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SkyrimとFallout4・76の二次創作メインブログです。 たまにMODの紹介も。
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05.05.19:11

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  • 05/05/19:11

06.21.22:37

Tell me(2)

※Fallout4パパマク小説です。
これは第四話(2)です。最初から読みたい場合はこの前の前の前の記事「Where is My Wished」からお読みください。


「やれやれ、一仕事完了だな。……ふぁぁ、あ~~……疲れた……」
 テンパインズの断崖に向かう途中、僅かながら仮眠を取っただけなので殆ど眠っていないに等しい。それはネイトも同じだろう。けど彼は疲れた様子など微塵も見せず、そうだな、とだけ言った。
 おや、と思う。依頼が終わったのに晴れやかな顔を浮かべてもおらず、かといって疲労困憊といった様子でもないのに、なんだか妙に態度がよそよそしい。気のせいだろうか?
「マクレディ」
 思案してる最中に呼びかけられ、思わずびくっと肩を震わせてしまった。
「な、……なんだ?」
 ネイトは足を止め、こちらに向き直る。いつもと変わらない表情。……でも何だか、何処かがおかしい。何かを思いつめたような……
「少し、寄り道してもいいか?」
 なんだ、サンクチュアリに帰る前に寄りたい場所があるのか。拍子抜けした。
「……ああ、いいぜ。何処に向かうんだ?」
 何の気なしに聞いたのだが、ネイトは俺の質問には答えず、再び前に向き直って歩き出した。何だよ、無視って……。
 明らかに態度がおかしいネイトを追って、俺は道なき木々の間を歩いていく。そのまま山を下りると、ネイトはサンクチュアリとは反対方向の南の方角に向かって歩き出した。
 かつては電車が通っていた路線跡を歩いていくつもりらしい。ベッドフォード駅の駅舎を通過し、そのまま線路伝いに歩いていく。今では電車そのものが走っていないため、線路を歩いても咎める者は誰も居ない。
 何処まで行くのか分からないが、ついて行けばわかるし、大方何か足りないジャンク素材を探してから帰るつもりなんだろう。太陽は登り始めたばかりだし、時間はたっぷりあった。
 
 そのまま線路を通っていくのかと思いきや、線路から逸れ、高速道路の高架下を歩き始め、レキシントンを通過し──バンカーヒル近くのチャールズ川沿いの幹線道路に出る。思いの外歩かされるな、行きたい場所はバンカーヒルか、それともグッドネイバーか? と考えていると、ネイトはふらりと、幹線道路から更に川沿いに向けて作られた道路の一角で足を止めた。
「ん? 一休みするのか?」
 そう声を掛けるも、ネイトは「いや……」とだけ短く答えただけだった。明らかに態度がおかしい。一体どうしたって言うんだろう。夜明け過ぎてからテンパインズの断崖を降りてから既に数時間、既に日はてっぺんを過ぎて西側に傾きつつある。
 ネイトと俺が立っている場所は、所謂遊歩道のようなものだった。幹線道路と切り離されて一部作られたその道は、川沿いを歩く人達の為に解放されていたのだろう。戦前はさぞかしきれいな景色が見れたのだろうが、核弾頭が落とされたせいで何かが狂っちまったらしく、遊歩道の殆どが海水と淡水が混じったヘドロが浮く水が流れ込んできている。遊歩道は川沿いに延々と続いており、その大半が水没している。遠くにはこちらに気付いていないマイアラークが一匹、悠々と水の中を歩いているのが見えた。
 あまり服を汚したくないため、ネイトは比較的濡れていない遊歩道の一角で立ち止まり、そのまま手すりに凭れかかった。
「……昔さ、まだ戦前の話。よくここで、あっち側……ダイヤモンドシティの方だな、ボストンの街中を見るのが好きだった。
 その頃はここも夕方になると、夜景を楽しむためにやってくる人もいたんだ。心なしか海風も入ってきてさ。……好きな場所だった」
 何を話すのかと思えば、戦前の人の暮らしぶりをただ講釈するためにこんな所にやってきたのだろうか。どうもおかしい。……おかしい事ばかりだ。ヒューイを居住地に送り返してからネイトはずっとおかしいままだ。
「……それで? わざわざここに寄り道したかったって事か?」
「そうだな。……なんか、上手く言えなくて、言える場所を探してたのかもしれない。そう考えてたら、ここがいいかなって」
 ……ますます訳が分からない。
「なぁ、奥歯にものが挟まったような言い方はやめてくれ。俺は頭がそんなに良くないから、回りくどい言い方されると苛々してくる」
「本当に?」
 えっ、と、突然問いただされたせいで思わず言葉が詰まる。ネイトは何が言いたいのだろう……まるで俺の事を見透かしているような、心の奥底に潜む──感情にまで。
「あ、いや……ごめん。そんな言い方をするつもりじゃなかった。……卑怯だよな、これじゃ」
「卑怯? 卑怯ってなんだよ」
 言葉尻を捉えて聞き返すと、明らかにネイトの態度が変わった。俺から目を逸らし、明らかに狼狽している。……が、そんな態度を払い落とすかの如く、彼はふぅ、と一つ深呼吸をして見せ──懐から何かを取り出した。
「……これ」
 よく見ると、紙切れのようだった。四角く折られていはいるものの、紙全体にいくつもの皺が作られている。──まるで、そう、折られる前はくしゃくしゃに丸められていたみたいに……?!
 嫌な予感がし、ばっと、ダスターコートのポケットをまさぐって中に入っていた紙切れを取り出す。震える手で中を開くと──
「……“人造の真実”?!」
 開いて出てきたのは俺が書いた散文詩のような、独白のようなそれではなく、パブリック・オカレンシズの新聞だった。紙の上部にはでかでかと人造の真実というタイトルが記され、そこから下は新聞記者パイパー・ライトの記事が整然と記されてあった。
 わなわなとその紙を見る俺を余所に、
「すまない。……お前の態度がどうしても気になってしまって。悪い事をした……と思ってる」
 取り成すように言うネイトの声が、最終通告を呼びかけるMr.ガッツィーの声のように聞こえてくる。……終わりだ。こんな事ならあんな紙、さっさとネイトの目が届かない場所で破いて捨てるべきだった。……なんて馬鹿なんだ。ネイトは俺の真意を知ってて、ダイヤモンドシティからここまで……。
 もうここには居られない。俺は握りしめるように掴んでいた新聞紙を地面に捨て、じり、じり、と数歩後退りした。自分を否定されたり、拒否される前にここから逃げ出したかった。
 俺の態度にネイトは気付いたのか、はっとした表情を浮かべ、
「待ってくれマクレディ。……待つんだ!」
 今にも逃げ出そうとする俺の腕を彼の手が掴む。
「俺が悪かった、だからもう俺の事は放っておいてくれ。あんたの目の前には金輪際姿を現さないから──」
 顔が真っ赤だったのは分かる。でももうどういう顔で彼を見たらいいのか分からなくて、俺は目を瞑ったまま、もう片方の手まで掴まれまいと必死で動かした。これじゃ傍から見れば駄々っ子のようだ。
「だから待てって! 俺の話を聞いてくれ!」
 暴れる俺のもう片方の手を掴み、ぐい、と互いに両手で悪手するかのような格好になった。振りほどこうにも彼の方が力が強いのは分かっているから、もうこうなると従うしかない。瞑っていた目を恐る恐る開けると、思った以上にネイトとの距離が近かった。俺より僅かばかり身長が高いため、目を見るにはほんの少し上目遣いで見る格好になってしまう。
「先ず、謝らせてくれ。……黙って紙をすり替えた事と、もう一つ……言わなきゃいけないのは俺の方だったのに、卑怯な手を使ってしまった事を」
 謝る? つまり……俺の気持ちには応えられないという意味だろうか。そう思うとずん、と心に重石が乗っかったように痛みを感じた。
「……いいんだ。忘れてくれないか。もう終わりにしよう。それがいい」
 そう言うと、ネイトはきょとんとした顔を浮かべ、
「何か勘違いしてやしないか? マクレディ? ……まぁ、いいさ。黙って聞いてくれればそれでいい。
 謝りたい事ってのは、お前の隠していたこれ……紙を返さなかった事だ。あまりにもお前が変に隠したがるもんだからさ、一体何が書いてあるんだろう、って気になって……
 あの勝負の時に出してくれって言ったのも、あわよくばその中身を見せてもらおうと思って拝借した訳で……最初は中身を改めたら返すつもりだった。
 俺がスリを得意とするのは知ってるだろ? だから隙を見計らって、お前のダスターコートのポケットに再び突っ込んでやればそれでいい……そう思ってたんだ。
 ──中身を読む迄は」
 ふっ、と力を込めて握っていた俺の両手を解放するネイト。握りしめて再度、くしゃくしゃになったそれを丁寧に皺を伸ばし、……再び自分の懐に入れてしまった。……どうして返そうとしないんだ? 普通なら気色悪いと言って突っ返してもおかしくないのに……
「……分かった。で、もう一つって……」
 まともに顔を見られないため、自然と目線は地面へと移っていた。握られていた手を揉み手のようにさすってる事が、今の自分に出来る精一杯だった。
 聞かれた当のネイトは、うん……と言いながら言い淀んでいる。何でも言いたい事はずばずば言う癖に、この期に及んで焦らしてくるなんて、狡い。
「そうだな、俺は狡い奴……だよな」
 心の中で呟いたつもりが口に出てしまったらしい。しまった、と思って慌てて口を押えつつネイトを見ると、……笑っていた。心なしか、ほんの少し頬が赤らんでる気がする。
「……分かってる。けど、どうしても言えなかった。お前のこれが無かったら、きっとこのまま平行線のままで終わってたかもしれない。──お前の気持ちを知った上で俺の気持ちを伝えるのは本当、狡いやり方だよな。
 でも言えなかった。言い出せなかった、といった方がいいかな……言わなければこのまま居られるって、お前は愚痴を言いながらも俺についてきてくれて、俺と旅を同行してくれて……そういう日々を失いたくはなかったんだ。
 マクレディはよく別の奴と行けよ、って言ってるけど、いつもそういう、余計な一言を言うだけで黙ってついてくるのが嬉しかった。そんな関係で居られればいいって……さっきみたく、本心を伝えれば逃げてしまうかもしれないって、それが怖かった。俺を拒否される事が怖かったんだ」
 ……………嘘、だろ。
 ネイトの顔を凝視する。彼は俺の気持ちを知って尚、俺の事を拒否するどころか、俺と同じ事を考えていた。……気持ちを伝えて、拒否されるのを恐れていた───
 俺の目線に気付き、ネイトがふ、と笑う。そして躊躇いも言い淀むこともせず、きっぱりと言った。
「マクレディの気持ちを知った事で言う勇気を貰った、なんて言うのは卑怯だ。それでも、俺は伝えたい。俺が言うべき事を、マクレディから言わせる訳にはいかないから。
──だから俺は自分の気持ちを伝えるよ。マクレディ、……好きだ」
 ひっ、と、情けない声が口から漏れ出る。……お、おおお、俺はこ、これに対してどう、どう答えればいいんだ?? 
 俺も好きだと伝えればいいじゃないか、と頭の中の何処かから声がする。……そう言えるならどんなに気持ちがいいか。
 でも俺は捻くれ屋で、口が悪くて、一言何か言わなければ気が済まなくて。
 いつもならそんな言葉がぽんぽん頭に浮かぶより先に口からついて出てくるのに、どうしてだろう、今の俺は言葉出すどころか、出す言葉すら頭に浮かばない。頭がオーバーヒートしてしまったのかもしれない。そういえば、妙に顔があったかいよな。
 ……顔中真っ赤になっているのが嫌でも分かった。
 ネイトはじっと俺の方を見ていたが、どうやらとうとう堪えきれなくなったらしく、
「……何か言えよ」
 とだけぽつりと言った。
 その瞬間、奇妙な事に自分の全身を覆っていた緊張の糸が緩んだ。
 どうしてだろう、でもきっと、俺はこう確信したんだ。……目の前に立っているミニッツメンの将軍はすごい力を持っている。誰からも尊敬され、弱き者の味方として連邦中を駆け巡っている。
 その時のネイトと、今のネイトは大違いだ。でも多分きっと、今の彼が素の彼自身なのだろう。自分の好きな場所まで寄り道をしてまで、俺に伝えたかった言葉。きっとそれは勇気が欲しかったから。……自分の気持ちを素直に伝えるって簡単な事じゃない。ましてこんな荒れた世界で、人を信じ、愛するって並大抵の事じゃ出来ないのかもしれない。
 でも俺はネイトと会って、彼を好きになった。最初は憧れから、やがてそれが好意に変わるのは自然な事……だったのかな。同性じゃなければもっとこんな回りくどいやり方じゃなくて、ストレートにゴールインできただろう。
 ……回りくどくたっていい。でも、相手はちゃんと俺の顔を見て伝えてくれた。
 俺もその思いに応えなくては。
「俺も……ネイトが好きだ」
 それだけで精一杯だった。
 近づいて、ネイトは黙って背中に手を回して抱きしめてきた。こんな所、誰かに見られたら大変じゃないかと思ったが……戦前と違い、今はこの遊歩道を歩く人の姿はなかった。こちらに気付かない距離の先で、カチカチと鋏を鳴らしながら歩いているマイアラークを除いて。
 ネイトの身体は熱い位に熱を帯びていた。微かに汗の匂いもする。そんな彼の身体を間近で感じられ、このまま硬直してしまうんじゃないかと思ったが、彼は抱きしめていた身体を戻し、右手で俺の頬を撫でるようにしてほんの少し、上へと持ち上げた。
 ……何をしようとしてるか言葉が無くてもわかる。自然と目を閉じ、その感触が口に触れた時。心の中で思った──あれ、捨てなくてよかったな、と。

 結局サンクチュアリに戻ったのは翌日になってからで、ネイトはプレストンに顛末を伝える事で一連の失踪事件は幕を閉じた。
 プレストンは感謝を述べたが、挨拶もそこそこにネイトは俺を連れ立ってすぐにサンクチュアリを発った。前日の夜に……眠れたとはいえ、戻ってきてすぐとんぼ返りするとは思っていなかったため、少々面食らってしまう。
「今度は何処に行くんだよ」
「そうだな、まだ行ってない西の方かな。……西の方にも居住地になりそうな土地があるって聞いてるんだ、そこを開拓するまでだから、一、二か月サンクチュアリを留守する事になるだろうが……いいか?」
 分かってる癖に、ネイトは笑みを浮かべながら俺を見る。はいはい、と俺は疲れたような返事をして見せた。勿論それはポーズであって、彼は俺の本心を知っている。
 歩きながらちらりとネイトを見ると、彼は俺の目線に気付いてにたり、と気味の悪い笑みを浮かべた。まるでそれは仕事とは違う何かを期待しているような笑みで、俺はふい、と顔を背ける。
 先の事は分からない。……でも俺はもう一度、ルーシーと同じように、互いに思いを交わせる相手が出来た。だから俺はネイトについて行く。どんな事があろうと、彼が俺を必要とする限り。
「ああ、そうだ。これ、返すんだったな」
 突如ネイトが言いながら懐をごそごそとし始める。返す? って思ったがそれはすぐわかった。……あの紙切れ。
「……今度は本物だろうな」
「まだ疑ってるのか? なら、ちゃんと中身を確かめてみろ。互いの気持ちは分かってるんだから今更隠すこともないだろうし」
 ネイトはそう言って、俺に紙切れを押しつけると先に歩き出した。……何だよあの態度。そりゃ確かに互いの気持ちは分かったし、ネイトは優しかった……けど、今迄返さないでおいて、押しつけるように返さなくたっていいだろ。
 けど、とりあえず今回は間違ってないよな。そう思いながら四つ折りにされたくしゃくしゃの紙を広げ、中身を改める。
 ……確かに俺が書いたアレだった。……あれ? でも、何か……
 最後の方に何かが書き足されている。ネイトが書いたのか、と思いつつその一文を読んで──黙って紙を折りたたみ、再びダスターコートのポケットに突っ込んだ。
 顔を見られないようにわざと軍用帽子を目深に被り、先を歩くネイトに向かって駆け出す。おそらく彼の顔だって同じだ──真っ赤に違いない。
 俺の書いた文章の下には、重なるようにしてこう短く記されてあった。
 “──俺も好きだよ”と。


 あとがきは別記事に載せます。とりあえず、お疲れさまでした。

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