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SkyrimとFallout4・76の二次創作メインブログです。 たまにMODの紹介も。
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05.19.05:21

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  • 05/19/05:21

03.10.21:46

光る風

※今回もごめんなさい、例に漏れずFO4のクエスト+アルファなお話です。
その手のものが苦手な方はブラウザバックでお戻りを。



 気づけば俺は手を差し出していた。
 途方に暮れ、どうしていいか分からない──戸惑う彼に、俺は自然と手を伸ばしていたんだ。

 彼の手を失いたくなくて……。

 事は数ヶ月前まで遡る──
 ニックと共に行動して数ヶ月が経っていた。すっかり季節も感じなくなってしまった連邦の冬が過ぎ、新しい年が明けた──といっても喜ぶ者はどの町を探しても居なかったのだが──2289年、二月半ばを過ぎた頃。
 彼の口から出た言葉は、かつては生身の姿で、警官を務めていた彼自身の記憶──“ニック・バレンタイン”自身の記憶に残されたひとつの事件の顛末だった。
 エディー・ウィンター……と云うその男は、かつて生身の身体を持ち、警察官として生きていたニック・バレンタインのフィアンセを殺し、210年経った今でもとある施設の中に身を潜めている、というものだった。
 そんな話を聞いたものの、最初っからそんな話俺は信じちゃいなかった。210年前──つまり俺がVault111に避難した時から、彼が生き残ってるなんてどだい、無理な話と思っていたのだ。
 しかし、ニックはこうも持論を展開した。「そりゃ、普通の人間ならとっくの昔に死んでるだろうさ。けどエディーがグールに身を変え、今でも生きていたらどうする? ジュリアン。
 俺はエディーは生きていると思う。彼が残したホロテープが鍵だ。それをすべて集めれば、彼の居る施設の厳重な扉を開け放つことが出来る、という訳さ」
 それも“ニック・バレンタイン”の記憶にあるものなのだろう。けど俺は反論した。「けど、もし扉の先で死んでいたら?」
 さすがにそれは予想していなかったようで、ニックは何か言おうと口をぱくぱくしてみせたものの、どう反論していいのかわからなかったのか黙って口を閉じてしまった。……気を悪くしてないといいが。
「あ、いや……話の腰を折るつもりはないんだ。ただ……ニック、あんたを見てると──」
「……大丈夫だ、ジュリアン。必ず奴は生きている。俺はそう信じているし、200年も経った後に全く見たことのない奴の手によって復讐される瞬間の、彼の顔を見たくてしょうがないくらいなんだ。想像するだけで笑いがこみ上げてくる位だよ。
 どうだ、手伝って……くれるか?」
 そう言われるのはわかっていた。だって俺とニックはパートナーだから。これまでいくつか探偵家業もやってきたし、色々探偵についてのノウハウも教えてもらった間柄だ。
 彼の表情はいつもと変わらなかったが、言葉の重みがいつもと違っていた。人造人間でもヒトを説得する事が出来るのか──そんな茶化しさえ今は陳腐に見える。いつも以上に真剣なのはわかっていたからこそだった。だからこそ俺を必要としてくれるニックの力になりたい。……と、最初は思っていた。

 けれど……ニックを見ていると不安をがよぎるようになったのはいつからだっただろう。
 連邦中の警察署をめぐり、ホロテープを見つけては黙って聞き入るニックの姿を見ているのが楽しかった。当初は。
 ……しかし、いつしかそんなニックの姿を見ていて、俺は不安を覚えるようになった。
 どうして? 何度も自答した事さえ、ある。力になりたいと思って乗り出した事なのに、俺はどうしてこうも不安げにニックを見ることしか出来なくなったのだろう。どうしてニックを直視できなくなっていったのだろう。
 そうだった、いつしか──後ろを歩くニックに対して振り向くことをしなくなった自分が居た。前は話しかけたり話しかけてくれたりしたのに、ニックからも声を掛けてもらっていない。腹の虫の居所が悪いのだろう程度にしか思われていないのか。
 でも、ひとつだけ。原因がはっきりしていることがあった。ホロテープを全部集めることを俺はひどく畏れていたのだ。そしてニックには急かされてこそないものの、彼と行動を共にしていて何もしない訳にはいかず、更に苛立ちを増長させる原因にもなって──最後のひとつを探しにとある警察署──の廃墟を訪れたとき、俺はたまらず切り出していた。
「なぁ……ニック」
「ん? どうしたジュリアン」
 声をかけたものの、どう伝えればいいか分からず、しばしその場に立ち尽くしてしまう。ニックとしてはホロテープを一刻も早く見つけたいだろうに、俺が水を差してると苛立っていたかもしれない。
「……エディーに復讐したら、どうするんだ?」
 何言ってるんだ俺? と自分で思うほど心と裏腹の言葉を発している自分に驚く。何を言おうか考えあぐねた先がこれだなんて。
「ん? 別にどうともせんがな。……とはいえ、記憶に生きているニックに対しては手向けになるだろう。そう思ってやってるだけさ」
 そんなこちらの気持ちに反してニックはのんびりとそう漏らした。本当にそれだけなのか、と聞き返したくなる。──馬鹿だ。ずっと共に行動してきたニックに疑いを向けるなんて。
 ニックは、かつてニックだった者の記憶に突き動かされているだけに過ぎないと思っていた。それに付き合ってあげれば満足すると思っていた。──でも……もしそれを達成してしまったら? 記憶の中のニックは満足するだろう。しかし今彼を形成づけている人造人間のニック・バレンタインはどうなってしまう?
 そんなのやってみなければ分からない──その時になるまで考えないようにしていた事だった。それなのに目の前の人造人間がそれによって何か起きてしまうのではないか、と──思うだけで身が竦む。210年ぶりに目覚めたおかげで誰も知らず、身寄りも居ない自分自身が広大な連邦の中で取り残されてしまいそうな、そんな恐怖に背筋が凍るような感覚さえ覚える。
 ……けどここで手を切る訳にはいかないだろう? ジュリアン。俺はニックと旅をしてきた。どうなろうと、俺が見届けるんだ。人造人間ではなく、血の通っていた身体を持っていたニックの復習を遂げるまで。
「──そう、だよな。変な事聞いちまって悪かったよ。さあ、テープを探そうぜ」
 気を取り直そうと努めて明るく声をかけたものの、内心は不安の塊を拭い去る事すら出来なかったのをよく覚えている……

 そして、ニックはやり遂げた。
 エディーを見つけ、ホロテープに隠された鍵を見つけ出し、エディー自身を隠す厳重な扉のロックを解除し──彼に引導を渡すことが出来た。
 ニックがエディーに対して冷静に、淡々と喋っているときも、エディー・ウィンターが激昂してニックと銃撃戦をやりあった時さえも、俺は何も手を出さなかった──出せなかった、と言った方が正しいかもしれない。
 これはニックと、人造人間ニック・バレンタインの戦いなのだから。俺が手を下すのは無粋というものだ。
 ぎゅん、と空気がうなりを上げながら狭い室内に銃声が飛び交う。俺が何をしなくてもニックのやり方は冷静そのものだった。確実にエディーに致命傷を与えていく。その光景を、俺は画面の向こうで見ているような気分さえ、した。結末が分かっている二時間ドラマを延々と見ているような感じといえば分かるかもしれない。
そしてとうとう、ニックが正確に狙いすました一発がエディーの脳天を貫いた。──直後、ぐにゃりと曲がるようにして頭から床に突っ込むようにして倒れ付すエディー。頭を床にたたきつける前に絶命したようだった。
「……終わったな」
 エディーの亡骸を見下ろしながらぽつりとそう呟く。しかしニックの言葉は俺の意図と反し、
「いや、まだだ。──最後にやり残したことがあるんだ。ついてこなくてもいいぞ」
 などとにべもない返答をしてくるので、若干、狼狽してしまう。何でそんな事言うのだ、と。
「ここまで来たんだ、最後まで付き合うに決まっているだろう。……行こうぜ」
 促すように、こちらから先に部屋を出る。そう言われた事に安心したのか、ニックの表情は嬉しそうだった……気がする。

 来た道を戻らず、ニックは何かに導かれるかのように前を歩き続け、地下を歩き続けるうちに、目の前に現れた扉を開くと、全く知らない場所に出た。出てきた場所は店舗のようで、壊れたレジズターが台の上に数台、陳列されてある。通り過ぎしな、中身を改めてみるが何も入ってはいなかった。既に誰かに荒らされた後らしい。
 ニックの足は止まらず、やがて建物を出ると唐突に走り出した。慌ててこちらも走り出す。……が、すぐに彼の足は止まった。海へ通じる大きな川のほとり、昔は舗装されていただろう道路の端。しかし今ではアスファルトは所々剥がれ落ち、道路の隅にはガラクタや残骸が散らばっていた。
「……ここだ」
 え? ここって? 俺が声を出す前にニックは地面に膝を落とし、むき出しになった地面に手を当てていた。
「ここなんだよ、210年前、ここでニック・バレンタインのフィアンセだったジェニファー・ランズがエディーの手下に撃たれたんだ。背中に銃弾を叩き込まれたのさ」
 えっ、と短く声が漏れる。ニックはそんな俺の様子に気づかなかった。黙ってその場に跪き、俺の目には映らない何かを見ているようだった。
 生前のニックは、その光景を目撃していたのだろうか? だとしたらショックどころの話ではない。それが彼を復讐に駆り立てたとしてもおかしくはないだろう。けど……その復讐は終わった。もう過去に目を向ける必要はない筈だった。
「……それは、辛かっただろうに」
 考えて捻り出した言葉がこんな陳腐なものなのかと、自分に呆れてしまう。しかしニックは気にしてなさそうだった。黙って立ち上がると、俺の目をじっと覗き込んできた。黄色く輝く二つの環。この目に俺の姿はどう映っているのか。
「はっきりしてるのは、ジュリアン、あんたが居なかったらエディーはまだ生きてあの場所に居たに違いないということだ。あんたが俺と、俺の記憶の中のニックに手を貸してくれたおかげで長年の悲願が達成できたというもんだ」
 普通の人間なら照れくさそうに言う事も、ニックは平気で言ってのけるのだな、と俺は思わず笑みを浮かべる。久しぶりに笑った気がした。「力になれて嬉しいよ。ニックにとっては大事なことだったんだから」
 そうだな、と言いながらニックは目を逸らし、背後に流れる大きな川へ顔を向けた。
「昔生きていた警官時代の記憶を機械的にコピーしたものだったとしても、この記憶を拭い去る事はインスティチュートとて無理だったんだろう。それほどまでに激しい記憶だったんだ。どのようにこのニックの記憶を保持していたかは今の俺には分からない事ではあるがな」
 インスティチュートか。俺の息子を奪った組織。彼らの事はまだ分からない事だらけだな──と思っていると、「しかし……なんだな」とニックがやや困ったような表情でぽつりと漏らす。
「どうかしたのか、ニック?」
 と言うと、なぜか彼は俺をにらむ様な目つきで、
「……笑うなよ、ジュリアン。
 正直なところ、こういう時どういう顔をしたらいいか分からないんだ。無理だと思ってきたことを達成する事ができて、嬉しい筈なのに……どうすればいいのか分からない。途方にくれるとはこういう事なんだろうな」
 と言ったので、俺は思わず噴出してしまう。
「はは、ニックでも分からない事があったんだな……ははっ、こりゃ、最高だ。今までずっと、一人で悩んでたのが馬鹿みたいだ……ははは」
 急に笑い出した俺を余所に、ニックは憮然とした表情を浮かべていた。何で突然笑い出したんだこいつは、みたいな嫌なものを見るような目つきで。
「ジュリアン、何がおかしい?」
 と、いかにも真面目くさってニックが言うものだから、俺は再度笑いだしそうになるのをぐっと堪える。
「だ、だって……復讐はやり遂げただろう? もうニックは自由なのさ。もう一人のニック──生前のニックじゃない。今のニックはあんただけさ。人造人間のニック・バレンタインだけさ」
 と伝えるも、
「そう簡単にはいく問題じゃない。俺はずっと“警察官の記憶を持ったニック・バレンタイン”そのものだった。彼の記憶、感情、性格。何もかもすべて俺は彼をコピーした存在だ。最初はそれを疎んじた事もあった。何処を探してもその記憶の中のものとこの世界は違うからさ。町も、人も、何もかも。
 やがて俺はこの記憶を──この記憶に強く残されている復讐の炎を消し去ることができれば、“警察官の記憶を持ったニック”と袂を分かつことが出来るかもしれないと思うようになった。それはどだい無理な事で、俺一人で出来る事ではないと分かっていたからこそ、この記憶と付き合っていく事、復讐の炎を絶やさずに居る事が一番なんだと自分を納得させていた。
 しかしジュリアンが現れて、そしてどうだ、俺の復讐の炎に燃料を投下する必要はなくなっちまったじゃないか。やっとニック自身のの悲願を達成できたのに、俺はこれからどうしたらいいのか分からない……なんて」
 笑われた事が余程気に入らなかったのか、はたまたこれからどうしたらいいのか分からない、といった様子のニックを見て、俺はふっと、今まで抱えていた不安の芽が出てくる気がした。が……すぐにその考えを振り払い、俺はニックに向かって手を差し出していた。途方に暮れている彼を導き手になるように……などと大層な事は思ってなかったけど。
 そして、こちらの意図に気づかず、俺の手と顔へ交互に視線を動かすニックに向かって諭すようにゆっくりと声を出した。
「これからは自分の人生を歩むんだ、“警察官のニック・バレンタイン”ではなく、人造人間として歩んできたニック自身の。記憶を埋め込まれ、それだけで生きてきたニックは今日から終わりだ。これからは自分の記憶を作っていくんだ。自分自身の思い出を。感情を。上書きしていくのさ。警官ではない、コピーされた存在ではない、一人の……人間として」
 人造人間、とは言えなかった。俺はニックをインスティチュートの奴等と同じには見えなかったし、同等の扱いにしたいとも思ったことはない。ニックは人間以上に人間らしく、驚かされたことも何度もあった。その度に俺は彼を、人造人間として扱う事を忘れ、人造人間として扱う奴等を敵視した事も一度や二度ではない。
 そう言ったものの──しかし……ニックは俺の手を握り返してはこなかった。彼の表情は躊躇いと戸惑いが交互に浮かんでいる。簡単な事じゃないとさっき言ってたが……。
「自分自身の……か」
 と、短く呟くニック。視線を地面に落としているせいで、気落ちしているようにも見える。しかし口調は違った。
「──今この瞬間にやっと気づいたよ。本当は、俺はエディーの復讐なんてどうでもよかったんだ。婚約者の仇を討つことも、ジュリアンとも、俺とも。何も関係がなかった。
 自分勝手にそう思い込んでいたんだ。エディーを復讐すれば俺は自由になれると。……でもそうじゃなかった。復讐をしようが何しようが、俺は俺自身だ。ジュリアンが今さっき言ったとおり、今までだって俺自身の人生を生きてきた。だから今更復讐を遂げたところで何も変わらないんだ。
 そんなことに今の今になって気づくとは、そして気づかせてくれたのがジュリアンだったとは、……少し笑っていいか?」
「え? ……あ、ああ」
 唐突に笑っていいかと聞かれても首肯を返すことしか出来なかったのだが、ニックは促されると唐突に笑い出した。その姿に思わずこちらまで笑ってしまう。互いにしばし、誰も通らない道端で笑いあった。
「ははっ……ニック、あんた、気づくの……遅すぎだって」
「うるさい、ジュリアン。人間とはこうやって遠回りをして生きていくものだろう? 俺はそういう本をごまんと読んだぞ……しかしまぁ、人造人間も人間となんら変わらないものなんだな、俺もあんたらと何ら変わらないんだな……ふふ、おかしなもんだ」
 互いに溜まっていたもの、何もかもを吹き飛ばすかのように腹を抱えて笑った。俺なんて笑いすぎて涙が出ていたかもしれない。ひとしきり笑ってから、俺は再度手を彼に向かって差し出す。
「──さあ! 行こうぜニック。この世界を良くして行くためにも、俺たちこんな所で立ち止まったままじゃないだろう?」
 ニックはうなずきながら、今度は俺の手をぎゅっと握り返してくれた。嬉しかった。
「これからも俺と旅を続けてくれるのか?」
 などと水臭い事まで言ってくる。当たり前じゃないか。俺はニックと旅がしたいんだ。あんたとずっと一緒にいたいんだ。
 けど、──どうにもそんな事恥ずかしくて言えなかったので「当たり前だろ」とだけ言い捨てて、俺から手を離す。ニックの手は温かかった。人間と変わらないくらいに。
「よし、じゃあここから出て新しい旅へと出発しようじゃないか、ジュリアン」
 嬉しそうに彼はそう言って、俺の隣を歩き出す。
 日差しがじんわり暖かい連邦の昼下がりはいつもと変わらず、連邦を照らしていた。
 過去と決別し新しい一歩を踏み出したニック・バレンタインの門出を祝うかのように──
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 エディーのクエが終わった後、ニックさんが「死んでも悔いはない」とかいったのでそれに対してえええええ?! と思って考えたネタでした。まぁ最後は若干変わってしまいましたが、うちの111さんはニック大好きニック一筋なのでw

 しかし最近本気でまずいですねぇー・・ニックさんの話ばっかり書いてる(笑)
 夏コミに出す本もそろそろ書いていきたいんですが、3月いっぱいまではお仕事が多忙すぎる為、繁忙期がすぎたらぼちぼち書いていきますw

 Skyrimは最近ほとんど遊んでませんがそろそろセラーナたんに会いに行きたいですw
 ではまた。次回の更新もFO4がらみになりそうでごめんちゃい。

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