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SkyrimとFallout4・76の二次創作メインブログです。 たまにMODの紹介も。
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05.16.10:16

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  • 05/16/10:16

04.07.00:18

レスポンス(第二手)

『……正気か?』
 もう一人の自分が問いかける。
 俺がこれからやろうとしていることに対して、心の中の冷静な自分──理性、といったほうがいいか──がその行為は危険だと警鐘を鳴らしてきた。
 確かにその通り。よくよく考えてみたら無謀、というより無茶苦茶だと思う。
 傍から見たらそれは自殺行為、狂気の沙汰──そうみなされてもおかしくない行動だ。
 しかし、と俺は思う。
 自分がドラゴンボーンという運命を背負う立場になったのだからこそ、その力の使い道は俺自身で制御しなければならない。
 以前アーンゲールは言った。
『善にも悪にもなれる力なのだ』と。
 行動如何によっては、刃とも癒しにもなる諸刃の剣。それがドラゴンボーン。スゥームの力を会得できる者。
 なら、と俺は思う。
 俺にしか出来ない事なら、俺がやってやる、と。
 だから俺は問う。──ドラゴンとの共存を。

「正気か、と聞きたいが……どうやら正気のようだな。目はまっすぐこちらを向いておる」
 相変わらずじっとこちらの視線を見ていたアーンゲールは、ぽつりとそう漏らした。
 彼の目に俺がどう映っているかはわからないが、俺が突然言ったことに対して……失望したり、馬鹿にしたりといったような態度はなかった。いつもと変わらず、じっとこちらを見て静かに声を出してくる。
「……ああ、そうだ。今スカイリムに起こっている事をアーンゲールだって知ってるだろう? 帝国はアルドメリ自治領に下り、上級王トリグはストームクロークの主導者、ウルフリック・ストームクロークに殺された。
 スカイリムの各地で帝国とストームクロークは争っている。そんな時にドラゴンが復活してスカイリムを暴れまわってたら人々はどう思う?」
 俺の問いかけに──彼は応じず、ただじっとこちらを見たまま……まるで俺の心を見透かそうとするように。
 しばし黙ったままの後──彼は気だるそうに口を開いた。
「共存、か……」
 その言い方が驚いたようにも、呆れたようにも聞こえたのですかさず言い返す。
「腰抜けだと思うなら思え。ドラゴンと戦うのが嫌だと言ってるわけじゃない。自分の運命を受け入れたくないわけじゃない」
 分かってほしい、とは思っていない。ただ、倒す倒されるかの道だけじゃなく、共存共生の道があったっていいじゃないか。
 俺以外の他のドラゴンボーンが全て倒す道を辿ったとしても、俺は彼らとは違う。ドラゴンボーンとして戦う運命だとしても、それに捻じ曲げられたくなかった──俺の意思だけは。
 そんな感情が表に出てしまっていたのか、アーンゲールはこくこくと首を小刻みに縦に振り、
「わかっておる。……しかし、それを望む者がいると思って言っているのか? 
 スカイリムの民はアルドゥインが何者かは分かっているだろう。八大神の長とも云われる存在、アカトシュの変形と云われる“世界を喰らう者”ということを。
 ……そのような神が、かつて支配していた人間の申し出を、すんなり受け入れてくれると思っているのか?」
 静かに、諭すように彼は一言一言ゆっくりと声に出した。
 ……かつて、この世界の人間はドラゴンに支配されていた。……しかし、それを哀れと思ったカイネ、そしてパーサーナックスが、人間に“声”を伝授した。
 それがノルドに伝わる声秘術、“スゥーム”。ドラゴンの言葉。
 声を得た人間は、長きにわたってドラゴンと戦い、消耗しつつも勝利を得ることができた。ドラゴンはいずこかへと消え去り、支配は無くなった。
 そして現在、彼らは徐々に復活している──アカトシュ、いやアルドゥインの力によって。再び世界を支配しようとする為。
 そして現れたのはドラゴンボーンたる力を持った自分。
 俺を止めようとするのか……最初は身構えたが、アーンゲールはそう言っているのではなかった。
『ジュリアン。私はお前を止めようとしているのではない。お前がそうしたいのならそうすればよい。しかし、我々とてドラゴンボーンとして生を受けたお前をみすみす死にに行くような行為を取らせたくはないのだ、それだけは分かって欲しい』
 じっとこちらを見る彼の視線がそう伝えてきているように……俺には思えた。
 彼らは必要なこと以外口には出さない。俺だってまだ知らない事が山ほどあるのにも関わらず、だ。
 時が来れば話す──そういう奴らなのだ。グレイビアードという者達は。
 俺はやや顔を傾けるように会釈をし、彼に背中を向けた。
「……ありがとう、アーンゲール。色々聞けて助かった。──俺のことは気にするな。確かドラゴンボーンの力はその力持つ者が死んだ時新たに別の誰かに継承されるんだろ? ならもしかしたら、次にここに来る奴は俺じゃない別の誰かかもしれないな。ははっ」
 薄ら笑いを浮かべ、俺はアーンゲールの姿を見ようとせずにハイ・フロスガーを出た。
 重い鉄製の扉を開けた途端、変わらず振り続ける雪が叩きつけるように風とともに襲ってくる。
 扉から山の斜面に通じる螺旋状の階段を降り、繋げておいた馬に跨って俺は再び七千階段に向かった。
 次に向かう場所は──リバーウッド。
 そこにもう一人、俺の協力者がいる──ブレイズという、かつては帝国の為に戦っていた私設軍隊だった、今は絶滅した軍隊の──メンバーの生き残りが。

「はぁ? あんた何言ってるの? ドラゴンと話をつけようですって? とんでもない!」
 開口一番でデルフィンは俺に向かって唾を飛ばすかのように言い捨ててきた。最も大きな声を上げてもここは宿屋の地下にある隠し部屋だから、声が外に漏れることはないだろうが。
 ここはリバーウッドにある宿屋兼酒場「スリーピングジャイアント」──の地下秘密部屋。
 リバーウッドはかつて自分が捕縛されヘルゲンで殺されそうになった時、アルドゥインが攻めてきて命からがら脱出し、初めて行き着いた村だ。
 最初は何処にでもある小さな村だと思っていた。が──
 そこの宿屋の女将──俺の目の前にいる女性だ──は、帝国の為に動いていたかつてのブレイズの生き残りだと知ったのはそれからしばらく経ってからの事。
 彼女は自分がとある依頼を遂行させる一歩手前で先手を打たれ、そしてこの宿屋で落ち合い、彼女の正体を知る事となった。すなわちそれは、俺が何者かも彼女に知られる事となったのだが……。
 その後彼女には色々とドラゴン復活の真意を探るべく動いてもらっている。彼女はドラゴンの復活場所を予め予測し、それは確実なものとなった。彼女ならアルドゥインが次に何処に現れるか分かっているに違いない、と思い、俺はハイ・フロスガーを出た後すぐにリバーウッドに向かい、俺の考えを伝えた……直後の一言がそれだった。
「とんでもない、とまで言う事でもないだろう。出来ないわけじゃない、とアーンゲールは言ってたぜ」
 ついこないだまでただの女将としての彼女しか見ていなかったせいで、俺の口調はグレイビアードのそれとは違い砕けた口調になっている。
 彼女はそれに反論しようと口をぱくぱくとしてみせたが──うまくまとまらなかったのか、あるいは考えをまとめようとしたのか、うろうろと部屋をうろつき始めた。
「……なぁ、デルフィン。あんたはドラゴンの墓の地図に印をつけてたよな。次はここが復活する、って」
 うろうろする彼女を目で追いながら俺は言葉を投げかける。彼女は全く応じようとせず、頭を人差し指でおさえながらうろうろするばかり。聞いているのか?
「なぁ──」
 埒が明かず、俺が再び声をかけようとした時。
「本気なの? アルドゥインと話をつけるなんて? 冗談よね?」
 やや落ち着きを取り戻したらしいが、彼女は勝手に冗談だと決め付けたようだった。
「冗談であんたを驚かす位なら、アルドゥインをたった今殺してきたとでも言うさ」
 肩をすくめて言い返してやる。
 彼女は嫌なものでも見るかのように眉間に皺を寄せた。「……あのねぇ、話し合いで事足りるなら最初から襲ったりしないんじゃない? 貴方本当にドラゴンボーンなの? まさかその力を持っているにも関わらず逃げ腰を取るつもり?」
 げんなりしてきた。今度は俺を疑ってきやがった。
「いい加減にしろよ! 俺は俺のやり方でやるだけだ。話が通じる相手かどうかはこの際置いておいて、できることなら俺は……、」
 共存を目指したい、とは言い憚られた。今の言い方から察すれば、彼女に理解してもらえる事は無理のようだ──
 しかし。
「出来ることなら? 何?」
 鸚鵡返しに彼女は問いかけてくる。どう答えたものか……と逡巡したが、結局俺の考えを打ち明けるしかなかった。
「………ドラゴンと共存が出来ないか話を持っていくつもりだ」
 直後、デルフィンの目は一瞬丸くなり、は? と言いたそうに口を半開きにし……
「……無理」
「無理かどうかは分からないだろ? そんなのやってみなくちゃ分からない。共存する事だって、可能性は0だと決して限らない筈だ」
 彼女の発言を言わせまいと、ほぼ同時に口を開いて俺は意見をぶつけた。
 言う前に言われて出鼻を挫かれたせいか、デルフィンは明らかに辟易した表情を浮かべ、
「……無理に決まってるでしょ。あなた、何考えてるの? 共存ですって? そんなことできる訳ないでしょ」
 頭が痛そうに片手で抱え込む仕草を見せた。
「何故無理だと決め付ける? 誰もやったことがない事を頭ごなしに無理だというほうがどうかしてる。無謀かもしれない。けどやってみる価値はあるんじゃないか?」
 相変わらず頭を抱え込むデルフィンに向かって俺は説得するように言った。
「教えてくれ。次にアルドゥインが出る場所を。次に奴が現れ、ドラゴンを復活させる場所を」
 辛そうに頭を振っていたデルフィンだったが……俺の意思が揺るがない事がわかったのか、はたまた言ってもどうしようもないと呆れたのか、頭に当てていた手をゆっくりとほどいて両腕を胸のあたりで組み、苦笑を浮かべてこちらを見据え、
「……どうしてもやりたいの? 自分がどうなったとしても?」
 最早説得できないと踏んだらしく、半ば諦めたような口調だった。
「──ああ」
 意思を変えない俺にやれやれといった様子で、デルフィンはおもむろに頷いた。
「分かったわ……」
 疲れたように言ってから、彼女は部屋の真ん中に置かれてあるテーブルの上に無造作に置かれてあった古びた紙切れを広げた。
「恐らく次は──ここの筈よ。マルカルスに向かう街道のはずれにドラゴンの墓があるわ。ここに奴は現れる」
 彼女はそう言って──紙切れに書かれてある黒い点の一つを指差した。

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03.29.20:12

ファースト・コンタクト

 ホワイトランから……いや、スカイリムの何処からでも拝めることのできる山がある。
 その山──世界のノドという俗称らしいが──の山頂からやや中腹に、ハイ・フロスガーという修道院があるというのは、スカイリムの民なら旧知の事だ。
 しかし、その修道院、もしくは寺院と呼ぶべきか──に行く者は数少ない。
 せいぜい物好きな巡礼者か、もしくはジェラール山の麓にある小さな村、イヴァルステッドに住む者が僅かな食料物資を修行者に向けて定期的に届ける程度。
 それには理由が二つあった。
 一つは、ハイ・フロスガーまでの道中、七千階段と呼ばれる山道があるのだが、その名のとおり心臓破りといってもいいくらいの長く険しい階段が続き、山頂が近づくにつれ吹雪にも見舞われるからだ。スカイリム随一の高い山だけあって、山頂付近が晴れる事は年に一、二度程度しかない。晴れた日を狙って向かうことはほぼ不可能と言っても過言ではないだろう。
 そしてもう一つは、修道院まで向かう道中、恐ろしいモンスターが襲い掛かってくる事も、巡礼者の減少を抑えられない原因の一つだった。
大体が狼、稀にフロスト・トロールが襲い掛かってくるという報告もある。巡礼者は身軽な軽装だから、襲い掛かられたらひとたまりもない。
そんな事が相次いで、今や巡礼者の宿場町といってもよかったイヴァルステッドはさびれ、時折旅人が宿を求めるしか、人の行き来は少なくなっていった。
 若者はそんな村を見限り、町へ出稼ぎに向かえば残った者は年寄りか代々土地を守ろうとしてきた僅かな者達のみ。
 そして今は戦の時代。旅人の行き来もますます減る一方──巡礼者ではない彼が訪れたのは数ヶ月前。
 彼は巡礼者にはどうにも見えない容貌だ、と久しぶりに余所者が訪れた村はひそひそ小声で彼を横目で見ながら姿を追ったものだった。
 彼は確かに巡礼者ではなかった。しかし村人にとっても悪い者ではなかった。
 村人がずっと頭を悩ませてきた、街道脇すぐそばにある通称「隠匿の炉床墓地」での幽霊騒動。
 その事件を彼はあっさり解決し、その名がイヴァルステッドの村中に知れ渡ることとなったのだ。
 その者の名は──ジュリアン、と。

「ジュリアン! 久しぶりじゃないか? あれからどうしていたんだ? ハイ・フロスガーに向かったと聞いてから姿も見せないし……」
 ホワイトランを出てからイヴァルステッドに到着したのは夜。
 街道沿いにある木造の宿「ヴァイルメイヤー」の扉をくぐるとすぐ、宿屋の主人ウィルヘルムの声が飛んできた。余程嬉しいのかなんか知らないが、彼はカウンターからこちらに向かって歩いてくる。
「……ああ、ウィルヘルム、久しぶりだな。宿を取ろうと思って──」
「宿か? あれからどうしたっていうんだ? ハイ・フロスガーには行ったのか?」
 こちらが喋り終わる前に言葉を重ねて聞いてくるので、思わず俺は右手で制するポーズをとった。
「後から話す。とりあえず荷物を降ろしたい。部屋を貸してはくれないか?」
 彼は本来の職を思い出したのか、後退して久しいがまだまだ薄い毛が残るブロンドの髪をがしがしと手でしごいた。
「あ、ああ。部屋に案内するよ。こちらへどうぞ」
 部屋に案内され、とりあえず荷物を置く。荷物といっても普段持って歩いているのはポーション等の生体賦活剤、非常食や食材、調合用の薬草などが入ったバックパックだ。装備品は常に携帯しておくため、身からはずすことはない。
 宿、といってもスカイリムにある宿はほぼ、酒場と宿屋を兼業としているため部屋を出ればすぐバーカウンターとテーブルがある、といった具合だ。中央には細長く切り取った暖炉が置かれ、暑いや暖かいといった感覚がまるで無いスカイリムの土地を歩き回った旅人へのねぎらうように焚かれている。
 借りた部屋は粗末なベッド、サイドテーブルに荷物を入れておける箱が置かれてあるだけで、これまた一般的な宿屋の部屋と変わらない。唯一違う点は扉が無いことくらいだ。扉がない、という点でプライバシーも何もあったもんじゃないのだが、以前聞いたところによると防犯上の意味も兼ねているのだとか。
 どんな防犯があるのかは知らなかったが、いわゆる連れ込み宿とは違う、という事を強調しているのだ、というのを以前、ブレイズのメンバー兼元宿屋の主人であった、デルフィンから聞いた事があったが……
 俺は部屋を出てカウンターにおかれてあるスツールに座る。こちらが何も言わずとも、カウンター越しに突っ立っていたウィルヘルムがハチミツ酒のビンとグラスを寄越してきた。どうやらおごってくれるらしい。
「ハイ・フロスガーには行ったのか?」
 先ほども開口一番で聞いてきたことを再び繰り返すウィルヘルム。
「……ああ」
「修道者と会ったのか?」
「……ああ」
 ああ、しか言わない俺に一瞬、業を煮やしたような態度をとったウィルヘルムだったが、そこはこらえた様子で、
「またハイ・フロスガーに向かうのか?」
 質問を変えたが、俺はそれにも同じような返事をするだけだった。彼は俺に聞くのをやめ、黙って酒場の掃除をし始めた。こちらが話したくない気分だとでも思ったのだろう。さすが酒場の主人といったところか。
 俺は黙ってハチミツ酒の入ったグラスを傾けるだけだったが……
「……なぁ、ウィルヘルム」
「なんだ?」
 すぐに返事を返すウィルヘルム。
 つと、顔を上げて彼の顔を見る。カウンターに手を置いて、なんでも聞いてやるといった彼の様子。
 その態度に俺は思いをぶつけてみることにした。
「もし……もしもの話として聞いてくれ」
 ああ? と語尾を吊り上げたが、水を差さずに彼は俺の口から出る言葉を待った。
「もしも、自分がほかの人とは違う力を持っていて、その力を使うことによって、世界は救われるかもしれないが、決して全員が救われることなく、死ぬ者も大勢出てしまったとしたら、あんたは自分の力に誇りを持てると思うか?」
 俺の言った事が予想外だったのだろうか、彼は口を半開き状態にしたままぽかんとした状態でしばし、黙っていたが──
「……難しいことだな。俺にはよく分からないよ」
 そうだろうな、誰だってわかることじゃない。落胆は隠せなかったが、聞いただけでも心が若干軽くなった。
「まぁ、そうだよな。……変なこと聞いちまった。忘れてくれ」
 愛想笑いを口に浮かべ、俺は肩をすくめた。それでその話を終わらせようとしたつもりだった。
 しかし、
「ジュリアンはその、ほかの人と違う力を持っているのか?」
 唐突にウィルヘルムが聞いてきた。グラスを口に傾けていた俺はむせそうになる。動揺してはまずい。
「……何でそんなことを?」
 つとめて冷静に聞いたつもりだった。
「いや、だって、ハイ・フロスガーにはグレイビアードが居るんだろ? 彼らはスゥームと呼ばれる不思議な力を持っていて、それ故に人とは関わらないっていうじゃないか。あの修道院でグレイビアードに会う奴なんていくら巡礼者でも見たことがない。大概はがっかりして帰る姿を見てるからな。
巡礼者が修道院の中に入ったとまで聞いたことはないし、あの修道院の人間と関わったってさっきお前さんが言ってたじゃないか? だったら、ジュリアンにはその不思議なスゥームという奴が扱える『ほかの人とは違う力』があるって事になるんじゃないのか?」
 ……見かけによらず鋭いな。
 思わず心の中で舌打ちする。さすが巡礼者が通る街道沿いにある宿屋といったところか。山頂から時折奇妙な声が聞こえるとも聞くし、ここはスカイリムの中でもあの修道院が他とは違うことをよく分かっているのかもしれない。
「そう……かも、しれないな」
 言葉を濁してスツールから腰を上げる。それ以上この話について何も言う気にはなれなかった。
「ハチミツ酒、ご馳走さん。……おやすみ」
 そういい残して俺は借りた部屋に戻り、お世辞にも柔らかいとは言いがたい寝台に乗っかり、体を横たえた。
 ……そうかもしれない、じゃない。事実そう、だ。
 しかし俺はマルカルスの一件以来、自分の力に疑問を抱き始めていた。
 何故──俺なんだ? 何で俺がドラゴンボーンじゃなければいけない?
 ヘルゲンで処刑される馬車に押し込められる前、俺はたまたまウルフリック・ストームクロークを罠にはめようとしていた帝国軍に間違って捕らえられたのは覚えている。
 それまでの自分は今と変わらない。変わったのは、体の中にある何かが目覚めたこと──
 アルドゥインがヘルゲンを襲い、命からがら逃げ出した先で待っていたのは、自分の中に『他と違う力』ドラゴンボーンの力があると分かった事だった。
 だからアルドゥインがヘルゲンを襲った、という理由には繋がらないだろうが。
 だがしかし、そのアルドゥインと戦える唯一無二の存在が俺であるドラゴンボーンなのだとしたら、あるいはその逆も有りなのではないか?
 その為に俺は──ハイ・フロスガーに再び出向くのだから。

「……つまり、お主はこういいたいのか?『スゥームがドラゴンの言葉なのだとしたら、アルドゥインと会話することも可能ではないか』と?」
 翌日。ハイ・フロスガー修道院。
 夜明けとともに宿を飛び出した俺は、馬で七千階段を上り、この修道院に来た。
 日も高く昇っている頃でも相変わらず修道院周辺は晴れることなく雪がちらちらと降り、そして目に入る場所全てが白い世界にに覆われている。この場所の雪がなくなるということ世界が終わるまでないだろう。
 修道院の重い鉄製の扉を開け、中に入れば外と違う暖かさに体が安堵する。外と中は雲泥の差だ。一時間も外に居れば氷の彫像になってもおかしくない寒さなのだから。
 この修道院には四人程度しか修行僧はいないにもかかわらず、建物全体はものすごく広い。広間があって、食堂があって、そして瞑想をする場所がある。そんな感じだが、住んでいる者が少ないため、人を探すのにも一苦労だったりする。
 歩き回ってようやく修道長のアーンゲールを見つけると、開口一番で俺はこう話した。
「アーンゲール、ドラゴンの言葉が喋れるなら、アルドゥインと会話はできるのか?」
 出会い頭にいきなりそんなことを言われたせいで、彼はかなり面食らったようだった。
 だが落ち着きを取り戻すと俺の言った言葉を理解するために、しばし時間を措いた後──そう返事を返した。
 驚きもせず、いつもと同じ落ち着き払った声で。
「そうだ。俺はアルドゥインと話がしたい。できないか? アーンゲール」
 話す俺を、彼はじっと見つめていた。俺が修道院に入って彼の目の前に立ってからずっと。
「……話す事は可能だろう。何もスゥームでなくても、アルドゥインや他のドラゴンは人語を操ることは可能だと聞き及んでおる」
「人語を?」
 黙って彼はうなずく。「そうだ。アルドゥインは一応は神に近い者。人語を操ることは可能だろう。……しかし」
 言葉を切ると、彼は突然、びっ、と俺に人差し指をさした。いきなりの行動に俺は思わず体を硬直させてしまう。
「何を考えている、ドラゴンボーン? アルドゥインと話すとして、何を話すというのだ?」
 アーンゲールの言うことはもっともな質問だ。誰だってドラゴンと話したいと言ったら狂気の沙汰というか、もしくは何を話すというんだといわれるに決まってる。
 けれど、俺には考えがあった。今、スカイリムは動乱の時代だ。そんな時にドラゴンが襲ってきたら人々は絶望しか残らないだろう。
 マルカルスで起きた一件が頭をよぎる。戦争ではなく、ドラゴンの襲撃で死んだのだ。もしドラゴンが襲ってこなければ……生きていた。彼らの命。
 だからこそ──
「俺はアルドゥインに交渉をしたい。共存することはできないのか、と」


つづく。

うーんうーん・・・

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03.21.20:00

辛勝、そして後悔

 ──数日前。
 マルカルスの宿「シルバーブラッド」を出た時はやや曇りがちだったが、晴れてはいた。
 基本、一人で行動している俺はもちろん、マルカルスに来た時も一人だったのだが──
 そこでの一仕事──といっても、あくまで荷物を受取人に渡すだけの仕事だが──を終え、そのままとんぼ帰りを決め込むつもりだったのが……
 気がついたら翌朝、宿屋のベッドの上に居た。
 そして、頭には鈍痛。
 よくよく思い返してみると、仕事が終わって一杯飲んで帰るつもりだったのが、記憶がなくなるまで飲み、そして今に至る──というわけだ。
 硬い石で出来た寝台にうつ伏せになって寝ていたのと、装備を解かないまま着の身着のまま状況で寝ていたため体中もぎしぎしと鳴るように痛む。起き上がり、関節を動かしてほぐしてから、鈍痛を和らげる為俺は荷袋から疾病退散の薬を取り出し、一気に口に押し流した。
 ふっ、と体が軽くなり痛みが瞬時になくなる。薬としては高価な部類に値するものなため、滅多に俺は使用しないのだが、さすがに二日酔いに効く薬は持っていなかった。
 そのまま部屋を出て、酒場となっている一階の広間までくる。夜は賑やかな喧騒が響くこの場所も、朝の時間は静かだ。普通ならそこでモーニングでも頼むべきだろうが、食欲は生憎沸いてこない。そのまま扉を開けて市街に出る。
 正門前には行商人が元気よく声を張り上げて商品のアピールをしているが、そのまま素通りし、俺は正門の扉を衛兵に開けてもらい、マルカルスを後にした。

 薄明かりがさす空の下、俺は正門前にある馬屋の一角にとめておいた自分の馬に跨った。
 これといって何も変わらない筈なのに、今朝はやけに静かだな……と空を仰ぎ見ていると、
「これから帰りか?」
 見回りでそこらじゅう歩いているマルカルス衛兵の一人に話しかけられた。視線を空から足元で突っ立ってこちらを見ている衛兵に向ける。
「……ああ、ホワイトランにね。今日はやけに静かだな。俺の気のせいじゃなきゃいいんだけどさ」
 気さくに話しかけられる立場なのは、このマルカルスでの事件──フォースウォーンがマルカルスで殺人事件を起こし、その首謀者が脱獄、一時は自分も殺人事件の犯人に仕立て上げられるも、彼らが俺の冤罪を引き受けてくれた一件だ──以来ここに来る度、だ。首長含め、俺への冤罪を謝罪した後は、彼らとは一応は友好的な立場をとっている。従士になることも出来る位自分の名はこの町で知れ渡ってはいるのだが、今のところホワイトランの従士を下りるつもりはない。
「そうか? お前が久しぶりにマルカルスに来たからそう思うだけじゃないのか? ……まあいい、ホワイトランまで長いからな。空に気をつけろ、旅の人」
 お決まりの言葉を最後につけ、マルカルスの衛兵は軽く会釈をしてくれた。
「こちらこそ。空に気をつけろよ」
 手綱を右手側のみくっ、と引っ張って馬をゆっくりとターンさせてから、俺はホワイトランに向かう街道に出た。
 そのまま馬を疲れさせないように並足で走らせ、のんびり帰路に向かいつつ、道中素材でも拾いながら行こうか……と馬に揺られながら考えていた矢先だった。

 ざあっ、と風が凪ぐ。
 ただの風ではなかった。その風に影がついていたからだ。
 風に影がつくわけがない。風を発生させている何者かの影だった。それは翼を広げた、巨大な影。
 その直後、ざわっ……と全身に鳥肌が立つ。
 何かが居る、何かが近づいてきている。
 そしてその感覚はこれまでも何回もあった。その感覚が起きるとき、自分の血の中にある何かが、求めるように、欲するように、沸き立つのだ。
 ──ドラゴン。
 認識するやいなや、俺は馬から飛び降りた。降りしな乗っていた馬の尻をぽん、と手で叩く。叩かれた馬はびっくりしたように後ろ足を飛び上がらせ、そのまま街道を走り去っていった。
 ドラゴンは敵味方関係ない。そこにいる命あるもの全てに攻撃をする。それが馬だろうがヒトだろうが獣だろうが見境なしに。
 俺は左腰に帯びてある剣を掴み、鞘から抜き放つ。上空を仰ぎ見ると、翼をはためかせ空を自在に飛び回るドラゴンの姿がマルカルスの正門付近をぐるぐると旋回している。
 大地を蹴り、正門まで走った。見回りをしていた衛兵がそこかしこで同じように正門まで走っているのが見えてきた。
 そんなヒトの姿を見て嬉しいのか、ドラゴンが声をあげる。そして上空でホバリングをするように、翼のみ動かしながら首を地上に向け──かっ、と口から炎のブレスを吐き出した。
 ブレスを吐き出したとき、俺は正門に向かうなだらかな坂道を上っていたところだった。肌に火照りを感じるだけだったが、その威力は何度も味わってきたから分かる。
 ようやく正門前にたどり着くと、衛兵が数人、炎にまかれていた。その中に馬屋の主人など一般人の姿も見受けられた。人が多いところはドラゴンにとっては格好の餌場だろう。
衛兵が空を飛ぶドラゴンに向かって弓矢を放つも、大したダメージとなってはいない。
 ドラゴンは空から降りてくる気配すらない。こちらにむかってブレスを吐いてくる時のみ、空中で動きを止める位だ。俺は剣を一旦鞘に収め、背中で抱えていた弓を手にとった。
矢筒から矢を取り、構える。
 俺の姿を発見したようにこちらに目を向けたのと、俺が弓を放つのはほぼ、同時だった。目一杯引いた弦を指から離すと同時に矢は勢いよく正面へ飛び、弧を描きながらドラゴンの首にぶすり、と刺さる。
弓に追加攻撃の符呪をかけておいたため、矢が刺さるのと同時に追加攻撃の痛みも加えてドラゴンに襲い掛かった。
 よしっ、と思った矢先、ドラゴンは俺に向かって飛びながらブレスを放ってきた。炎のブレスとはいえ、焼死するほどの威力はない。しかしそれは体力と抵抗力の勝負であり、尽きてしまえば死に値する。一時的に炎の威力を弱める効果のある薬をのんだり、体力を回復しながら戦うしかない。
しかしこちらにはまだ切り札はある。それが俺がドラゴンボーンとよばれるべき力──
 俺は息を深く吸い、そして──叫んだ。
 それは人語ではない。ドラゴンの言葉、いや古代の言葉というべきか。俺も全ての言葉を習得した訳ではない。しかしこれがドラゴンボーンと一部の者にしか扱えないスゥームと呼ばれる力。ドラゴンに対抗できる力の一つ。 
「……ラ………ォ……ェイ!」
 声を解き放つと同時に、見えない何かが収束し、空を飛ぶドラゴンに襲い掛かった。見えない圧力によって吹き飛ばされたかのような格好になった後、ドラゴンはバランスを崩し落ちるような格好で地面に倒れた。
 周りで弓を射掛けてた衛兵はこぞって落ちてきたドラゴンに近づき、剣を抜き攻撃をしかける。俺も武器を剣に持ち替え、ドラゴンに近づく。
 倒れたドラゴンは翼を折ったのか、それ以上は飛ぶ気力はなさそうだった。しかし──
 かっ、と再び一閃。衛兵にブレス浴びせる。まともに浴びた衛兵は焦げたのかその場でどたり、と煙を全身から噴かせながら倒れた。
「ドラゴンの顔に向かうんじゃない! ブレスの餌食になるか、食われちまうぞ!!」
 衛兵にそう指示しながら、俺は大きく剣を振りかぶり、ドラゴンの皮膚にがっ、突き立てた。
 その時──馬屋や農場から出てきた平民が思い思いの武器を手にし、ドラゴンに一矢報いようと近づいてくるではないか。
 俺は慌てた。束になって敵う相手ならいいが、ドラゴンはそうじゃない。そこらの野獣と同じではない。
「ドラゴンめ、死ねえぇ──!!」
 若い男が不慣れな手つきで、納屋から持ち出してきたのだろうか、やや錆の浮いた剣で斬り付けようと振りかぶった時──ドラゴンは待ってました、とばかりにその男の体にがぶり、と噛み付きかかった。
 食いちぎろうとしたのか、暴れる体をねじ伏せようとしたのか、ドラゴンは首を左右に振り、そして噛み千切った。咥えられた部分はドラゴンの喉の奥に。そして残り半分は首を振った時の遠心力で吹っ飛び、やや離れた地面にぼとり、と落ちた。
 その直後状況が一変した。平民は恐怖の声を叫びながら散り散りになって逃げ出し、衛兵は尻込みし始める。衛兵の顔色はフルフェイスに覆われてるため窺い知ることはできないが、恐怖で顔が引き攣っているのは自明の理だろう。
「逃げるんじゃない! 俺が盾になる。お前たちは両側から挟みこむように叩き込め!」
 声を張り上げ、逃げ腰の衛兵を叱咤する。冒険者風情に馬鹿にされまいと感じたのか、逃げ腰だった衛兵が再びドラゴンに近づき、今度は散り散りではなく、いっせいに背後や胴体を攻撃しかけた。
 俺は前に回りこみ、ドラゴンと正面から対峙する。
 傷だらけで血が滲みはじめてきたドラゴンだが、俺に向ける視線は相変わらず、獲物を焦がそうと再びブレスを口から吐き出す──と同時に俺もスゥームを解き放った。
 力の言葉を解き放ち、言葉は圧力となりドラゴンを打ちのめす。
 ドラゴンは明らかに弱まってきていた。しかし最後まで油断はできない。俺は傷を負いながらも衛兵や一般人を巻き込まないよう、自分に敵意を向けるように攻撃しているため、消耗がすさまじかった。薬を飲みながら耐えるのにも、薬の手持ちがわずかになってきている。
 まずいな……あとは連続的に畳み掛けていくしかない。
 そうこちらが思った事をドラゴンが感づいたのかは知らない。しかしドラゴンは最後の力を振り絞るかのように、俺が剣を振りかぶるその僅かな隙を突いて、首を手前に突き上げたのだ。
 がんっ、と胴体にドラゴンの首がめりこみ、瞬間俺は意識が吹っ飛ぶ。
「がは……っ!」
 体が浮いた、と思ったら次の瞬間には地面に叩きつけられていた。よろよろと体を起き上がらせると、ドラゴンは脇で剣を突き立てる衛兵に向かって首を傾け、ブレスを放っていた。
 しまった……俺ははぁはぁと息を喘がせながら、俺は左手のひらをかかげ、心の中で力ある言葉を唱え始める。
 言葉にしないままそれを解き放つと、手のひらで輝いていた淡い光が俺の全身を回り込むように包み込み、痛みを徐々に取り除いていった。
 吹っ飛ばされた距離はさほど遠くはない。俺は再び地面を蹴ってドラゴンとの間合いを詰めていく。
 ドラゴンは周囲にいた衛兵をことごとく倒していた。あたりの地面には血溜まりがあちらこちらにできている位……
 俺は鬨の声を上げ──ドラゴンが気づきこちらを向いたとき、その瞳に刃を突き立てた。
 眼球を抉るように突き刺し、左手に持ったもう一本の剣で、口を開かないよう直角に剣を振り下ろす。硬い鱗を突き破って柔らかい内部の肉にまで達した手応えを感じた。
 鮮血が噴出し、ふっと力が抜けたかのように、ドラゴンの長い首が地面に倒れる。命が尽きた瞬間だった。──直後ドラゴンの体が光ったかとおもうと、無数の光の糸となり、その糸が俺の全身に吸い込まれるようにして吸収されていく。
 ずきっ、と体に鈍痛が走った。──いつもそうだ。ドラゴンソウルを吸収するとき、体全体に抵抗するかのような鈍い痛みが襲う。
 無数に迸る光の糸がやがて消えると、後にはドラゴンが鱗も中身も抜かれた骨だけのまま地面に転がっていた。
 俺は言葉すら出せなかった。ドラゴンの骨の周りには、衛兵、農場の若者、巻き込まれた一般人がばらばらと同じように地面に倒れていたからである。
 生き残っていた、もしくは避難していた一般人がわらわらと出てきた。死骸を見つけ、身内のものが地面に伏せて泣き喚いている。
「…………」
 なんと声をかけたらいいのかわからない。
 踵を返し、黙ってその場を立ち去ろうとした時、
「何故あんただけ生き残ってるんだ? 他は皆死んでしまったのに」
 嗚咽を漏らしながら聞こえてきた声は、どうやら農場で勤めている平民のようだった。
 背後から声をかけてきたため、俺も一瞬顔をむけようかと思ったが……どういえばいいのかわからなかった。
 自分はドラゴンボーンだから? それがどう答えになる? 明かしたところで何になる?
 ドラゴンが復活したのは別の何らかの影響からだとしても、俺がドラゴンボーンになったのはまったくの偶然だ。それを説明したところで殺された者の命は戻らないし、ドラゴンは再びマルカルスを襲うだろう。
 俺が出来るのは倒し、力を得、そしていずれはアルドゥインと戦うのだろう。犠牲が出るのは仕方がないにしても。
 しかしそれを面と向かって言える程、俺はバカじゃない。
 結局俺は振り向かず、そのまま走ってマルカルスを離れた……。

 しかし……それでよかったのか、と今でも思う。
 そんな葛藤が夢に出ちまったのかもしれない。
 
 眠れないまま夜が明け、俺は黙って起き上がり、装備品を身につけ、部屋を出た。
一階に下り、そのままリビングを通って玄関に向かい、扉を開けて家を出ると、正門に向かって俺は歩き出した。
 
 一つの仮説を聞くために。

つづく。

 やたら前置きが長いが、半分は自分がゲームで体験したことを基にしてます^^;

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03.18.01:34

躊躇うか、勝利か

※スカイリムの二次創作小説です。
その手のものが苦手な方はバックキーを押すか、ブラウザを閉じてください。
自分じゃMODは作れないので、あくまで派生クエというかんじのストーリィにしてます。
MODが作れればたぶんこんな面倒なことはしてないと思われ(汗

 ──闇。
 何も見ることができない闇。
 ……いや、違う。何かが蠢いている。
 闇が動くわけがない。
 何かいる。
 俺は両手を突き出した。その蠢くものが何なのか確かめようと。
 しかし俺の両手は俺の視界には入ってこなかった。腕を突き出している感覚はある。筋肉や神経は腕を伸ばした状態であると、俺の脳にしっかり信号として入ってきている。
 けれどその両手すら見えないのだ。まるで自分の両目に真っ黒いカーテンを覆ったかのように。
 それより俺は今どこにいるのだろう? 一寸先すら見ることのできない真っ暗闇の中に俺はいつ入り込んだのだろうか?
 首を振ってあたりを見回そうにも、やはり何も見えない。真っ黒いキャンバスの中に一人だけ放り込まれたかのようだ。
 その時再び闇が蠢いた。
 間違いなく何かがいる。しかし自分の目は相変わらず役に立たないまま。腕は突き出したままで何に触れることなく、虚空をさまようばかり。
 この状況を打開できるには最早ひとつしか方法がなかった。
「そこにいるのは誰だ?」
 俺は蠢く闇に向かって話しかける。
 ごく普通に話しかけた感覚で言ったつもりだった。
 その直後──

 真っ暗闇だった視界に、突如爆発したかのような閃光。そして白。まばゆいばかりの白。
 暗闇に慣れていた両目に襲い掛かったそれは、今度は白く塗りつぶすように再び視界を奪った。
 急激な光に突き出していた両手で視界を遮ろうともしても最早手遅れで、焼け焦げたように両目が痛い。
「……っ!」
 瞼から涙が溢れる。感情からくるものではなく、痛みからくるものだ。両手で襲う閃光から目を守りつつ、俺は薄目を開けた状態で目の前を見ようとした。
 白い世界の中で、何かが見える。さっきまで蠢いていたものだろうか。
 その時、声が聞こえた。微かではあるが間違いない。一度聞いたら忘れられない声。ノルドのような人間、カジートのような獣人から発せられる声ではない。
「……ーン……が、……」
 その時俺は見た。閃光の瞬く中、巨大な銀色の──ドラゴンの姿を。
「アルドゥイン……!」
 俺は左側の脇にに帯びている剣を鞘から抜き取ろうとした──が。 
 剣がない。武器を何も持ってない。
 何故、と思うがいなや、強烈な熱風──炎だったかもしれない──に襲われた。
 全身が焼け焦げるように痛い。ドラゴンブレスをまともに食らったようだった。
 丸腰の俺が敵う相手じゃない。逃げたほうがいいに決まってる。そう思って踵を返したときだった。
「逃げるのか、ドラゴンボーン。逃げればお前がもっとも嫌うものと世界は変わるであろうぞ。汝はそれを望むのか? 我は……」
 再び閃光。
 その声が耳朶に張り付いたまま、俺は意識を失った。

 はっ、と目が覚める。
 飛び跳ねるような感じで寝台から起き上がり、自分が今まで夢を見ていたこと、今いる場所は寝室だということに気づく。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
 息が荒い。
 体全体が汗ばんでおり、夜着代わりに使っている薄いチュニックが汗でじっとりと濡れていた。
 垂れ下がった前髪を掻き分けながら、俺は深呼吸を数回した。大丈夫だ。夢だったのだと自分に言い聞かせる。
 ずいぶん中途半端な時間に起きてしまった。まだ夜明け前のようだ。寝室のあるロフトには窓はないが、街中にある一軒家なため周りが静か過ぎれば自ずとまだ夜明け前なのだと察しがつく。
 もう一眠りするか、と思い、とりあえず汗で濡れてるチュニックを脱いでから別の服に袖を通したときだった。
「従士様! 大丈夫ですか!!」
 ばん、と扉を派手に開けて入ってきたのは自分を従士と呼び、このブリーズホーム──ホワイトランという町にある俺の家の名称だ──に居候している兵士、リディア。
 女性だが、兵士として訓練されているせいか女性らしさはあまり感じられない。……とはいえ、どうこういおうが女性であることに変わりはない。しかし他意を感じたことはない。同じ屋根の下で過ごしていても。
「……俺は大丈夫だ。お前もいいから寝室に戻れ、リディア」
 着替えようとしてチュニックを脱いだばかりだからばつが悪い。しかし彼女は平然と、
「従士様がうなされているのが聞こえたので、心配で飛んできたんです。……汗まみれですね、体拭きましょうか?」
 とまで言ってきたので、俺はNo、と言う代わりに手を振ってサインを示した。
「俺は大丈夫だ。もう一眠りする。お前も寝るんだ。俺のせいで起こして悪かったな」
 寝ると言われれば引き下がるしかないと思ったのか、リディアは納得しかねない様子だったが会釈をして部屋を出て行った。
 ほっ、と一息吐いて、俺は着ようとしていた別の服に袖を通す。
 ボタンをかけながらふと、夢で見たアルドゥインの言葉を思い返した。
 逃げればお前が最も嫌うものと世界は変わる──
 それが何を示しているのか……俺にはわかっている。だからこんな夢を見たのか。俺は……
 着替えが済み、俺は再び寝台に横たわったが、眠れそうになかった。
 おそらく、何故こんな悪夢を見たのか、俺には該当がついている。
 それはちょうど、数日前のことだった。
 マルカルスで一仕事を終えた直後、ドラゴンがマルカルスの町に襲い掛かってきたことから始まる───

 つづく!

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03.14.20:50

最初はいつもこうだ

………“ドラゴンボーン”
それは救世主とも言われている、伝説の存在。
世界を喰らう者、と呼ばれし邪竜アルドゥインが復活せし時、
タムリエルを救う者として、神々が授けた唯一の方法が、定命の者にのみ、与えられし
「竜の血脈」を得た者のみ。
それを称える言葉として、人々は「ドラゴンボーン」と呼び、
唄を作り、詩を書きとめ、書に残し、後世に伝えた。

そして時は過ぎ──
第四紀の時代。
スカイリムの地でアルドゥインが復活し。
そして上級王の殺害。
帝国と、ノルド原理主義に基づくストームクロークとの軋轢。

そんな混乱の中、
ストームクロークの指導者、ウルフリック・ストームクロークが待ち伏せし捕らえられ、
今まさに処刑場に向かっている馬車の面々の中で、
間違って囚われの身となってしまった一人の男がいた──


 ……なんてあまり意味のない冒頭をだらだら書いてしまいました。
はじめまして。こんなブログを読みにきてくださってありがとうございます。
どちらかいうとあまりプレイ日記を載せるつもりはないですね・・
だらだら勝手に二次創作でも書いていこうかな、とか思ってます。

 TESシリーズをやったのは実を言うとスカイリムが初です。
まあ、Oblivionはやろうと思ったこと何度かあるんすけどね・・
やろうと思って他をやってたら、スカイリムが発売されるというんで期待してPC版を買い、めちゃくちゃハマって現在にいたる、と。

 MODとか作りたくても自分は作れる技術も頭もないので、
 とりあえず作ってみたい(現在進行形ですが)とおもってるクエストMODのような形でぽつぽつ載せて
いくつもりです。
 ただ、現状まだまだプレイするほうが楽しいので、
 更新はノロノロかもしれませんが><w

 
 スカイリムのサントラが届いた時点で、とりあえずブログで小説かいちゃえーと思って
 立ち上げてみました。
 こんなんですが、今後ともどぞ、よろしくです。

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