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SkyrimとFallout4・76の二次創作メインブログです。 たまにMODの紹介も。
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04.25.21:02

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  • 04/25/21:02

09.09.00:28

Chain of reprisal

※Fallout4二次創作小説です。その手の部類が苦手な方はブラウザバック推奨。


「……久しぶりだな」
 薄暗い地下鉄の跡地に出来た、グッドネイバー唯一の“娯楽施設”ことサード・レールはその狭い店内に隠れるようにして常連客がちびちびと酒を嗜む店であった。所狭しと置かれたソファーやカウチに座っている客は、地下鉄の階段を降りて来る者に必ずと言っていいほど一瞥をくれてから、再び顔を伏せるようにして酒を飲み続けていた。隠れ家というより、関わりを持ちたくない者達が集まっているようなこの場所が、決して居心地のいい場所ではないことは分かっている。が──俺はかつて、サード・レールに足繁く通っていた。この場所の雰囲気が、何処と無く自分の肌に合っていたからかもしれない。
 下界と関わるのを可能な限り避け、日陰に生き続ける……持たざる者達の中に埋もれて誰も知らない、知りたいとも思われない自分を慰めるには格好の場所だったから。

「ああ、あんたかい。随分久しぶりじゃないか」
 機械の発する声にしてはやや人間味に臭い言い方をする目の前のMr,ハンディ型のバーテンダー、通称ホワイトチャペル・チャーリーが抑揚の無い声をかけてくる。ハンディ型と言ったが、目前に居るチャーリーはどちらかと言うと戦闘に特化したMr.ガッツィーの声に似ていた。好戦的で敵を煽って来る意地の悪い声。
 と思いながらもさすがに意地悪い声とは言わずに、
「そういや随分ここには立ち寄ってなかったな。……前は頻繁にここに来てたのに、すまないな」
 謝るつもりもない口調で言うと、所々錆に浮いている丸い頭と、その頭の三方から突き出た丸い瞳の役割をするアイセンサーが一斉にこちらを凝視し、「らしくもない事を言っても全く心に響かないぞ。……もっとも俺には心なぞないがな。──で? 酒を飲んでいくんだろう? 違うか?」
 勿論頂くよ、と言って俺はチャーリーからビール瓶二本分のキャップを受け取り、瓶を二つ受け取るとそれを傍らで突っ立っていたマクレディに投げて寄越した。
「っと。突然投げてくるなよ──危ないぞ」
 マクレディが悪態をつくが、彼の表情は怒ってもおらずむしろ嬉しそうなそれだった。そういうやりとりを黙ってみていたチャーリーは驚いた様子なぞ微塵も見せず、「何だ、あんた今マクレディと行動してるのか?」と言ってくる。
「あぁ、そうだけど」言いながら俺は親指でビール瓶のキャップを外し、飛びかけたそれをうまく人差し指と中指でキャッチした。そのまま躊躇いもせずくい、と瓶の口を自らの口へ押し込み傾けて、入った琥珀色の液体を喉へと押し流す。酒というには薄すぎるが炭酸の僅かな感触が舌に伝わってきて、気持ちがいい。
「そうか……道理で最近姿が見えないと思った訳だ。あんたと一緒に居たとはね。──そういやここ数ヶ月の間、数日おきにお前を探してるって奴がここに何回も顔を見せてるんだが、お前知らないか、マクレディ」
 マクレディを探している? と俺が言うより早く、「俺を探してる奴って?」と彼の方がチャーリーに返事をしていた。
「身なりはいたってそこらじゅうに居る、普通の男だ。ただ……変な事を言ってたな、お前に借りがあるだの、返すものがあるだの──ここには暫く帰って来てないって言ってるのに何度も来てるから今日も来るかもしれんぞ、その時直接言えばいいんじゃないのか?」
 ふぅん、と返事を濁すマクレディ。それ以上何も言わず黙って瓶を口に傾けるだけになったので、「もし俺達がここを去った後にまた姿を現したら、旅に出てるって伝えてやってくれないか、チャーリー」
「そりゃ構わないさ、誰にとは言わないでおくよ。……おっと、始まるようだぜ」
 と、チャーリーがアイセンサーをウィィ、と機械音と共に右手に移す。その姿につられて俺も見ると、薄暗い店内の端だけ煌々と明りが灯されており、それがスポットライトの代わりとなっているのか赤いスパンコールのドレスをキラキラさせながら、一人の女性がマイクに手を掛けてポーズを取っていた。──マグノリア。場末の酒場に降り立った歌姫。
 久しぶりに見る彼女は相変わらず濃いアイシャドーと、印象付けにはぴったりの紅いルージュを唇にひいている。スパンコールのドレスに負けず劣らずといった感じだが、何せ化粧品なぞこの世界では貴重品以上価値のあるものだ。自分が生きていた時代には当たり前だったものが無い故に彼女の顔は貧相ではあったが、それでも惜しげもなく晒しだしている肌の色は白くスポットライトに当てられて艶めき、紅いルージュはさらに色気を醸し出すには十分すぎるものだった。
 ちら、と僅かに一瞬、彼女の視線と自分のそれが絡み合う。来てくれたのね、とは言葉に出さずとも伝わってきた。俺は黙って頷いて見せると、彼女は安心したように音楽に乗り声を出す。色気と妖しさをまぶした声に、俺はたまらずうっとりとしてしまう。周りの客も彼女の出す声に引き寄せられるように、俯いていた顔をめいめい上げては声を出す彼女に視線を奪われていった。

「ふん、何だよジュリアン……あんなに鼻の下伸ばしやがって」
 つい悪態をついてしまう。おかしい、何で俺はこうも機嫌が悪いのだろう。
 周りの客は全員彼女──マグノリアの方だ──に目を奪われている。それなのに、俺はというと、サード・レールの壁に寄りかかって、恍惚とした表情で彼女を見ているジュリアンの横顔をじっと見ているだけだ。時折、笑顔を向けて頷いていたりするあたり、俺には見えない何かをマグノリアと送り合っているのだろう。……だからだろうか、余計に面白くない。……って、だから、何で俺は面白くないんだ? 
「俺がマグノリアに惚れてる訳ないしなぁ……」
 歌っている彼女の姿は、以前──ジュリアンと旅をする前の話だ──ガンナー連中とこちらから手を切って、流れるようにこの場所に行き着いてからずっとここで身を寄せていたのもあって、何度も見てきたし何度もその歌唱力には感心してきた。
 でも、それだけだ。それ以上何の感情も沸いて来ない。
 それなのに、マグノリアに鼻を伸ばしているジュリアンを見るのは苛々する。苛立ちの出所はどうやら彼で間違いない……らしい。理由は分からないが。
「頭でもおかしくなっちまったのかなぁ、俺」
 一人ごちても、誰も彼もが歌に酔いしれているだけで、自分の独白なぞ誰の耳にも届いてはいない。仕方なく、黙ってビール瓶を傾けてみたものの、肝心の中身をとっくに飲み干している事に気づき、ばつが悪い顔をしてしまう。
 もう一本買おうにも、俺の財布にはキャップが一枚も無かった。……そうだった、いつもジュリアンが買って、俺に寄越してくれていたのもあって、すっかり自分の手持ちなぞ出したことが無い事実にこれまた気付かされる。その手持ちが0だという事実にも。
 つまり俺は彼と別れたりした場合、0キャップで連邦を彷徨う羽目になるのか。考えただけでも末恐ろしいな──
 などと考えながら、そんな事ある筈がないと……ふふっ、と口元を歪めて一人笑っている時だった。
「よぉ、……あんた、マクレディだな?」
「え?」
 突如背後──というより、寄りかかっている壁のすぐ左手にはサード・レールと地上に繋がる階段があるだけだから、その階段の方から俺を呼ぶ声がしたので、ふと声を掛けられた方向に俺が顔を向けるのと、何者かに左手を突如掴まれ、そのまま捻るように自分の背中に押し付けられたのはほぼ同時だった。
「ぐっ…、あぁ…! な、何者……だ!」
 利き腕でない左手が、不自然に歪められているせいでぎりぎりと激痛が走る。押し殺したうめき声を上げても、歌姫に夢中になっている客は俺を襲ってきた背後の奴に気付いた様子はない。
 腕を掴む手を跳ね除けようと右手を振りかぶって掴みかかろうとした時、
「動くな。動けばあんたの仲間であるあの男を撃つ」
 自分の左腕を掴んだまま、男の右手に握られている何かが俺の右頬にぴたり、と押し付けられた。──視線をずらしてみても、押し付けられているものがどういった物かは分からないが、俺の腕を掴んだまま右手のみで扱えるものといえば小型の銃しかない──10mmピストルではないだろう。恐らくマグナムか、改造した小型の銃火器か──
 しまった、と思った──常連や客は全てマグノリアに集中している。そして、ジュリアンも。
 彼女の声は店内に響き渡っている。今発砲したところで、その音に気付く奴は居ないかもしれない。そしてここに居るのは酔漢ばかり。
 圧倒的に不利な立場だった。抵抗すればジュリアンは撃たれ、俺の腕を掴んでる奴は逃げて俺にその罪を擦り付けるかもしれない。……いや、ジュリアンじゃなくても、客の一人にでも致命傷を負わせたら、それこそ俺の身の破滅だ。逃げてもいいだろう。けどそうすれば俺は二度と……。
「……もしかしてあんた、俺を探してたって言う奴か? 借りがあるとか言ってたそうだが、その借りってのがこれか?」
 抵抗をしない代わりに、こちらから鎌を掛けてみる。男は狼狽した様子も見せなかったが、背後で僅かに何か動く気配があった。……まさか俺を撃つつもりじゃ、と背中がひやりとする。返事の代わりに鉛の弾を撃ち込むつもりか──
「……そうだ」
 と、ぽつりと背後の男がそう言った──直後、突然俺の右腕をがしっと掴んでくる。先程まで右手に持っていた銃はどうしたのかとそんな事考える余裕も与えず、振り払う事すらかなわず俺の右手を目前に突き出す形にすると、
「借りを返すぞ」
 今度は掴んだままだった俺の左腕を離す、と──その腕を自分の右腕同様に俺の目前に突き出した。その手に握られていたのは──注射器だった。
「……!」
 何をするか嫌でも分かる。何度も右腕を振りほどこうと動かすも男の手はぎゅっとこちらの腕を掴み、離そうとしない。腕に跡が残るじゃないか、とこの状況とは場違いの文句が頭に浮かんでくる。
 捻るように背中に押し付けられていた左手は力なく垂れ下がっており、注射器を持つ男の左腕を制止する事も叶わず──ダスターコートを捲った部分に男の握られている注射器の針がぶすりと刺される光景を嫌でも見せ付けられる形になった。
「やめろぉぉ──!」
 刺さったと同時に激痛が走る。叫びながら、体当たりするように相手の左腕を突き飛ばし、腰に帯びている近接攻撃用の10mmピストルを右手でホルダーから引き抜くと、くるりと踵でターンしながら背後に立つ男の心臓付近をパァン、と乾いた音を響かせながら至近距離で弾を発射させた。
 撃たれた男は避けようともせず──こちらを見ていた。その表情はにやついていた。してやったり、といわんばかりの笑顔で。……まさか。
「最初から、死ぬ気だっ────……」
 その直後、目の前がぐらり、と回った。世界が二つに分かれる感覚。上下に同じ景色が見える。周りの客がざわめき、店から出て行く者が視界に飛び込んでくる。──そんな俺の視界を覆うようにして、近づいてくる者。
 ジュリアンだった──ような気がする。世界は幾重にも分裂していて、彼の表情すら見分けがつかない。
 ──そして、闇が訪れた。

 パァン! と、乾いた銃声と共に、客の一人が悲鳴を上げた。
 その悲鳴の方向を見ると、10mmピストルを持ったマクレディが、至近距離で相手──見かけない奴だ──を撃っていた。擦り切れたジーンズに所々つぎはぎのあたった、やや身体のサイズに合ってない服を着ていた男は、マクレディの放った銃弾を避ける事すら叶わず、胸から鮮血を溢れさせ倒れていく。
 その光景が酷くスローモーションに見えた。何が起きているのか分からなかった。その僅かな静寂の後、客が悲鳴を上げてサード・レールから次々と出て行くのにはっと我に返り、
「マクレディ!」
 慌てて彼に駆け寄る。が──マクレディは手にした銃を地面に落とし、焦点が合ってない目を見開いたまま、がくっ、と膝を地面についた。そのまま床に倒れるのを慌てて俺が腕で抱きとめる。
「マクレディ、おい、しっかりしろ、マクレディ!」
 頬を叩きながら彼を起こそうにも、マクレディは目を閉じてしまい、苦悶の表情を浮かべている。一体何が起きた? 何があったんだ?
「出てってもらおうか」
 ──と、背後からホワイトチャペル・チャーリーの苛立った声が耳に飛び込んできた。確実に営業妨害されたと言わんばかりの態度だった。
「ちょ、ちょっと待ってくれ、一体何が起きたのか──」
「それはこっちも同じだよ、けどなジュリアン。死人を出して、それでも飽き足らず客を全員追い出すとはいただけない話だ。いくらあんたやマクレディとは付き合いが長いからって、客商売を上がったりにするのは話は別だ。今すぐ出てってくれ」
 チャーリーのいう事はもっともだった。けどここで──俺がマグノリアに見とれていた間に、マクレディに何があったのかを知らないと。何かがおかしい。
 マクレディをそっと床に寝かせ、俺はチャーリーの声を無視して死んでいる男の身なりを確かめた。一件、何処もおかしな所はない。銃を所持していたが、然程威力が高いとは思えない38口径のパイプピストル一丁だけだった。
 お世辞にも身体のサイズに合っているとは言い難い、シャツを脱がせて上半身をあらわにする。マクレディが至近距離で撃った銃弾が左胸、心臓のやや下辺りを貫通し、貫通した穴を覆うように皮膚がうっすらと焦げていた。至近距離で撃ったために高圧ガスや火薬残渣が当たって焦げたのだ。
 それはいいのだが、この男、居住者やウェイストランド人とは思えない精悍な体つきに違和感を覚える。ジーンズのポケットを探ってみたが、これといった物証は見つからない。──と、こつ、と膝に何かがぶつかった。
「なんだこれは……注射器?」
 拾い上げてみると、よく医者が使うそれと同じものだった。針の先端部分に血が付着しているのと、注射器の中にはまだ液体が僅かながら残っている事以外は。
 マクレディの腕を見ると──あった。右腕に小さい穴が開いている。血が転々と飛び散って腕についているあたり、無理やり注射器を引き抜こうとしたようだった。針が体内で折れなくて良かったぜ、と内心ほっとする。
「さあ、もういいだろう。それとマクレディを持ってとっとと出てってくれ」
 背後でチャーリーが苛立ちを隠せない口調でまくし立ててくるので、ざっと検分は済んだし退くことにした。これ以上迷惑を掛けるわけにはいかない。
「ジュリアン、遺体はこっちで始末しておくから、気にしないで」
 マクレディを肩にかつぎしな、マグノリアが青ざめた顔ながらもそう言ってくれたので、ありがとうとお礼を述べる。
「ああ、……すまない。あんたのステージ中にこんな事になっちまって」
「いいのよ、それより彼を何とかしてあげた方がいい。Dr.アマリの所に行けば何か分かるかもしれないわ」
 その手があったか。俺は再度お礼を言って、マクレディを担いだままサード・レールを後にすると、そのまま左手にあるメモリー・デンへ向かう。
 前から何度かお世話になっているDr.アマリはそこにいる筈だった。

 そしてこれが、俺をマクレディの記憶の世界へ誘う第一歩の始まりだった──








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 お待たせしました。とりあえず告知どおりの話の始まりです。
 本当はもうちょっと先まで書きたかったのだけど、長くなりそうなので・・。
 
 それではチャプター2もお楽しみに^^

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