの民と認められてからは、最初に村に来た時と違い立ち寄っても奇異の目でこちらを見られる事は無い。
だから今、ふうふうと息を弾ませて村の入り口に立ったセラーナを見ても、民は驚くどころかにこやかに出迎えてくれたのだった。
はぁ、はぁ、と肩で息をしていても彼女の足は止まらなかった。村からやや外れにある一軒家にまっすぐ向かう。……勿論その家はストルンの家だった。ノックするのももどかしく、セラーナは扉を開けた。
何度かジュリアンと来ていたので部屋の構造は分かっていた。扉を開けてすぐ左側に長テーブルがあり、部屋の奥には錬金台が置かれてある。
ストルンはそこにいた。傍らには彼の愛娘であるフリアが立っている。どうやら父親と錬金について話し合ってたらしい。新しい調合でも試しているのだろうか。
「おや……あんたは確か、ジュリアンの……」
扉が開いたのに気づいたのか、ストルンは後方を見やった。フリアも同じようにこちらを見る。視界に入ったのがセラーナだけだったせいか、ストルンの声が意外そうに聞こえた。
セラーナは息つく間も与えず、レイブンロックからスコールまで歩いてきたせいもあって、ストルンの家の扉を開けた途端、へなへなとへたりこみそうになった。が、持ち前の気性もあってそこは踏ん張ってみせる。
「はぁ、はぁ……ジュ、ジュリアンの事で聞きたい事があるんですの。彼の様子がおかしくて……」
それでも肩で息をしているセラーナの口から発せられる言葉は息も絶え絶えの様子で、見かねたストルンは慌てて台所から水を一杯持ってきた。差し出された水を黙ってセラーナは口に運ぶ。寒い雪山を歩いてきたにもかかわらず汗が滲んでおり、冷たい水は火照った身体を落ち着かせてくれた。
「ずいぶん慌てた様子だな、ジュリアンに何かあったのか?」
怪訝そうな表情を浮かべたまま、ストルンがセラーナに聞いてくる。水を飲んで人心地ついた彼女は、深呼吸をして──切り出した。
「何があったのか教えてくれないから、私がここに来たのですわ。ジュリアンが岩の浄化を始めた辺りから様子がおかしくなったんですの。……彼はその原因を聞いても教えてはくれなかったのですけど……どうやら、ミラークが関係しているらしくて」
「ミラークだと?」ストルンの声が甲高く室内に響いた。続けざまに、「しかし、岩の浄化をやれば、少なくともミラークの力がソルスセイムの民に影響を及ぼす事は幾ばくかは薄れる筈なのだが……?」
それは間違っていない。「確かに、ソルスセイムの人達は岩を浄化することで解放されてはいますわ、けれどジュリアンがその代わり浄化を始めた時から毎晩悪夢にうなされるようになったんですのよ?
いつも何か、夢の中で叫んでいるようで……それを聞かれると気まずそうにしていましたわ……何か隠しているのは間違いありませんでしてよ」
ストルンの家はあまり大きくはない平屋なため、彼に話しているつもりでも同じ室内に居るフリアの耳に嫌でも入ってしまう。さすがに聞き捨てなら無いと感じたのか、父親の隣に座った。
「何があったのか話してくれないか。分かる範囲でいい。それがミラークの影響からくるものなのか、それを見定めないと──」
戸惑いを隠せないストルンに、セラーナは内心言ってやりたかった。あんたが急かしたからじゃないのか、と。
しかしそんな事を言ったところで何も変わりはしない。今はストルンの協力が必要なのは確かだった。今までの事を話さないと、ジュリアンはますます悪化の一途を辿る──いやもう手遅れかもしれない。
「……分かりましたわ。今まで──風の岩を浄化し、スコール村の人を解放させてからの経緯を──」
毎晩悪夢を見ているのか、うなされていたこと。
そのせいで眠れないのに岩の浄化に躍起になってきたこと。
満足に休めていないため、身体はフラフラなのにも関わらずルーカーと戦って、傷ついているのにそれでも止めようとしなかったこと。
そして何より──それがミラークの仕業かもしれない、ということ──
今までの経緯を全て話し終えても、ストルンは黙ったままだった。
フリアは父親の様子を窺いながらも同じく黙っている。二人とも、セラーナが話している間口を挟むようなことはしなかった。
「……それで、私は問いただしたんですけど、彼は──話すどころか私に暇を下さったのですわ。役立たずといわんばかりに」
自虐めいた口調で言い放ち、呆れたといわんばかりにセラーナは肩をすくめてみせた。精一杯の強がりだった。
しかしそれまで沈黙を守っていたストルンが突如、
「そう彼が言ったのかね? 君に、お前は役立たずだ、って?」
食いつくように聞いてきたので、セラーナはやや面食らった。「……い、いえ、そうは言ってませんわ。私がそう思っただけで──」
聞き返してきたのはそんな事か、とセラーナは内心がっかりした。案外この老人は思ったほど役には立たないのかもしれない。
「……暇をやると言われたんだったね? それはどんな感じで?」
思い出したくもなかったが言わざるを得ない。
「急にですわ。何の前触れも無く。
……今日の夜中に目が覚めて、私が悪夢にうなされている事について、何があなたを苦しめているのか説明してくれません? と聞いたら脈絡もなく『別れよう』と」
そんな事が何だというのだ? セラーナは地団駄を踏みたい気持ちを懸命にこらえていた。しかしストルンの表情は眉間にどんどん皺を刻み、険しい顔のそれになりつつある。
セラーナとストルンの応酬が続いている中、フリアはずっと黙っていた。何かを心配するような表情さえ浮かべている。ジュリアンを心配しているのだろうか、と思うとセラーナは何故か面白くない気がした。何故かは分からないが。
「ジュリアンが悪夢から目覚めた時、どんな様子だったか分かる範囲で教えてもらえないか?」
それが何だというのだろうか。セラーナはますます疑わしく思ったが、とりあえず思いつく範囲を全て述べてみた。
「……何かを思い出して怯えて叫んだりしていましたわ。瞳に怯えや恐怖を滲ませていたし、ああ、それと……自分の両手をじろじろ見てる事もありましたわね。ものすごく怪訝そうな目つきで」
「セラーナ、あんたの身体にジュリアンが異変に逢っていた間、何か起こったりはしてないか?」
ストルンが、間髪を入れずに問い返してくる。「私ですの? 私は……何も。眠らな……」
そこまで言ってから、セラーナはしまったと思った。自分が眠らなくても生きていける者──闇の眷属の首位たる位置に居る吸血鬼──だと知られたら、彼らがどいう態度を取るかなぞ容易に想像できる。ここで事を荒立てたくはない。
しかしどう言えばいいのか、とセラーナが逡巡していると、ストルンがとんでもない事を口に出した。
「ジュリアンから聞いている。大丈夫だ。知っているのは私しかいない」
えっ、と口から漏れたのを耳ざとく聞きつけ、ストルンは安心させようとでもいうのか、セラーナに向かってにやりと笑ってみせた。
「そうか、何も起きてはいないんだな? ……となると、まずいな」
まずい? とセラーナが聞き返そうと思うより先にストルンが立ち上がった。どこへ行くのかと思えば部屋の奥へと行き、何かをごそごそ漁る音がする。
「まずい、って……何の事です? ジュリアンが何かまずい事に?」
がたっ、と音を立てて椅子から立ち上がるセラーナ。ストルンが行った部屋の奥へ自分も行こうとしたが、ストルンが戻ってきた。彼は屋外で使う分厚いフードを目深に被り、帯剣をしていた。短い間で装備を整えていたようだった。
「フリア、お前は残っているんだ。生体賦活剤をいくつか作っておくんだ、いいな?」
反論する間も与えずストルンはフリアにそういい残すと、セラーナの方を見やって、
「ジュリアンは今どこの岩を浄化しに行ってる? 急がないといかん」
突然の事にセラーナは慌てたが、昨日まで同行していたので残りの岩が何かはすぐ見当がついた。「風と、獣と、大地は終わりましたから、残りは太陽と水ですわ、そのどちらかにジュリアンは向かっているはずですの」
セラーナの返答にストルンは短く舌打ちをした。「正反対だな。しかしレイブン・ロックを拠点としていたのならそこから遠方から攻めていったのも理由がつく。……急ごう」
言いながらストルンは玄関を開けた。ぶわっ、と雪が吹き込んでくる。どうやら外は吹雪いているようだ。
慌ててセラーナもついてストルンの小屋から出ると、いつしか外は酷いくらいの吹雪となっていた。すぐそこまでの視界が白く覆われて見難くなっている。
「山を下りれば雪はおさまるはずだ。急ごう」
ざっざっ、と雪を踏みしめる音を足早に立ててストルンが村を出て行く。セラーナは何がなんだか分からない様子でついていくしかなかったが、吹雪が身体にまとわりついて凍らせんばかりに体温を奪っていく。ストルンはスコールの民だ、相当分厚い防寒着を身に着けていたが彼女にはそれがない。
と思ってふと彼女は立ち止まり、自分用の小さな荷袋を開けてそれを見つけた。袋から引っ張り出す。あの時(※)ジュリアンがくれた外套があった。寒いから、といって渡してくれたそれを返さずにずっと荷袋に入れっぱなしにしておいたのだ。
“君を守る事を忘れたりはしないさ。約束するよ、セラーナ”
忘れてるじゃありませんの、とセラーナは内心ごちり、それを羽織る。今自分がこうして一人で行動してる事だって、彼は知る由も無いのは分かっているのに。
分厚い外套は彼女の身体をすっぽり覆い、すっかり寒さは感じられなくなった。再び荷袋を持ち、セラーナは村を出る。入り口から少し山道を降りたところにストルンが彼女を待っててくれた。合流しすぐに歩き出す。
「まずいって先程言いましたけど、何がまずいんですの?」
「……ソルスセイムの民が、ミラークの術によって岩に縛り付けられていたのは知っているだろう」
勿論だ。
「彼らは眠るとミラークの呪縛によって日夜問わず、ある者は聖堂の復興、またある者は岩をミラークの力を増幅させるものに塗り替えようとしていた。
その力の出所はまだ分からんが、恐らくはジュリアンも見たと思われる黒い本──ハルメアス・モラが何らかの手助けをしていると踏んでいる。岩の浄化をした際にジュリアンが叫んだシャウトによって出てきた“モノ”が、デイドラの王子の影響力を帯びていたという報告は聞いているからな。
私は黒い本の事については調べたくはない。しかしながら今回はそうも言っていられないだろう。ジュリアンが恐らく毎晩見ている悪夢というのは、ミラークがソルスセイムの民に対して行った事と同じだ。即ち“呪縛によって操る”事」
「……でもジュリアンは何度かミラークによって操られた事もありましてよ」
朝気がつけばベッドに居ないことも何度かあった。
「それは岩の浄化をする前だろう? 浄化を始めた時から悪夢を見始めたと言った時点でミラークはジュリアンに対する攻撃手段を変えたのかもしれない。そうだとしたら、非常にまずいことになる」
ざっざっと規則正しい足音を立てながら雪積もる山道を下っていくストルンの後を追うのは楽だった。彼が雪道を均すようにしてくれるおかげで滑らずに済んでいる。
「……だから先程から言ってるまずいことって一体何ですの?」
さすがに山道降りながら喋るのは危険と判断したのか、ストルンの足が止まった。セラーナの方を振り向いた表情は相変わらず険しいままで。
「私はかつてミラークによって操られていたスコール村の民に、その時の状況を聞いた事がある。
全員に聞いて回ったが、全員決まって同じ事を言っていた。『夢を見るんだ、毒々しいほど緑色の空に覆われた、禍々しい世界。何処だろう、と思う瞬間にその世界から離れるかのように意識は消える。その代わり何処からか声が聞こえるんだ、聖堂を復活させよ。汝の意識は我に在り──』そのような言葉をだ。そして意識を奪われた島民は日夜聖堂の復旧と岩の力を歪めるために明け暮れる。
彼らは聖堂を復活させる為であり、攻撃対象にはならない。しかし、ジュリアンはミラーク同様ドヴァーキンだ。しかも我々ソルスセイムの民を守る側に与している。
そこで一つの仮説が浮かぶ。ミラークはタムリエル復活を目論んで聖堂を復旧しようとしているのは分かるな? だがまだその時点には及んでいない。ジュリアンの話によれば、彼はまだハルメアス・モラのアポクリファに居座るだけに過ぎぬようだ。ソルスセイムの民を操ったりは出来るが、タムリエル全土の民を操る力は持ちえていない。
そして、岩だ。全創造主の力を封じ込め、ミラークがタムリエルに復活する力を宿しものに変えたにも関わらず、それをジュリアンが浄化し、全創造主の力を戻すまでしている。これによってミラークはタムリエルに復活する事を少しでも遅らせる事は可能だ、だから私はジュリアンに岩の浄化を頼んだのだ。
しかしそれが仇となった。復活の足がかりとなる支柱を折られて黙っている程ミラークは馬鹿じゃなかったようだ。……民を操ってきた見えない力を、ジュリアンに刃向かわせたのだろう、だから彼は毎晩悪夢を見てうなされていた」
「悪夢を見せられただけでジュリアンは浄化に躍起になったとおっしゃりたいんですの?」鼻白むようにセラーナが言った。そんな事はない、と言いたげなのは分かっているのでストルンはいいや、と首を横に振る。
「セラーナの話を聞くと、彼はひどく何かに怯えていると言ってたな、恐らく夢の中でミラークに弱みを突きつけられていたのかもしれん。ミラークはソルスセイムに住む大勢の者の心を操る力があるのだ、ジュリアンの心を夢の中で読む事なぞ造作もないだろう」
「弱み……?」ふと思った、あの時ジュリアンが言った言葉を。
“守るために別れを選んだと思って欲しい”
………まさか。
愕然とした表情を浮かべたセラーナに、ストルンは穏やかに言った。
「だからさっき言ったんだ、あんたの身体に何か起こったりはしてなかったか、と。……セラーナは無事だった。何故ならあんたは吸血鬼だから。闇の眷属たる者は眠るという行為を必要としない。だからミラークの影響が出なかった。
しかしジュリアンはそんなこと理解できないだろう、落ち着いて考えれば分かりそうなものを……それほど、ミラークの悪夢は鮮明で、リアルなものだったのだろうな」
「じゃぁ……彼が、彼が毎晩見ていた悪夢は……」
その先は言えなかったが、ストルンはうんうんと黙って頷き、
「ああそうだ、セラーナ、君の夢だよ。
恐らく想像したくもない、むごたらしい悪夢を見せ付けられていたんだろう、時々自分の手を疑わしげに見ていた、という点も考えると、恐らく彼自身にも影響が出ていたに違いない……だから急がなければならんのだ。今岩の浄化を全てやり終えると、恐らくとんでもないことになる」
一旦話を打ち切ったのか、再びストルンは先導で山道を下り始めた。
浄化を止める? どうしてだろう。けどそれを教えてもらう暇はなさそうだった。先にジュリアンを止めないといけないのは確かなようだ。
浄化を止める? どうしてだろう。けどそれを教えてもらう暇はなさそうだった。先にジュリアンを止めないといけないのは確かなようだ。
仕方なくセラーナも後を追うように山道を下っていく。しかし心の中はざわついたままだった。
彼女とストルンに襲い掛かる、吹き荒ぶ白い礫のように──
※二次創作カテゴリ内過去ブログ「この道の向こう側で。」参照。
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すいません、長くて本当にすいません。
やはり前回短すぎたせいで今回異様に長すぎた・・というかこの次のファクターを入れるつもりだったのにそれすら無理というorz
やはり7章あたりで終わりかな。まだまだまだまだ長いですがお付き合いしてやってください。涙流してフスロダします(ぁ
相当難産な三人称視点での文章、まだまだジュリアン(どばきん)さんでてきませんね。
次あたりで出てくるかな。まぁ出てきてもお察し状態ですがw
セラーナ大活躍でNPCばっかりしか出てこないからこれぞ二次創作ですね(笑)
しかし実際ゲーム内でここまでやらかしてきたらミラークさんも怖いんだけどなぁ、ゲームのミラークさん、今のところぜんっぜん怖くありません(ぁ
どんどん佳境に入っていきますが、楽しんで頂ければ幸いです。
夜中に打ってるのでそろそろ限界(汗)今日はここまで。また次回更新日に。
彼女とストルンに襲い掛かる、吹き荒ぶ白い礫のように──
※二次創作カテゴリ内過去ブログ「この道の向こう側で。」参照。
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すいません、長くて本当にすいません。
やはり前回短すぎたせいで今回異様に長すぎた・・というかこの次のファクターを入れるつもりだったのにそれすら無理というorz
やはり7章あたりで終わりかな。まだまだまだまだ長いですがお付き合いしてやってください。涙流してフスロダします(ぁ
相当難産な三人称視点での文章、まだまだジュリアン(どばきん)さんでてきませんね。
次あたりで出てくるかな。まぁ出てきてもお察し状態ですがw
セラーナ大活躍でNPCばっかりしか出てこないからこれぞ二次創作ですね(笑)
しかし実際ゲーム内でここまでやらかしてきたらミラークさんも怖いんだけどなぁ、ゲームのミラークさん、今のところぜんっぜん怖くありません(ぁ
どんどん佳境に入っていきますが、楽しんで頂ければ幸いです。
夜中に打ってるのでそろそろ限界(汗)今日はここまで。また次回更新日に。
09.07.20:02
Compassion.
※Skyrim二次創作小説第4チャプターです。その手のモノが苦手な方はブラウザバックでお帰りを。
これは第4話です。1話から読みたい方は「Taken.」からお読み下さい。(二次創作カテゴリから楽に飛べます)
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前回がめちゃくちゃ長かったので今回はちょっと短いところで区切ってみました。いや、ほんとはもう少し先で終わらせるつもりだったんですが・・・多分前回以上に長くなるのが見込まれたので・・・。
俺の書くセラーナは悉く色んな方から「かわいい!」といわれます。多分俺の願望が120%超で出てるためでしょう(笑)。
今回も相当そういう俺の願望が脳汁としてだだ流れした妄想1000%な話になると思いますがほんとすいません。懲りずに読んでやっていただけたら幸いです。
俺はドラゴンボーンDLCはまだ全然終わって無いし自キャラどばきん(ジュリアン)は岩の開放すらやりたくねーという(?)理由で全然やってません。
まぁでも多分このDLC、ミラークさんが強敵なだけじゃつまらないと思うんですよ。ストルンも言ってましたけど(最初の頃)、
「あんたはミラークと同じなのか? ならあんたも同じ道を通る奴なのか?」
多分ミラーク側に着いちゃうシナリオはないんでしょうけど(俺の知る限り)、同じ道を通るならミラークさんは気に食わないか、もしくは今後自分の話で出てくるような手段を取るか、二択になると思うんですよね。
でも確かドラゴンボーンて同じ時代に二人以上居る事もあるって本に書いてなかったっけ? ならミラークさんとキャッキャウフf……じゃなくて仲良くやっていける道だってあってもおかしくはないんでしょうけど。
あ、でもだめか。ミラークさん竜教団を裏切ったとかいってたしミラークさん元々死んでる人だからだめですな(あっさり完結
中の人は話を考えるのが好きです。だからドラゴンボーンDLCも「自分のキャラだったらこうするだろうな」とか「自分(以下略)ならここから別の話を作ってこうなってああなって」とかそういうのがたまらなく好きです。
今までこのブログに書いてきたプレイ日記ならぬリプレイ小説(新ジャンル確立しました!w)、や妄想で作ったアナザーストーリィ(今書いてる奴ですな)も全て自分がプレイしながら考えて作った妄想の産物です。
話を作るとき、やはり表立って出てくるのは自キャラ(ここではジュリアン)なので、各々の世界で作られるスカイリムにはちょっとどうかなぁと思ってた時もありましたが、2年半書いてきて、好評も得られるようになってきたのに改めて感謝しております。
自分の作り出す世界を貫き通していけば、やがてそれが一つの個性となり受け入れられる──
今もそう願って、話を細々書(描)いております。
初めてスカイリムの二次創作を書いた時(ここで)、当時は誰も見に来る人はいませんでしたw
まぁ自分のマーケティング能力が0だったからってのも(ビビリなせいもありますが)あって、ブログを開設して数ヶ月は誰も来ない日が続いたかな。
それだけ、自分の世界を、自分の作る話を認めてもらえる(見てもらえる)のは大変な事なんだなぁ~~~と痛感しました。
コミケで新刊出したときだって誰も来なかったしね(笑)
今でこそわざわざ自サークルに来て下さる方が細々増えてきて、ビビリなだけじゃだめなんだなぁと痛感する事ばかりです^^;
なので、ココの話もしっかりアピールしていこうと・・・いや無理かな・・ビビリな性格を直したい(涙
色々書きすぎましたorz
まだまだ続きますが、読んだ感想その他ご意見ご指摘つまらない等の意見もお待ちしております^^
ではまた次のブログ更新日に。
これは第4話です。1話から読みたい方は「Taken.」からお読み下さい。(二次創作カテゴリから楽に飛べます)
夜が明ける。
しかし、ソルスセイムは殆ど毎日灰が空中に舞うせいで空を雲が覆い、日差しを遮ってくれるせいもあって、セラーナは特に気にも留めなかった。留める事さえ最近は疎ましく思うようになっていた。
彼女はぼんやりと港の方を見ている。ソルスセイム唯一の玄関口があるレイブンロックの港。お世辞にも港とは言いがたいこぢんまりとしたそれではあったが、それでもスカイリムとこの島を繋ぐ重要な場所だ。レドランの衛兵がひっきりなしに見回りをしている姿はそこかしこに見受けられるのがそれを物語っている。
小さい港だからこそ、他の港と違って船が手狭に押し込まれている事もなく、また泊めてある船の数も少ない。目に写る分だけでも、小さなボートとスカイリムへ行くやや中型の船が係留されているだけだった。
そんな港の入り口付近で、セラーナはぼんやりと船を待っていた。ソルスセイムからスカイリムへ向かう船を、唯一人で。
傍らに、長い時を共に行動を続けてきた男の姿は──無い。何故なら自分は昨夜、その男に別れを告げられたからだ。……ものすごく一方的に。
『……えっ?』
当惑を滲ませた声をセラーナは上げた。聞き間違いかと思ったのだ。別れよう? 別れようってどういう意味だ、と。
目前に座っている男は、連日眠れないせいで顔全体に疲労度をべっとり滲ませたまま、うんざりするような態度で再度同じ事を言った。
『今言った通りだ。……この辺で別れよう。今まで世話になった』
『そういう事を聞いているんじゃありませんの。私が聞きたいのは、』
セラーナが食い下がるようにまくし立てようとしたのを止めるかのように、男──ジュリアンだ──は手でそれを制した。聞きたくない、と言いたげな態度にセラーナは軽く胸が痛む。
『俺から言えるのはそれだけだ。……長い間、色々と俺を助けてくれて本当にありがとう。……感謝している』
勝手に結論付けようとしている。セラーナはむかむかと苛立ちがつのり、立ち上がってテーブルをばん、と強く叩いた。木製のテーブルがびりびりと震える。
『何を勝手に決め付けてるんですの? 私の意志は関係ないと思っているんでして? ふざけないでいただけます?』
『ふざけてなんかいない!』
ジュリアンが見上げる形でセラーナの目をまっすぐ見ながら叫ぶ。セラーナはその時、ジュリアンの瞳の中に怯えとも畏怖とも似つかぬ何かが蠢いているような気がした。
何に怯えているのだろう? 眠れていない事、そして今切り出してきた突然の別れ……全ては繋がっている。しかし、当の本人が彼女に話そうとしないのだから始末におえない。
大声で反論してしまった自分に気づいたのか、ジュリアンははっとした表情を浮かべ、その後セラーナに目を向けず、逸らすようにして俯く。
何かを隠している事を気取られまいとでもいうのだろうか。誰の目にも彼が何かを隠しているのは手に取るように分かるというのに。
『……すまない。大声を出してしまって』
ばつが悪そうにぼそぼそと謝るジュリアン。
『なら何を隠しているのか仰ってくれませんですこと?』
尚も食い下がるセラーナ。……しかしジュリアンは話す替わりに頭を数回横に振った。
『それは……出来ない』
『何故?』
間髪を入れず問い返すセラーナ。その剣幕にジュリアンは圧倒したかと思いきや、すっと立ち上がったのでセラーナは話が終わらず寝室に戻るのかと身構えた。もし戻るのなら阻止してやろうとでも思ったのだろうが……そうではなく、テーブルをぐるりと回ってセラーナの傍までやってきた。
『……?』
何をしでかすのか、と思った次の瞬間……がしっ、とセラーナの両肩に手を置いた。置いたというよりは掴みかかったと言っても過言ではない、彼の大きな手のひらに華奢な彼女の肩はじわりと痛みを訴えてくる。
セラーナは痛いと言ってやろうかと思ったが、言えなかった。じっと自分を見つめる彼の顔を見たら言えなかったのだ。その顔は悲しみよりも悔しさを滲ませていた。
『お願いだ──俺に、最後まで君を守らせてくれ。それだけが、今言える精一杯の説明なんだ。……別れを告げたのに、こんな事を言うのは変かもしれない。けどいつか、これが正しいと分かってもらえると信じているから……』
間近に居たため、つん、とジュリアンの汗の匂いがセラーナの鼻につく。ここ数日毎晩のように汗で濡らした衣服を見ていたため、セラーナは別段嫌だとは思わなかった。
『別れを告げておいて“最後まで守らせてくれ”ですって? 意味が分かりませんわ。納得できる説明を要求いたしましてよ?』
ジュリアンは渋面のままだったが、次にはふっと自嘲めいた笑みを浮かべた。
『ああ、そうだな。……こんな事をすれば、俺に対して嫌気が差すかもしれない。でも……それでもいい。言い訳がましく言いたくはない……が、一つだけ言わせてくれないか。
君を守るという約束を反故にしたつもりはない。守るために別れを選んだと思って欲しい。……失礼だと承知で言ってる。悪く思わないで欲しい。
スカイリムに戻ったら、ヴォルキハル城のヴァレリカの所にいれば安全だ、ミラークの影響範囲はソルスセイムを出れば無くなるからな』
その名前が出た瞬間セラーナはぴんときた。やはりその名前が原因か。『ミラークの事なんですのね、やっぱり。ジュリアンがやたら怯えるその理由は?』
ジュリアンはしまった、と小さく舌打ちをしたが、今更言い訳をしても無駄な事は分かっていた。しかし、彼女の問いには答えず、
『明日、スカイリム行きの船が発つ筈だ。それに乗ってスカイリムに戻ってくれ。
……話は以上だ。ごめん、突然な話で』
ゆっくりと、セラーナの肩においていた手を離すと、ジュリアンは悲しいとも寂しいとも取れる表情を見せて、黙って寝室へ戻っていった。話は終わってないと尚も食い下がるセラーナを無視して、彼は寝室の扉を閉め切ってしまった。
何度も呼びかけたが、反応は無く。
朝になっても扉を開けようとしないジュリアンに、自分が出て行かない限り彼はここから出てこないんじゃないかと思ったりもした。
……でも別れを言われたのは間違いない。最早自分がこの場所に留まる必要はないのだ。──セラーナの心の中でそう結論が出た時、彼女は一晩中叩いていた寝室の扉から離れた。
扉を叩く事も、反論する事も、する必要がない──何故なら自分はもう彼の連れでもなければ従者でもない。
ホワイトランの首長の謁見の間で、ジュリアンが彼女に忠誠を誓った事も、今となっては過去に誰かと交わした口約束同然の行為に過ぎなかった。……全ては終わったのだ。別れを告げられ、暇を出された時点でジュリアンとセラーナには縛る契約も忠誠も何一つ泡沫同然に消えてしまった。
そんな簡単なものだったのだろうか。一方的に別れを告げられる程、自分と彼の間には何もなかったのだろうか。常に見ていた、追っていた者の姿が無いだけで、自分はこれほど胸騒ぎがした事があったか……
と、物思いに耽っているセラーナを余所に、カーンカーンとけたたましい金属音が鳴り響いてきた。彼女は思わず伏せていた目を開けてみると、
「スカイリム行きの船間もなく出港ー! 乗る方は急いでご乗船をー!」
船員のどら声と、その船員が叩く金属音──どうやら金属のお椀の底を短剣で叩いているようだ──が同時に鳴り響いているため、聞きにくい事この上なかったがとりあえず急いで船に乗らないといけないのは確かなようだった。
セラーナは立ちつくしていた足をゆっくりと桟橋の方へと歩き出した。船と桟橋を掛ける板の前に船員らしき男が乗る者から乗船代を受け取っているのが見て取れる。払えばあとはスカイリムに着くまで船の中に居ればいいだけだ。
「へい、お嬢さん、スカイリムまではセプティム金貨250枚ね」
馴れ馴れしい言い方に、かつての自分だったら眉を吊り上げて反論していたかもしれないな、とセラーナが思った途端はっと気づいた。
──そうだ、かつて数年前にも、同じ胸騒ぎを覚えた事があった。あれは自分がディムホロウ遺跡の中で目覚め、ヴォルキハル城まで送ってもらった際──彼が父、ハルコンと対峙した際に──
『悪いが──吸血鬼には、ならない。俺はあんたの娘を送っただけだ。お土産に吸血鬼にされるのはまっぴらごめんなんでな』
四面楚歌──そう言われてもおかしくない。
周り一面吸血鬼しかいない中、ジュリアンは父にそう言ったのだ。彼の言い方に周りの吸血鬼はどよめいた。人間の分際で王になんたる言い方を、といったような事がセラーナの耳に入ってくる。
父ハルコンはジュリアンの言い草に眉を吊り上げたりはせず、黙って頷いた後、
『それもよかろう……だが、二度とこの地に踏み込むな。お前は我らにとって敵、それはお前も同様だろう? 娘を助けてくれた事には礼を言う。……さらばだ』
『それもよかろう……だが、二度とこの地に踏み込むな。お前は我らにとって敵、それはお前も同様だろう? 娘を助けてくれた事には礼を言う。……さらばだ』
そう言った後父によってジュリアンは昏倒させられ、島の外れ、船を泊める係留所に捨て置かれたのだ。
ジュリアンが島から出て行く姿を、城の中でセラーナは黙って見ていた、その時と同じなのだ。
あの時は、たった数日しかジュリアンと旅をする機会はなかった。それなのに、前に居る者の姿が居ないだけで自分はこんなにも胸騒ぎがする。
何故だろう? 母ヴァレリカの傍に居た時はそんな事なかった……いつもヴァレリカの傍に居たから。
それは自分が────
あの時は、たった数日しかジュリアンと旅をする機会はなかった。それなのに、前に居る者の姿が居ないだけで自分はこんなにも胸騒ぎがする。
何故だろう? 母ヴァレリカの傍に居た時はそんな事なかった……いつもヴァレリカの傍に居たから。
それは自分が────
「……やっぱり、やめますわ。まだやり残した事があるんですの」
船員にそういい捨ててセラーナは踵を返した。足早に港を出てそのまま右へ曲がり、そのままレイブンロックを出て行く。
行く先は一つしかなかった。ジュリアンが言わないのなら、彼が何に苦しめられているか聞くしかない──スコール村のストルンに。
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前回がめちゃくちゃ長かったので今回はちょっと短いところで区切ってみました。いや、ほんとはもう少し先で終わらせるつもりだったんですが・・・多分前回以上に長くなるのが見込まれたので・・・。
俺の書くセラーナは悉く色んな方から「かわいい!」といわれます。多分俺の願望が120%超で出てるためでしょう(笑)。
今回も相当そういう俺の願望が脳汁としてだだ流れした妄想1000%な話になると思いますがほんとすいません。懲りずに読んでやっていただけたら幸いです。
俺はドラゴンボーンDLCはまだ全然終わって無いし自キャラどばきん(ジュリアン)は岩の開放すらやりたくねーという(?)理由で全然やってません。
まぁでも多分このDLC、ミラークさんが強敵なだけじゃつまらないと思うんですよ。ストルンも言ってましたけど(最初の頃)、
「あんたはミラークと同じなのか? ならあんたも同じ道を通る奴なのか?」
多分ミラーク側に着いちゃうシナリオはないんでしょうけど(俺の知る限り)、同じ道を通るならミラークさんは気に食わないか、もしくは今後自分の話で出てくるような手段を取るか、二択になると思うんですよね。
でも確かドラゴンボーンて同じ時代に二人以上居る事もあるって本に書いてなかったっけ? ならミラークさんとキャッキャウフf……じゃなくて仲良くやっていける道だってあってもおかしくはないんでしょうけど。
あ、でもだめか。ミラークさん竜教団を裏切ったとかいってたしミラークさん元々死んでる人だからだめですな(あっさり完結
中の人は話を考えるのが好きです。だからドラゴンボーンDLCも「自分のキャラだったらこうするだろうな」とか「自分(以下略)ならここから別の話を作ってこうなってああなって」とかそういうのがたまらなく好きです。
今までこのブログに書いてきたプレイ日記ならぬリプレイ小説(新ジャンル確立しました!w)、や妄想で作ったアナザーストーリィ(今書いてる奴ですな)も全て自分がプレイしながら考えて作った妄想の産物です。
話を作るとき、やはり表立って出てくるのは自キャラ(ここではジュリアン)なので、各々の世界で作られるスカイリムにはちょっとどうかなぁと思ってた時もありましたが、2年半書いてきて、好評も得られるようになってきたのに改めて感謝しております。
自分の作り出す世界を貫き通していけば、やがてそれが一つの個性となり受け入れられる──
今もそう願って、話を細々書(描)いております。
初めてスカイリムの二次創作を書いた時(ここで)、当時は誰も見に来る人はいませんでしたw
まぁ自分のマーケティング能力が0だったからってのも(ビビリなせいもありますが)あって、ブログを開設して数ヶ月は誰も来ない日が続いたかな。
それだけ、自分の世界を、自分の作る話を認めてもらえる(見てもらえる)のは大変な事なんだなぁ~~~と痛感しました。
コミケで新刊出したときだって誰も来なかったしね(笑)
今でこそわざわざ自サークルに来て下さる方が細々増えてきて、ビビリなだけじゃだめなんだなぁと痛感する事ばかりです^^;
なので、ココの話もしっかりアピールしていこうと・・・いや無理かな・・ビビリな性格を直したい(涙
色々書きすぎましたorz
まだまだ続きますが、読んだ感想その他ご意見ご指摘つまらない等の意見もお待ちしております^^
ではまた次のブログ更新日に。
09.04.00:24
またまたスカイリムえにっき
絵を描くのはコミケ以来です(ぉぃ
半月ぶりに描いてみたのが絵日記でしたw
というわけでこんばんわ。今回はやや早い更新ですが小説の方は少しお休み。
今回はふと思い立ったのを走馬灯を回す感じで書いてみました。
フォロワーは誰しもそうだと思いますが、プレイヤーが斧持って薪割りしてるとプレイヤーが振りかぶって下ろすまで首を上下に動かすじゃないですか。
あれがもっともしっくり(?)きたのがセラーナじゃないかなぁ、って俺は思ってます。彼女は浮世離れしてるって印象が(クエストライン中では特に)あったので、首を上下に振ってプレイヤー(ここではジュリアン)を見てるのがおかしくてかわいくてたまらんかったですばい(笑)
というのが描きたかっただけ。
フォロワーに限らず、スカイリムの住人はプレイヤーが近づくとそちらの方を見ますけど、そういうのも悪くないな、と。
で、久々のゲームのSSをぱちり。
たまにTwitterのほうとかタンブラーの方とかにも上げてますが、最近はコミケ終わった後からも色々やる事があってなかなかSSとれなかったんですけど、今週になってようやくゆっくりプレイできるようになりました。
かっちょいい剣MODを入れたのでぱちり。
あ、フォトショで加工を忘れた・・まぁいいか。
ジュリアンさんもセラーナたんも白装備になりました。何故かというと、鎧と衣装全部黒系だったのが灰のせいで白くなっちまったと勝手に思ってるので、読んでる方もそう思ってやって下さい(笑)
というのは表向きの話で、この防具がめっちゃ気に入ってるからですw
TERA防具セットMODではなく、単体のみのMOD入れてるのでこれしかないんですけどね。
そしてお決まりのネタ写(笑)
暖炉前で手をすり合わせるモーションみて、
「あ、これ使えるじゃん!(爆死)」
と思って撮ってみましたが色々変です。俺はSSに命をかけるほどじゃないので変で申し訳ないorz
この先どうなったかはまぁご想像通り。
そういうSSも撮ろうかと思ってたんですが、絵を描く方がいいかなあと思っちゃったので今回は割愛させていただきますorz
全然プレイ日記になってないという(絵日記でもないか)今回の記事。トホホ。
とりあえずコミケ原稿ばっかり描いてたせいもあって、長時間プレイすると3D酔いするようになっちまった俺です(号泣
多分やっていくうちに戻るでしょうが、まさか3年近く遊んでるゲームに今更3D酔いするとかちょっと・・情け無いですね。
またSS撮りためてマトモなプレイ日記も上げたいですね。
暫くブログの閲覧者が20000HIT記念でリク絵を描いたりするので、またぼちぼち遊ぶ時間が減りますが、スカイリムはまだまだ遊び足りない(というか行ってない終わってない遣り残したままのクエがわんさかある・・)ので、ご安心を。
飽きる事は多分無いんじゃないかな、新作でも出ない限りは。
中の人は新作すら出なくなったゲームの同人活動を16年やってますので(爆死
イミフなまま終わります、毎度毎度ほんと役に立たない記事ばっかりでごめんなさい。
楽しんで頂ける事を。ではまた次のブログ更新日に。