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SkyrimとFallout4・76の二次創作メインブログです。 たまにMODの紹介も。
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04.29.12:50

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  • 04/29/12:50

04.07.00:18

レスポンス(第二手)

『……正気か?』
 もう一人の自分が問いかける。
 俺がこれからやろうとしていることに対して、心の中の冷静な自分──理性、といったほうがいいか──がその行為は危険だと警鐘を鳴らしてきた。
 確かにその通り。よくよく考えてみたら無謀、というより無茶苦茶だと思う。
 傍から見たらそれは自殺行為、狂気の沙汰──そうみなされてもおかしくない行動だ。
 しかし、と俺は思う。
 自分がドラゴンボーンという運命を背負う立場になったのだからこそ、その力の使い道は俺自身で制御しなければならない。
 以前アーンゲールは言った。
『善にも悪にもなれる力なのだ』と。
 行動如何によっては、刃とも癒しにもなる諸刃の剣。それがドラゴンボーン。スゥームの力を会得できる者。
 なら、と俺は思う。
 俺にしか出来ない事なら、俺がやってやる、と。
 だから俺は問う。──ドラゴンとの共存を。

「正気か、と聞きたいが……どうやら正気のようだな。目はまっすぐこちらを向いておる」
 相変わらずじっとこちらの視線を見ていたアーンゲールは、ぽつりとそう漏らした。
 彼の目に俺がどう映っているかはわからないが、俺が突然言ったことに対して……失望したり、馬鹿にしたりといったような態度はなかった。いつもと変わらず、じっとこちらを見て静かに声を出してくる。
「……ああ、そうだ。今スカイリムに起こっている事をアーンゲールだって知ってるだろう? 帝国はアルドメリ自治領に下り、上級王トリグはストームクロークの主導者、ウルフリック・ストームクロークに殺された。
 スカイリムの各地で帝国とストームクロークは争っている。そんな時にドラゴンが復活してスカイリムを暴れまわってたら人々はどう思う?」
 俺の問いかけに──彼は応じず、ただじっとこちらを見たまま……まるで俺の心を見透かそうとするように。
 しばし黙ったままの後──彼は気だるそうに口を開いた。
「共存、か……」
 その言い方が驚いたようにも、呆れたようにも聞こえたのですかさず言い返す。
「腰抜けだと思うなら思え。ドラゴンと戦うのが嫌だと言ってるわけじゃない。自分の運命を受け入れたくないわけじゃない」
 分かってほしい、とは思っていない。ただ、倒す倒されるかの道だけじゃなく、共存共生の道があったっていいじゃないか。
 俺以外の他のドラゴンボーンが全て倒す道を辿ったとしても、俺は彼らとは違う。ドラゴンボーンとして戦う運命だとしても、それに捻じ曲げられたくなかった──俺の意思だけは。
 そんな感情が表に出てしまっていたのか、アーンゲールはこくこくと首を小刻みに縦に振り、
「わかっておる。……しかし、それを望む者がいると思って言っているのか? 
 スカイリムの民はアルドゥインが何者かは分かっているだろう。八大神の長とも云われる存在、アカトシュの変形と云われる“世界を喰らう者”ということを。
 ……そのような神が、かつて支配していた人間の申し出を、すんなり受け入れてくれると思っているのか?」
 静かに、諭すように彼は一言一言ゆっくりと声に出した。
 ……かつて、この世界の人間はドラゴンに支配されていた。……しかし、それを哀れと思ったカイネ、そしてパーサーナックスが、人間に“声”を伝授した。
 それがノルドに伝わる声秘術、“スゥーム”。ドラゴンの言葉。
 声を得た人間は、長きにわたってドラゴンと戦い、消耗しつつも勝利を得ることができた。ドラゴンはいずこかへと消え去り、支配は無くなった。
 そして現在、彼らは徐々に復活している──アカトシュ、いやアルドゥインの力によって。再び世界を支配しようとする為。
 そして現れたのはドラゴンボーンたる力を持った自分。
 俺を止めようとするのか……最初は身構えたが、アーンゲールはそう言っているのではなかった。
『ジュリアン。私はお前を止めようとしているのではない。お前がそうしたいのならそうすればよい。しかし、我々とてドラゴンボーンとして生を受けたお前をみすみす死にに行くような行為を取らせたくはないのだ、それだけは分かって欲しい』
 じっとこちらを見る彼の視線がそう伝えてきているように……俺には思えた。
 彼らは必要なこと以外口には出さない。俺だってまだ知らない事が山ほどあるのにも関わらず、だ。
 時が来れば話す──そういう奴らなのだ。グレイビアードという者達は。
 俺はやや顔を傾けるように会釈をし、彼に背中を向けた。
「……ありがとう、アーンゲール。色々聞けて助かった。──俺のことは気にするな。確かドラゴンボーンの力はその力持つ者が死んだ時新たに別の誰かに継承されるんだろ? ならもしかしたら、次にここに来る奴は俺じゃない別の誰かかもしれないな。ははっ」
 薄ら笑いを浮かべ、俺はアーンゲールの姿を見ようとせずにハイ・フロスガーを出た。
 重い鉄製の扉を開けた途端、変わらず振り続ける雪が叩きつけるように風とともに襲ってくる。
 扉から山の斜面に通じる螺旋状の階段を降り、繋げておいた馬に跨って俺は再び七千階段に向かった。
 次に向かう場所は──リバーウッド。
 そこにもう一人、俺の協力者がいる──ブレイズという、かつては帝国の為に戦っていた私設軍隊だった、今は絶滅した軍隊の──メンバーの生き残りが。

「はぁ? あんた何言ってるの? ドラゴンと話をつけようですって? とんでもない!」
 開口一番でデルフィンは俺に向かって唾を飛ばすかのように言い捨ててきた。最も大きな声を上げてもここは宿屋の地下にある隠し部屋だから、声が外に漏れることはないだろうが。
 ここはリバーウッドにある宿屋兼酒場「スリーピングジャイアント」──の地下秘密部屋。
 リバーウッドはかつて自分が捕縛されヘルゲンで殺されそうになった時、アルドゥインが攻めてきて命からがら脱出し、初めて行き着いた村だ。
 最初は何処にでもある小さな村だと思っていた。が──
 そこの宿屋の女将──俺の目の前にいる女性だ──は、帝国の為に動いていたかつてのブレイズの生き残りだと知ったのはそれからしばらく経ってからの事。
 彼女は自分がとある依頼を遂行させる一歩手前で先手を打たれ、そしてこの宿屋で落ち合い、彼女の正体を知る事となった。すなわちそれは、俺が何者かも彼女に知られる事となったのだが……。
 その後彼女には色々とドラゴン復活の真意を探るべく動いてもらっている。彼女はドラゴンの復活場所を予め予測し、それは確実なものとなった。彼女ならアルドゥインが次に何処に現れるか分かっているに違いない、と思い、俺はハイ・フロスガーを出た後すぐにリバーウッドに向かい、俺の考えを伝えた……直後の一言がそれだった。
「とんでもない、とまで言う事でもないだろう。出来ないわけじゃない、とアーンゲールは言ってたぜ」
 ついこないだまでただの女将としての彼女しか見ていなかったせいで、俺の口調はグレイビアードのそれとは違い砕けた口調になっている。
 彼女はそれに反論しようと口をぱくぱくとしてみせたが──うまくまとまらなかったのか、あるいは考えをまとめようとしたのか、うろうろと部屋をうろつき始めた。
「……なぁ、デルフィン。あんたはドラゴンの墓の地図に印をつけてたよな。次はここが復活する、って」
 うろうろする彼女を目で追いながら俺は言葉を投げかける。彼女は全く応じようとせず、頭を人差し指でおさえながらうろうろするばかり。聞いているのか?
「なぁ──」
 埒が明かず、俺が再び声をかけようとした時。
「本気なの? アルドゥインと話をつけるなんて? 冗談よね?」
 やや落ち着きを取り戻したらしいが、彼女は勝手に冗談だと決め付けたようだった。
「冗談であんたを驚かす位なら、アルドゥインをたった今殺してきたとでも言うさ」
 肩をすくめて言い返してやる。
 彼女は嫌なものでも見るかのように眉間に皺を寄せた。「……あのねぇ、話し合いで事足りるなら最初から襲ったりしないんじゃない? 貴方本当にドラゴンボーンなの? まさかその力を持っているにも関わらず逃げ腰を取るつもり?」
 げんなりしてきた。今度は俺を疑ってきやがった。
「いい加減にしろよ! 俺は俺のやり方でやるだけだ。話が通じる相手かどうかはこの際置いておいて、できることなら俺は……、」
 共存を目指したい、とは言い憚られた。今の言い方から察すれば、彼女に理解してもらえる事は無理のようだ──
 しかし。
「出来ることなら? 何?」
 鸚鵡返しに彼女は問いかけてくる。どう答えたものか……と逡巡したが、結局俺の考えを打ち明けるしかなかった。
「………ドラゴンと共存が出来ないか話を持っていくつもりだ」
 直後、デルフィンの目は一瞬丸くなり、は? と言いたそうに口を半開きにし……
「……無理」
「無理かどうかは分からないだろ? そんなのやってみなくちゃ分からない。共存する事だって、可能性は0だと決して限らない筈だ」
 彼女の発言を言わせまいと、ほぼ同時に口を開いて俺は意見をぶつけた。
 言う前に言われて出鼻を挫かれたせいか、デルフィンは明らかに辟易した表情を浮かべ、
「……無理に決まってるでしょ。あなた、何考えてるの? 共存ですって? そんなことできる訳ないでしょ」
 頭が痛そうに片手で抱え込む仕草を見せた。
「何故無理だと決め付ける? 誰もやったことがない事を頭ごなしに無理だというほうがどうかしてる。無謀かもしれない。けどやってみる価値はあるんじゃないか?」
 相変わらず頭を抱え込むデルフィンに向かって俺は説得するように言った。
「教えてくれ。次にアルドゥインが出る場所を。次に奴が現れ、ドラゴンを復活させる場所を」
 辛そうに頭を振っていたデルフィンだったが……俺の意思が揺るがない事がわかったのか、はたまた言ってもどうしようもないと呆れたのか、頭に当てていた手をゆっくりとほどいて両腕を胸のあたりで組み、苦笑を浮かべてこちらを見据え、
「……どうしてもやりたいの? 自分がどうなったとしても?」
 最早説得できないと踏んだらしく、半ば諦めたような口調だった。
「──ああ」
 意思を変えない俺にやれやれといった様子で、デルフィンはおもむろに頷いた。
「分かったわ……」
 疲れたように言ってから、彼女は部屋の真ん中に置かれてあるテーブルの上に無造作に置かれてあった古びた紙切れを広げた。
「恐らく次は──ここの筈よ。マルカルスに向かう街道のはずれにドラゴンの墓があるわ。ここに奴は現れる」
 彼女はそう言って──紙切れに書かれてある黒い点の一つを指差した。

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