忍者ブログ

SkyrimとFallout4・76の二次創作メインブログです。 たまにMODの紹介も。
03 2024/04 1 2 3 4 5 67 8 9 10 11 12 1314 15 16 17 18 19 2021 22 23 24 25 26 2728 29 30 05

04.20.08:36

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

  • 04/20/08:36

06.03.22:47

White Flag

日差しは既に上昇をキメており、さえぎる雲がないその光を存分に地上に降り注いでくれる。
 暑くはないが焼けるだろうな、と思いながら、仰いでいた空から視線を地上に戻し──俺の斜め前をすたすた歩いているネイトに目線を移す。
 ぴったりと肌に張り付くようなジャンプスーツを着込み、双肩には革製の鎧がつけられている。それでも殆ど体のラインがあらわになるスーツを着ているから、殆どの部位に筋肉がついているのが分かる。
 自分とは大違いだ、と思う。
 俺は元々薄暗い洞窟の中で16歳まで過ごしていたせいか、どちらかというと筋肉はつきにくく、ひょろりとしている。そのせいでネイトに何度となく、
「お前はよくそんな細長い体で、重いライフルを背負って長距離を移動できるな。
 若いから気力でどうにかしてるんだろうが、そんな事じゃ体がもたなくなるから肉を食えよ」
 などと嫌味なのか、軽口なのか分からないそれを言ってきては笑ってくれる。最初はそんな態度に苛々もしたが、後にそれが俺を気遣う事だったと気づいてからは反論が出来なくなった。
 ……というか、どうしてネイトは、いつも俺を旅に連れてってくれるのだろう?
 プレストンはいつもサンクチュアリを見回ったりしているが、何度かネイトとの旅に同行したいと言ってきた事があった。行きたいとそれとなく匂わせても、ネイトは笑ってごまかすだけだった、と。
 プレストンだけじゃない。ダイヤモンドシティにいるニック・バレンタインやパイパー、グッドネイバーのハンコックやコンバットゾーンに居るケイト──会う度に自分を連れてって欲しいと言いたげな事をネイトに伝えているのを見たことは一度や二度ではない。
 それでもネイトは俺を選んでくれた。……嬉しかったが、どうして俺なんだ、って聞くのは憚られた。……聞くのが怖かったのかもしれない。
 それは多分、胸の奥で疼くような感情が溢れ出てしまえば、この関係が破綻する事のは自明の理で、そうなるのを恐れているんだ。
 俺が我慢さえすれば、少なくとも、彼と旅は続けられる……それがいいのか悪いのかはさておき、自分にとって選択できるのはこの方法しかないのは痛いほどわかっているから。
「えらく今日は黙ってるんだな」
 ふっ、とネイトが声をかけてきたのが自分に対しての事だと気づくまでに軽く数秒程度の時間を要した。
「……いつもと同じだと思うけど」
 さりげなく平静を装う形で返答する。思えばサンクチュアリを出てから一言も会話をしていない。
「そうだったかな、いつもはどんな依頼だとか、どこに向かうんだとか、そういう事は聞いてきたように思えるけど」
 言われてみれば……とばつが悪い表情を浮かべるよりも先に、ほぼこちらの返事を待たずして再びネイトが口を開く。
「……さっき部屋に入った時、お前が手で丸めてたあれ、なんなんだ?」
 ぎくり、とした表情を見られまいと俺は咄嗟に俯いてみせる。──大丈夫だ、大丈夫だ、ネイトは何とはなしに聞いてきただけだ。俺が何を書いていたかなんて知る由もない。彼が超能力者でもない限り。
「た、ただ暇つぶしに落書きを書いてただけさ。別に見せるようなもんじゃない」
 やや無理がありそうな言い訳をするが、ネイトはそれ以上何も言ってこなかったのでほっとする。単に会話の埋め合わせのような形で口にしただけだろう。俺がいつも通りに振舞って忘れるさ。
 気を取り直して俺はネイトにプレストンからの新たな要請の話を聞くと、ネイトは歯切れの悪い返事をした。……さっきは俺に黙ってるなとか言っておいてその返事の仕方は何だよ。
「いや、プレストンは人が失踪した、ってだけの話を聞いたらしいんだ。ただその先は現地に出向かないと分からないらしくてな。人が失踪っていうと、スーパー・ミュータントがよくやる誘拐もどきのようなものかとも思ったんだが、どうもそうじゃないらしくて」
 大方、居住者が一人いなくなった事で残された奴が慌てふためいてミニッツメンに助けを求めたのだろう、気が動転してうまく伝わらなかったに違いない。スーパー・ミュータントが誘拐したんじゃないとしたら、ガンナー辺りが攫ったのかな、などと思いながら歩いていると、ネイトがひびや路床がむき出しになっている街道から逸れて歩き出す。どこに向かっているのか聞くと、テンパインズの断崖だった。サンクチュアリやら真東の山間にある斜面と崖が続く辺鄙な場所にある、こぢんまりとした小さな集落。
 元は立派なコテージか何かが建っていたその場所も長く放置されたせいで屋根などはとうの昔になくなり、今では僅かな残骸のみが遺された場所に小さな小屋を建ててひっそりと住む人たちがいる。俺がネイトと会う前に彼がその場所を居住者に向けて解放、整備を行ったとはいえ、立地が悪いせいか居住者はサンクチュアリの五分の一以下しかいない。その五分の一の人数が一人でも減れば大事になるのは当然と言えば当然だった。

「ええ、そうなんです。……息子は前々からここを出てダイヤモンドシティに行きたいと言っていました。──だから、てっきり一人でここを出て行ったのだろうと最初は思ってたんですが、突然すぎるし、何も言わずに向かうのも変な気がして……ミニッツメンに助けを求めた次第でして……」
 14時過ぎ。テンパインズの断崖にある小屋の前。
 小屋周辺は、断崖を利用してなのか、階段のような形状で段々重ねに土が耕され、その細長く仕切られた土の上には整然と並べられたテイトの苗が見える。土地を上手く生かした農耕栽培のやり方はネイトが教えたのだろう。今、ネイトと話している壮年をやや過ぎた男性以外は数人が畑作業に繰り出し、汗を流している。
 男性は失踪した男の親のようだった。母親は居ないらしい。ネイトが彼に二言三言質問をしながらそれを返す、といった形式でいくつか聞き込みをしている。
「そうか。あまり手がかりはないな……とりあえずダイヤモンドシティを探ってみようと思う。……ほかに何か気が付いた事とかはあるか?」
 ネイトが今しがたまで聞き込みの要点をメモしていた手帳を背後からちら、と見ると『ダイヤモンドシティ 聞き込み』とか『失踪は自ら計画的?』などと書かれてある。
「ヒューイがダイヤモンドシティに……あ、すいません。言い忘れてましたが息子の名前はヒューイと言います。──気が付いた事、ですか。
 そうですね……あまり意味がないかもしれませんけど……」
「意味がなくても、些細な事でも何でもいいんだ、何かあるのか?」
 ネイトが促すと、相手は首を振りながら、うーんと低く唸り声をあげた後、
「……ここ最近、変な事をよく呟いてました。なんだったかな……ずつ……違う、いろ……ずつ……違うな。何だったかな……全く意味がない言葉を何度か口にしてた──」
 などと何度か思い出そうと、ぶつぶつ呟き始める父親。ネイトは何も言わず、じっと相手を見ているが、俺はというと内心やれやれとため息をつきつつ、さっさとダイヤモンドシティに行こうぜ、ネイト──本気でそう言葉が喉から出かかっていた時だった。
「ああ、思い出した! そうだ、いろいっかいずつ、って言ってたんだ」
 素っ頓狂な声を上げて父親が発した言葉は、聞きなれないどころか最初は理解が追い付かなかった。イロイッカイズツ? なんだそりゃ? 
 しかしネイトは特段平静を保ちつつ、
「………色、一回ずつ。って意味か? それは」
 思い出した父親に聞き返す。父親は思い出した興奮で一度はぱっと晴れやかな顔を浮かべていたものの、
「……分かりません。ただ、何度か独り言のようにその言葉を発していたのは間違いないです。その時なんだそれは、って聞き返していれば、意味が分かったのかもしれませんが──え? いつからその言葉を、ですか? ……覚えてないです。誰かに何かを聞いたのかもしれない。ここは毎日のようにプロビジョナーや、キャラバンの商人が訪れるので、そこから何かを聞いたのかもしれない、としか……
 息子はよくそういう人達から、ダイヤモンドシティの話を聞くのが好きだったので……」
 首を横に振った表情は元に戻っていた。がっくりと肩まで落としている。余程息子が居なくなったのが堪えたのだろう。
 ネイトもまた、息子を探して連邦を彷徨う中俺と出会ってこうしているのだから、自分と同じ境遇を持つこの父親の気持ちが分からなくもない筈だ。勿論……俺も。
「色一回ずつ……それが失踪に関係しているかは分からないが、兎に角ダイヤモンドシティに向かってみる。
 消えてから数日は経過しているし、普通の足ならダイヤモンドシティに着いていてもおかしくない。──何かわかったら連絡しよう」
 そういって、ネイトは俺の方に踵を返した。黙ってこくり、と俺に頷いてみせ、そのまますたすたと歩いていく。
「……よろしくお願いします」
 彼を追うようにして走り出した俺の背後から、父親の消え入りそうな声が微かに聞こえ、消えていった。

「なんだかこれじゃ、探偵の仕事っぽいよな。ネイトは一時期ニックと仕事をしてた事もあったんだろ? ニックと組んでやるべき案件かもな、これ」
 思ってもない事を口にする。相変わらずの悪い癖が出てしまう。
「まだそうと決まった訳じゃない。変な言葉も聞いた事がないだけで、実際はあっちに向かえばすぐわかる事かもしれないしな。……なんだ、ニックと組んでほしいのか?」
 歩きながらふと、こちらを見るネイト。意地悪さを含んだ笑みが顔に現れている。……からかうつもりが俺がからかわれている気分で、面白くない。
「そ、そうしたけりゃそうすればいいさ。俺は探偵業なんて向いてない傭兵だしな。調べるのは得意じゃない」
 売り言葉に買い言葉。そう言われたらこう出るしか幕が引けない。自分の負けん気と意地っ張りがこう言わせてる。本当にニックと組んでしまったら? と心の中でちくりと針を刺すような痛みと共に。
 しばしネイトは横を歩く俺を見ていたが、ふっと笑って、顔を歩く方向へ戻しただけだった。……ああもう、こういう時に言えばいいんだよな、どうして俺と旅をしているのか、って。心にもない事はすんなり口から出るのに、どうしてこういう聞きたい事は聞けないのだろう?
「色一回ずつって言葉は何のことか分からないが──聞き込みをすれば、必ずヒューイは見つかるさ。……生きていれば、だけど」
 ネイトが空を仰ぐ。日は大分傾き始めていた。西日を感じる程ではないが、時刻は既に15時過ぎ。今からダイヤモンドシティに向かうとすると、まっすぐ歩いても着く頃は夜半過ぎといったところか。長い旅になるな。
「なら急いだほうがいいな。聞き込みするなら早い方がいい。人の出入りが多い街だから余計にな」
 至極当然な事を口にしただけだが、ネイトはへぇ、と感心するような素振りで俺を見やって、
「その通りだな。急ごうか、マクレディ」
 言い捨てて小走りに走っていってしまう。突然走るなよ、と心の中で愚痴りながら俺も走り出した。

 ダイヤモンドシティ。偉大なるグリーン・ジュエル。
 かつてここら一体がマサチューセッツ州と呼ばれた州の都として栄えたのがこのコモンウェルス──ボストンと呼ばれた都市だった。今ではその影も形もなくなり、栄華を誇ったであろうビルの廃墟や残骸のみが残る中で、然程被害がなかったこの球場跡地がダイヤモンドシティとなって生まれ変わり、再びまた人を集める都市のような役割を持ってからは、周辺地域に住む者達から羨望の眼差しとともに一度は住みたい、戻りたいと言われる場所。
 現市長がフェラルを追い出してからは、差別意識が市民にも伝播し、人造人間の騒ぎも相まって人々の心はどちらかというと荒んでいる。余所者を疑い、避けたりするだけに足らず、住人同士さえも互いを疑う目つきで過ごす様は異様というより互いを監視しているぞ、という暗黙のルールに基づいたコミュニティの形成を意味しており、ただでさえ傭兵なんて身分である俺はそんな世界に馴染む筈もなく、ネイトと出会う前は殆どと言っていいほど近づかない場所だった。
 それでも数少ない回数の間に、何度か馴染みの店はできた。ダグアウト・インもその一つだ。バディム・ボブロフの出す酒は密造酒含めて現実を忘れさせてくれたからだ。──ダンカンの事も、ルーシーの事も……。
 ネイトが現れ、俺の心を悩ませていた要因が吹き飛んで消えるうちに、俺が特別な感情を抱くのは当然だったのかもしれない。憧れが恋慕に変わるのは……そういえばもうずっと、酒で現実を忘れるという行為をしていない。ネイトの存在は確実に俺を変えてくれた。だからこそ、離れたくない。……傍に居たい。
 ははっ、……そんな事が素直に口に出来るなら、こうも悶々と行き場のない感情で心を悩ませる事もないのにな。
 
 ガシャン、と重い鉄製の扉が開かれる音と共に、薄暗い店内へと通じる細長い通路に出る。
 元は球場の跡地を利用した都市と先程述べたが、このダグアウト・インはかつてこの野球場で試合を行った選手たちの控室を利用して作られた酒場だ。かつてはその控室からホームベースに出るまでの細い通路を辿って選手が入場したものらしいが、今や酒場と変貌したおかげでその通路も、現実から逃げ出せる架け橋のような役割を醸し出している。嫌な記憶や生活を忘れ、酒精で頭をぼやかすだけの世界へ誘う架け橋。辛い時こそ、そういうのに縋りたくなる。
「よぅ、あんたか」
 細い通路を抜けた先は開けたホールとなっており、その壁に向かい合うようにしてカウンターがある。その真ん中にバディムはいつも突っ立っていた。
 ネイトは何度か俺と出会う前にここに来たらしく、バディムとは顔なじみだった。彼は返事をするより片手を振って見せ、カウンターに近づく。
「俺とマクレディに密造酒をくれ」
 とっときの酒を注文され、バディムは嬉しそうにいいねぇ、とロシア語訛りの英語で返す。俺の顔をちらと見ると、「マクレディ、いい奴と組んでるじゃねぇか」と一言。
「その台詞は前にも聞いたぞ、バディム」
「知ってるさ、けどお前は旦那と組んで人が変わっただろう、少なくともさ」
 どきりと心臓が跳ね上がったが、バディムが言っているのは俺の態度とかの事であって、俺が内心秘めている事じゃない。……他人にまで言われるとは、俺は自分で思う以上に変わったのだろうか。
 などと考えてしまう俺を余所に、バディムは密造酒をグラス二つに注いで寄越す。ネイトはそれを片方つまんで、「ほら」と、俺に手で渡した。黙って受け取りしな、カウンターに背を凭れかける姿勢に身を崩す。
 バディムと向かい合う姿勢を崩さず、しばし黙って飲んでいたネイトだったが、
「なぁ、バディム、一つ聞きたい事があるんだが……こんな言葉を聞いたことはあるかな、イロ、イッカイズツ、って言葉を」
 静かに切り出した。バディムははてな、という表情を浮かべ、
「色一回ずつぅ? なんだその言葉? 謎かけか?」
 店内には俺達同様に一人で飲む者が数人、ばらばらと腰かけて黙って酒を口に運んでいる奴らしかいなかった。そんな彼らにも聞こえる程度の声量でバディムはその言葉を口にしたのだ。わざとか、と疑うほどに。
「声が大きいぞ、バディム。……ちょっとした仕事の関係でさ、誰かこの言葉の意味を知らないか、って調べてる最中なんだ」
 たしなめつつ、さすがに人が失踪した事は言わないようだ。バディムは首を振りながら思い出すような素振りを見せたが、やっぱり知らない、と言い放つ。しかしそれでは終わらず、
「俺が知らないんだ、イェフィムも恐らく知らないだろう。けどとりあえず、その言葉の意味が知る奴がいねぇか探してみるよ。それとなく聞き込みしてみるさ」
 有難い申し出だった。ネイトが礼を述べると、照れくさそうにバディムがひらひらと手を振って見せる。
「あんたにゃ何度か助けてもらったしな。少しばかりのお返しってもんだ」
「いいね、バディム。助かるよ。そんじゃ折角だし乾杯といこうじゃないか」
 すかさず俺がそう言葉を挟むと、バディムは更に相好を崩した。俺とネイトは互いに持ったグラスを掲げ、バディムは密造酒のボトルをつかんだまま、互いに静かに乾杯と言い、グラスとボトルをかち合わせる。
 チン、と艶っぽい音が静かな店内に響いた。

 それから数時間のち。
 俺とネイトはまだダグアウト・インに居た。酒場の方ではなく、イェフィムから部屋を借りたのだった。
 何で部屋を借りたのか、ネイトはこのダイヤモンドシティに居室を持っているというのに……
 俺の疑問を余所に、ネイトはイェフィムから部屋を借りた。最初こそ、酔っ払って歩けないから部屋を借りたのかと思ったが、そうではなかった。
 室内は簡素というより質素な調度品がいくつかと、シングルベッドが一つ。そんな室内に俺と二人で入ったもんだから、最初こそ変な事を考えてしまったが、室内に入ってもネイトは寝る姿勢すら見せず、黙って部屋の隅に置かれた椅子に座っただけだった。
 寝ないのか、と聞いても、
「眠いなら寝ていていいぞ。……俺はちょっと待ってみる」
「待ってみる、って、何を?」
 至極当然の質問をしたのだが、ネイトは何も言わず黙っていた。
 何も伝えられず、何をしたらいいかも分からず、所在ない俺はネイトと向かい合うようにしてベッドの端に腰を掛けた──が、この数時間の経緯ってところだ。
 夜も更けたせいで、部屋の向こうの酒場は入った時よりも一層静まり返っている。俺もネイトも、座ってからは一言も発していない。酒場は24時間営業をしているから、恐らくドアを開ければそこにはバディムがいるのはわかるが、こうも静かな四角い部屋に二人だけしかいないと、世界から取り残された感覚にすら陥る。
 静かさと、妙な緊張感に慣れてしまったのか、俺は瞼が少しずつ重くなっていった。このままベッドに横になって眠りそうだ……
 ネイトの方をちら、と見ると、俺の背後にある扉の方をじっと見ているだけで、微動だにしない。その様子は何か気配を探っている様子でもあった。一体何を待っているのだろうか?
「……ネイト、俺寝てもいいか?」
 いい加減黙っていることにうんざりしてしまい、低く小さな声でそう言うと、彼は相変わらず黙ったまま頷いて見せた。極力音を出したくない様子だった。
 睡魔には勝てそうになかったので、俺はベッドに腰かけたまま横にすとん、と身を横たえた。何を待ってるのか知らないがもういい、眠りたい──と、睡魔が意識を掻っ攫う手前。
 ネイトがはっとした表情を浮かべて音もなく立ち上がった。ん? と思うより先に彼は目をまっすぐ俺の背後に向け、何かに意識を集中している。──俺の背後。扉の……前。
 途端、生存本能が体中にアラートを発した。起きろ! とばかりに俺はベッドから身を起こし、護身用にと右足に括っている10mmピストルをホルスターから引き抜く。ネイトはというと黙ったまま、武装はせずじっと身を構えていた。
 じゃりっ、と、床と靴が擦れあう音とともに、扉の向こう側から、扉と床の僅かな隙間を滑らせるようにしてすっ、と何かが室内に差し込まれる。そのまま足音一つ立てず。気配は去っていくのが分かった。
 完全に気配が消えると、ネイトも俺もほぼ同時にほっ、と息を吐く。まるでそれまでの間息を止めていたかのように。
「……これがあんたの言ってた“待ってみる”の意味か?」
 10mmピストルをホルスターに戻し、小声でネイトにそう伝える。困ったような彼の表情。
「いや、……まさかこうも早く来るとは思わなかったんだが……とりあえず何が差し込まれたのか見てみよう」
 部屋を横切り、床にある紙切れのようなものをネイトが手に取って中身を改める。……そのまま彼は黙って扉を開けた。勿論、誰の姿もない。酒場は既に人影がなく、バディムはカウンターに肘をついて頭をこくり、こくりと揺らしていた。
 開けた扉をぱたりと閉じてから、ネイトは困ったような表情を浮かべ、俺を見た。
「マクレディ、眠れなくなりそうだが……大丈夫か?」
「え? 眠れなくなりそうって、どういう……」
 俺の返事よりも先に、ネイトが差し込まれた紙の表側を俺に向けた。

“知りたければセンターフィールドに来い”


-------------------------------------
  前回回り道どっさりフラグびっしりと言いましたが実際そうなりそうですね。
 どうもこんばんわ。前回に引き続き第二章です。二章目というのもあって割と長いです。
 本当はもう少し話を進めたところで区切ろうと思いましたが、うまくいかずこうなりました・・(汗
 
 漫画では中の人の画力が追い付かないため、ミステリ系な話になるとやっぱり小説の方に向かってしまいます。中の人はあまり文章力は上手くないですが、大体の書き方などは当時、小説家志望の友人が学校で学んだこととかを教えてもらった事もあって、状況描写と一人称視点の話しか書けません。前にもこれは書いてると思いますが。
 まぁ推理小説ばっかり読んでた時期が一時期あって、一時期小説家になりてーなあなんて思ってた時期もありました。ありました、ですよ。今は思ってませんよ。
 今迄も過去何度か、自分がプレイしたゲームを舞台にしたミステリ系小説は同人誌に出したり、Web小説として一時期はいろんな人にも読まれたりしましたけど、今は殆ど絵ばっかり描いてたので語彙力が大分低下してます。とほほ。
 なんでも継続ですね。

 まぁこの後どうなるのかっていうと、色々ありますが行きつく場所はちゃんと最初から決まってるので長くなりますけど最後までお付き合いいただけたら。
 とりあえず今週も更新が出来てよかった。前は木曜日を定期更新日としてましたけど、さすがに今はそんな余裕がないのでアレですが、毎週は目指しますので。こういうのは時期を開けると読む気が失せますからね;;

 じゃ、今回もTwitterカード用に画像を載せておきます。こういうネイト氏の目線俺は大好物ですww
 今回はマトモですよ・・

 次回もお楽しみに。
(今回のチャプタータイトルはDidoの同タイトル歌より)

拍手[1回]

PR
URL
FONT COLOR
COMMENT
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
PASS

TRACK BACK

トラックバックURLはこちら