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SkyrimとFallout4・76の二次創作メインブログです。 たまにMODの紹介も。
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04.20.03:46

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  • 04/20/03:46

02.20.22:37

I...

※スカイリム二次創作小説第三チャプターですが、実を言うと二次創作カテゴリの話からほぼ全て繋がる感じで続いています。苦手な方はブラウザバックでお戻りを。
※もし最初から読みたい方は二次創作カテゴリからどうぞ。一連の流れがつかめるはずです。たぶん。
※これは第三話です。最初から読みたい方は前々回の記事「Rude Awakening」からお読みください。(今回、そして次回は相当長いと思います。途中休みながら読んでみて下さいませ)


  ソリチュードから更に北西──
 俗に亡霊の海と呼ばれている、ウインターホールドからソリチュード地方まで広がる広大なその海は、常に冷たい海水が海岸を打ちつけていた。海岸をなぞるように歩けば流氷を見ることは当たり前、天気がいい時には沖の方に氷山が連なった姿を拝むことができる。大抵は吹雪いているか雪がちらついているため、亡霊の仕業だと言う者もちらほら居たりするが、スカイリム地方はタムリエル大陸の北端に位置するのだから、雪が降っているのは当たり前といえば当たり前である。
 王都ソリチュードを出て北側に街道を歩いていけばすぐにその冷たい海を見下ろす事ができるが、常日頃寒さに覆われたスカイリムでわざわざ亡霊の海に行く者など居ないに等しく、点在する砦や灯台に勤める者以外は滅多に人の歩く姿を見ることは無い。そのため、ノースウォッチ砦の北側の海辺に、やや朽ちた小さな桟橋がある事を知る者なぞ、一部の漁師か渡し守位しか居なかった。
 その桟橋はアイスウォーター桟橋──名前からして寒々しい印象を受ける──と呼ばれ、その桟橋から行き着く場所は沖の先にある吸血鬼一族が住む根城──と、知る者の間ではまことしやかに囁かれていた。その為、桟橋に行ってくれと渡し守に頼んでも、彼らは頑なに拒むか、別の船を捜してくれという始末。せいぜい一部の渡し守が「桟橋までは行くが、その先は行かない」という条件付きで乗せてくれる有様だった。
 しかし彼らの言う事は間違っていなかった。現在は住む者が一人しか居ない──という点を除いては。

「よっ……と」
 おおよそ船とは呼びにくい、小船からひらりと桟橋に身を躍りだすと、船に予め括っておいたロープを桟橋の端に置かれてある係留柱に通し、ぎゅっと結んで固定させる。
 その様子を黙って見ていたセラーナが静かに船から桟橋に移動すると、ふわりと風が彼女の髪をなびかせた。互いにずっと黙ったまま移動してきたので、今更何かを口に出すこともない。
 久しぶりのヴォルキハル城だった。二年近く訪れていなかっただろうか。辺りは前とほとんど変わっていない。あちらこちらに手入れをしていないためか、橋に点在して置かれてあるガーゴイルの石像などが雪がしっかり積もっている程度の事が、時間の経過を物語っていた。
 ヴァレリカの書斎は城の裏手からぐるりと回っていかないと辿り着けない為まだ少し時間がかかるな。心の中でごちてから俺は船に置きっぱなしの荷袋を担いだ。
「……もう少しでヴァレリカに会えるぜ、セラーナ」
 そう言ってみたものの、セラーナは無反応だった。顔を逸らして今しがた渡ってきた亡霊の海をじっと見つめている。その表情はどこか沈痛さを滲ませており、気落ちしているというより全てがつまらなさそうな、そんな印象だった。
 もう少しでこの顔も見れなくなるのかな、などと不安が頭をよぎる。振り払うように僅かに頭を振ってから、俺は黙って歩き出した。進み始めたと知ったセラーナが黙って後をついてくる。
 俺は──俺じゃ、できない事を、セラーナは母親に頼るのだろう。
 それが何なのかはわからない。けど……どんな結果であれ、俺は自分の気持ちを諦めないさ、……彼女の口からその答えが出てくる迄はな。

「誰かと思ったら、珍しいお客人だわね。セラーナにジュリアン。ずいぶん久しぶりじゃない? 元気にしている様子だわね」
 書斎の扉をノックし、開いて見せた書斎の主──セラーナの唯一の肉親である母親、吸血鬼ヴァレリカは俺達二人の顔を交互に見ながら嬉しそうな声を上げてみせた。突然の来訪に対して驚いている様子ではあったが、驚きよりも訪れてくれた事への嬉しさの方が勝っていたようだった。
「ああ、元気そうで何よりだよ、ヴァレリカも」
 そう言いながら室内に入り、外から雪が入らないようにとすぐに扉を閉めた。
 セラーナは、というと落ち着かない様子で俺の傍らに突っ立ったままだ。ヴァレリカもそんな彼女の態度におや、と思った様子ではあったが、何も言わずに室内に通してくれる。
 室内はずいぶん様変わりしていた。真ん中にあったソウル・ケルンへの“扉”は閉じられており、その入り口であった床にはテーブルと椅子が数脚置かれてあった。脇には小さな火鉢と、その上には調理鍋が置かれてあるのが見える。
 以前は書斎というだけあって、本棚と錬金台や符呪器、調合する素材などしかなく殺風景で生活感の感じられない部屋だと思っていたが、しばらくぶりに来てみるとその変貌に少なからず驚いた。吸血鬼にとっては二年程度など長くも感じられないだろうが、これだけ変わっているとやはり時間の流れを嫌でも感じるようになる。
「……で、ヴァレリカ。今回ここに用があるのはセラーナの方なんだ。セラーナが城に帰りたいって言ってきたんで、こうして久しぶりにあんたの顔を拝めた訳さ」
 内心と裏腹にわざと軽快な口調で言って見せると、ヴァレリカの柳眉がわずかに持ち上がった。意外だったのだろう……無理も無い、セラーナは自分を遺跡に閉じ込めて自身はソウル・ケルンに逃げ込んだ、無責任な母親の事を今だ許しているとは思っていなかっただろうから。
「……そうなの? セラーナ?」
 セラーナは僅かに逡巡していた様子ではあったが、黙って頷いてみせた。──そうさ、俺は彼女の望みを叶えてやっただけ──だから。
「そういう事だから、セラーナはあんたに話があるみたいなんだ。セラーナ、親子水入らずで過ごしたいだろう? 俺は隣の空き部屋にいるから、二人で話し合ってくれよな」
 えっ、とセラーナが何か言いたそうな顔を俺に向けた。久しぶりに真正面からみた彼女の顔だった。
「どういうことなの? ジュリアン」
 ヴァレリカが説明をしろ、とばかりに言ってきたがそれ以上何も言う事はないため、セラーナが説明するから、とだけ言い残して俺は先程、室外の通路から入ってきたのとは逆の中庭へ通じる通路に繋がる扉の方へ近づき、黙って開けて書斎から立ち去った。
 室内、といってもここはヴァレリカの書斎に通じる城内の通路の一端であり、この先は中庭を経由して城の正面に戻れる道へと繋がっているだけのやや開けた廊下の一角だ。
 明かりも灯されていないため、薄暗くひんやりする室内をぐるりと見渡し、俺は一つため息をついた──ここ数日間、息を着く余裕もない程張り詰めた重苦しい空気から逃れた、安堵と落胆の混じったため息を。

「どういう風の吹き回しかしら、セラーナ。あなたから会いたいなんて言ったなんて、本当?」
 黙って立ち去ったジュリアンの後をしばし見ていたヴァレリカが、所在なさげに突っ立ったままのセラーナに対してぽつりと言う。──返事は返ってこない。
 ふぅ、とため息をこぼしてヴァレリカは火鉢の上で沸かしていたお湯を茶葉の入ったポットに入れ、端に置かれてあったカップに黙って二人分注ぎ、黙ったまま長テーブルの向かいに置くと、これまた黙ってセラーナが向かいの椅子に座った。
 ヴァレリカは久しぶりに訪れた自分の娘をじっと見た。うつむき加減で目を合わせようとしない彼女の態度に業を煮やす様子もなく、じっと見つめながら彼女の態度の裏に何が潜んでいるかを探っているようで、
「……ジュリアンの事でしょう? 今まで何度か一緒に訪れたことはあったけど、あんな風に気遣って辞すなんて見たことなかったわよね」
 神経質そうにセラーナの肩がぴくりと震えた。しかし相変わらず顔を上げてくれない……が、
「………分からなくなったんですの」
「分からないって? ジュリアンの事?」
 お茶が入ったカップを凝視したまま、セラーナは僅かに首肯してみせた。そのまままた黙ってしまうのかと思ったが、
「………言われたんですの」
 ぽつりぽつり言ってくるだけじゃ埒が明かない、と踏んだヴァレリカは少し声を高くして「人と話すときは顔を見て話しなさいって言わなかったかしら? もしかしてジュリアンともずっとそうしてきたとか言うんじゃないわよね?」
 再びぴくりと肩を震わせ、今度こそセラーナは黙ったまま顔を上げてみせた。やや頬は紅潮しており、目は潤んでいる。そんな表情を今まで一度も見たことが無かったヴァレリカは心の中で驚いた。これはまさか……
「……ジュリアンに、言われたんですの。好きだ、結婚してほしい、と……で、でも、私、どうしたら……」
 その事をを思い出したのか、さらに頬を赤く染めてセラーナは口をつぐんだ。ヴァレリカが何か言ってくるだろうと踏んでの事だったみたいだが、母親は敢えて何も言わず、黙ったまま話の続きを促していたため、仕方なく彼女は再び口を開いた。
「分からないんですの。……言われるまではいつもと同じで、いつもと同じように……彼と、旅を続けていて。それが当たり前だった。楽しかったし、……ジュリアンは優しかったですわ。私を大切にしてくれているのは分かっていましたし、私に忠誠も誓って下さったんですのよ。
 ──それなのに、ジュリアンが私を好きでいたなんて。結婚してくれなんて言うなんて。……今まで普通に接してきたのが、全てそれによって、おかしくなって。……ここ一週間足らず、私、ジュリアンにどういう顔で見たらいいのか分からなくなって……」
「分からなくなったってのは、どういうことなの?」
 途切れ途切れに告白するセラーナの言葉に、間髪いれずにヴァレリカが聞き返してくる。セラーナは言葉に詰まった様子ではあったが、
「どう彼と接したらいいのか分からなくなったんですの。だから──いつも目を逸らして表情も見られないようにうつむいたりしてましたわ。その日から一緒に行動することも出来なくなって、……でもそれが、彼を傷つけていることは分かっていた。けれど……」
 やはりそうか。ヴァレリカは心の中で納得した。
 よそよそしいジュリアンの態度。セラーナが話すから、と言って隣部屋へ立ち去ったのはセラーナの態度を見ていられないからだろう。声は明るかったが、相当無理をしていたのかもしれない。……しかしそれ以上に自分の娘が、初めて一人の男に求愛された事でこれほど狼狽するとは思っていなかった。
 けれど、とヴァレリカは思う。
 ──それは恐らく、自分達にも責任があるのだ。
 どう続ければいいのか困惑しているセラーナに、ヴァレリカは努めて穏やかに聞いて見た。
「そんなことがあったの。……それで? セラーナはどうしたいの?」
 え、とセラーナが再び顔を上げる。予想外の質問だったらしい。
「まさかそんな事も分からない、なんて言わないでよね、セラーナ。あなたがこの問題に対してどうしたいのか、それを考えなくちゃ始まらないでしょう?」
「だから……だから、どうしたらいいのか、それを聞きに私ははるばるソルスセイムからここまで戻ってきたのですわ。最初から分かればこんな苦労は──」
 ヴァレリカは耳を疑った。「セラーナ。まさか……本気で言ってるの? 自分がどうしてそういう態度を取ったりするのか、疑問に思わないの?」
 分かれば苦労はしない、と半ば愚痴っぽく言い放つセラーナ。──知らないのだ。その感情が何からくるものなのか。その気持ちが何によってもたらされているものなのか。
 セラーナは知らないのは無理もなかった。それは今まで──長い時の中で一度たりとも両親から与えてもらっていないモノなのだから。
 しかし今、セラーナはこの先大きく成長を遂げるかもしれない分岐点に立たされているのは間違いない。彼女がこの先、成長するか元通りになってしまうかのは、今この時を置いて他にはないのだ。
 そしてそれは、己自身で気づかなければ意味がない事。他人がどうこうできる問題ではない。──しかし、気付かせる事は出来る筈だ──不甲斐ない親でも、最低限の手助けはしなくては。それが親の務めなら。
「セラーナ、じゃあ聞くけど、あなたはジュリアンのことが好きなの?」
 娘の目をじっと見つめてヴァレリカが言うと、セラーナの顔が再び赤く染まった。胸に手をぎゅっとあてて感情を抑えているようにも見える。
「……好きって感情が私には……分かりませんわ。けど、……けど、居ないと不安にはなりますの。姿が見えないと……胸がざわつきますわ。けどこれが好きだという感情ではないんじゃ……?」
 セラーナの言葉が途中で途切れたのは、ヴァレリカがふふっと笑っていたからだった。人が真剣に話しているのになぜ笑うのか、とセラーナは憮然とした表情を浮かべる。
「ああ、ごめんなさいセラーナ。……でもね、そこまで言っているのに好きって感情が分からない、なんて真顔であなたが言うもんだからおかしくて。
 それってもう、ジュリアンが好きだって言ってるようなものよ。姿が見えないと不安になるなんて。片時も私の傍を離れなかった時と同じじゃないの」
「そ、それは……ジュリアンと肉親を一緒にしてはいけませんわ。彼は私の親ではありませんもの」
 我が意を得たりとばかりに言ってのけるセラーナだったが、答えはそこにあるというのに彼女自身が気づいていないのがヴァレリカにはおかしくてしょうがなかった。
「だから、それが他人を好きになるって事なのよ、セラーナ。肉親ではなく別の誰かを特別に意識するようになった時点で、その人のことが好きになってしまったって事よ」
 断言するように言うと、セラーナは奇妙なことに愕然とした表情を浮かべていた。にわかにカップを持つ手が震えている。
「……そんな。そんな訳ありませんわ。だって……好きなら、ジュリアンが好きなら、自分が分からなくなる意味が分かりませんわ。彼に対して冷たい態度を取ったりする理由もつきませんもの」
「そうね。……でも、それがもし、自己防衛反応として出てたら、どうする? 
 セラーナ、あなたは父親からの愛情はほとんど与えてもらえなかったわよね。……まぁ、私も母親としては失格な点も多くあるから、夫のことばかりを悪し様にはいえないけど。
 だから本来、父親を見て知るべきである男性性というのがどういうものなのか分からないまま成長してしまったせいで、あなたが異性に対して心に壁を作っていたのは気づいていた。ジュリアンも例外なくね。……けど彼は違ったわ。
 さっき言ってたわよね。彼と一緒に旅をするのは楽しいと。あなたの彼の間に立ち塞がっていた壁は時間とともに薄くなっていったんだろうけど、ジュリアンがあなたに告白した事で再び壁を分厚くさせたんじゃないかしら。……自分を守るために」
「自分を守るため? ……意味が分かりませんわ」
 と言いながらもセラーナの表情はどこか後ろめたさを感じるのは気のせいでは無い筈だった。ヴァレリカは畳み掛けるように言う。
「いいえ間違いないわ。自分を守るためよ。それとも言い方を変えた方がいいかしら──父親の影に、って」
 ぎくりとした様子でセラーナの表情が硬直する。
「自分では気付いてない様子だったけど、間違いないわね。セラーナ……私たちがもっと仲がよい夫婦だったらよかったんだろうけど、見ての通り冷え切った関係だったし、ハルコンは私やあなたを利用して太陽の専制を終わらせようなどという無謀な計画にとり憑かれたせいもあって、私はあなたをディムホロウ墓地に眠らせ、自分はソウル・ケルンに逃げ込むしか術はなかった。
 あなたは私にべったりだったわよね。一緒に過ごしていた時からずっと。でもそれは私が好きだからではなく、父親があんなだったから。そんな危うい親子関係だったのに、セラーナは私やハルコンに望まれて──」
「やめて下さる! その事を言うのは……今は関係ないじゃありませんの」
 叩きつけるように手にしたカップをテーブルに置いたため、中にあった茶が噴出し彼女の手と袖を汚したが、セラーナはそんな事意に介さない様子だった。ただ目はぎらぎらと赤く燃え、表情は今にも泣き出しそうだった。
「いいえ、あるわ。さっき言ったわよね、あなたは自分とジュリアンの壁を再び分厚くさせてしまった、と。それは何故かわかる? 
 セラーナ、あなたはジュリアンにハルコンの影を重ねているの。今まで築いてきた関係を拗らせてでも、あなたは自分に壁を作ってまで自分を守ろうとしている。だから私の元へ来たのでしょう? 本来ならば嫌われて良い筈の私の元へ来たのは、それしかあなたが頼る相手はいないから。一緒に過ごしていた時から片時も離れなかった……一番の理解者だった私の元へ。
 本当は彼が好きでしょうがないのに、自分の中の異性の対象は父親だけしか見ていなかったから。だから分からなくなったのね。分からないまま出た結論は、ジュリアンがハルコンと同じだったらという猜疑心。それが再び壁を作った原因なのよ。セラーナ」
 聞きたくないといった様子でセラーナは頭をぶんぶんと横に振った。振りながら涙を零していた。必死になって何かと抗おうとした様子で。
「……申し訳ないと思っているわ。あなたをコールドハーバーの娘に仕立てたのは私とハルコンだったから。けどそれがまさか、太陽を覆い隠すなんて無茶な計画から出た事だなんて知らなくて。知っていたら娘だけはやめてくれとハルコンに懇願も出来たでしょうに。
 でも忘れないで。ジュリアンだってそれは知っているのよ? 彼はそれでもあなたを守ると私に誓ったわ。──セラーナにだってでしょう? さっき言ってたわよね、“ジュリアンは私に忠誠を誓ってくれた”って。
 彼はハルコンじゃない。セラーナ。受け入れたい気持ちを素直に受け入れて。あなたにとって彼は必要な存在にもう成っているの。それを忘れないで」
 自分の娘は顔を真っ赤にして涙を零し続けていた。心が痛むのか、はたまた自己防護を図ろうとしたいのか、胸に両手をクロスして必死に耐えながら、ぽつりぽつりと心の内を吐露していく。
「……好きという気持ちは、こんなにも苦しいものなんですの? すごく胸が痛むし……とても息苦しいですわ。
 私は……どうすればいいんですの? これが彼を好きだという気持ちだとしても、私はどう彼に応えていいのか分からない。……初めて墓地で彼に目覚めさせてもらった時のように、まるっきり知らない赤の他人のようにここ数日、彼と接してきましたわ。本当は……それはいけないことだと分かっていた。気付かれないようにジュリアンの横顔をそっと見ては、答えを言わなければと思っていたのに、考えれば考えるほどどう接したらいいのか分からなくなって……ジュリアンが日に日に苦しむような表情を浮かべているのが辛かった。でもそうするしか手段が無かった。
 私は怖い。怖いんですの……お母さん。──あなたやハルコンが私にしてきたように、彼にまでも裏切られたらどうしようと。彼がハルコンのように狂気に憑かれて私に何かしてくるのではないかと。
 ……どうして私が好きだなんて言ってきたんですの、って聞きたかった。そんな事を言われたら今まで築いてきた関係が台無しになってしまうのは分かっていても、私には今までの関係のがよかった。彼が忠誠を誓って守ってくれていた時の方がよかった。
 けど──どうして? それなら離れて一人でここまで帰ってくればよかったのに、私はジュリアンから離れられない。傍にいないとこんなに不安になるなんて思ってなかった。これが好きだという気持ちなら──私はどうすればいいんですの?」
 どうすればいい、とセラーナは何度も言いながら涙を流し続けている。しかしヴァレリカはにっこり笑ってからすっ、と立ち上がり、テーブルを回ってセラーナの傍までやってくると彼女の肩をぎゅっと抱きしめた。
「大丈夫よ。何度も言うように、彼はハルコンではないの。彼はあなたを裏切らないし、ハルコンと同じようにもならない。それは今までずっと一緒に行動してきたセラーナが一番よく分かってる事じゃない?
 私とハルコンはあなたに幾重にも罪を与えてきてしまったけど、生きていく上で最も大切なこと──愛を享受する事を教えてあげていなかった。吸血鬼に愛なんて要らないに等しい感情だから、と言ったらあなたに申し訳が立たないけど。何度も言ってるように、私とハルコンの間に愛は無かったし。
 ……セラーナ。彼はあなたを必要としている。そしてセラーナも……彼が居なくなれば不安なんでしょう? 受け入れるのよ、自分の素直な感情を。愛を知らないまま育ってきたあなたが今受けているその苦しみが、好きだという気持ちから出ているのは間違いないわ。
 彼は優しい人よ。あなたをずっと守ってきたし、私に立てた約束もずっと守ってくれている。ハルコンの手から、抱腹を仕掛けてきた穢れた血である吸血鬼の手からも。あなたがコールドハーバーの娘だろうが、吸血鬼だろうが関係ない。そんな壁をいくつも乗り越えてまでして得たいものだから、彼はあなたに言ったんじゃないかしら。──結婚してほしい、って。
 ……それに、こんな母親失格な母親でも、一つは聞いてみたいわ。
 娘の我侭ってものを、ね」
 にっこり笑って見せるヴァレリカに、セラーナは何故か更に涙を零した。赤い瞳から流れ落ちる涙はルビーのようにきらめいて、地面にぱたっ、と落ちてはいくつもの染みを作っている。
 ヴァレリカはそんなセラーナを──彼女の心の壁が涙によって融解していくのをじっと見ていたのだった。


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 長くてすいません。そして前回言った「次3,4チャプターは連続で」なんて言ってたのにもかかわらずこの続きはまだ書いてません(大爆死)
 相変わらず遅筆でごめんなさい・・そしてまぁ、次回はいよいよ大団円なるか? まぁなるんでしょうけど。
 こんなつまらん妄想だだ流しのブログをいつも読んでいただいて有難うございます<(_ _)>あと少しですが、まぁこれで終わりじゃないしこっからが始まりでもあるので、二次創作はまだまだ続けて行きますよ。
 これで二次創作オワリなのかと思われちゃまずいので言っときますがここはあくまでも通過点ですね。自分がスカイリムを楽しみ続ける限り、創作とかMODプレイを小説仕立てで書いたりはしていきますので、今後ともどうぞよろしくです。
 え? 終わらせるなんて思ってなかったって? ならよかった。

 やー、今回ほんと長いんですよ。この先もまた長いんですよ・・
 自分、頭に沸いたネタ(主にコミケ向けで出す同人誌のネタとか、当ブログで書く小説のプロットとか)は、とある手帳にびっしり頭の中のメモを文章化しておくんですけど、
 その手帳のページ数が10枚を軽く超えたので(おかげでペンで文字書きすぎて腕が痛くなった・・w)まぁ、長い訳ですな。
 小説は漫画原稿みたくネームを切ることはないため、プロットとして文章を書き残して後日それを見ながら文章化させていくのが俺のやり方です。

 セラーナもまた苦しんでいた、と前回言いましたけど、こういうことだったわけですな。
 最も俺のセラーナの場合であって、ほかの方の世界のセラーナはこんな事思ってないよ! っていうかもしれませんw だからあくまでアナザーストーリィのひとつなんですよねw二次創作小説と扉でことわってますし。

 で。
 次回第四チャプター「Knight」というタイトルだけw
 結婚フラグ無事立つか?!

 では申し訳ない。おそらく次の定期更新になっちゃいますが気長にお待ちください。
 仕上がって校正次第UPします^^

※おまけ※
今回使用したBGMのうちのひとつ。
気になる方は是非どうぞ。こういうのをシーン毎に変えて聞いてます。CWのおかげでいろんなシーン毎に音楽を取り込めるのが有難い。
タイトルはまんま今回のテーマに沿ってますが「あの日に帰れたら」ですw
http://amachamusic.chagasi.com/image_shimijimi2.htm

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