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SkyrimとFallout4・76の二次創作メインブログです。 たまにMODの紹介も。
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05.19.11:21

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  • 05/19/11:21

05.01.23:55

霽月


 ……夕闇が人気のない都市部を覆っていく。
 大地に近づくにつれ、背の低い建物から影を落とし、やがて連邦全体がすっぽりと影に包まれると、今度は音もなく空が東からインクを落としたかのようにじわじわと赤がね色から藍色、そして何もか塗り潰す黒へと変貌を遂げていく。
 逢魔が時──と、昔の人はこの時間帯を指しては口にしたらしい。赤がね色が夜の帳に包まれるこの時間、化け物が現れては人を連れ去ってしまう──と。
 でも恐らく、その化け物は言葉通りの化け物ではあるまい。ヒトの姿をした人間だ……いつからだろう、そう確信したのは。

「そろそろ何処かで宿を取った方がよさそうだな、マクレディ」
 俺がそう声をかけると、彼は何となく心ここにあらずだったようで、僅かの後、ああと声を返しつつ、
「そうだな……ここからだとバンカーヒルが近い。知ってるか? キャラバンが立ち寄る交易所みたいなものさ。宿もあるからそこがいいだろう。……部屋が空いてなくても俺に文句を言うんじゃないぞ」
 バンカーヒル。一度だけ立ち寄ったことがある、レイルロードでの仕事の最中だった。追われている人造人間を匿うため、一時預かっていると交渉しに来たんだったか。
 マクレディは俺より長く──当たり前っちゃ当たり前なのだが──連邦を根城に活動していたためか、俺の知らない事や地域の事などあれこれ道中教えてくれたりもして、すっかり頼るようになってしまった。彼は最初こそ柄の悪い感を醸し出させていたものの、内情や素性を知るにつれ信頼を寄せるようになっていったのは事実で、彼もまた自分の戦闘能力の高さと、自身の息子を助ける薬をメッド・テックから手に入れて以降、俺に向ける視線が刺々しかった頃と一変しているは明らかだった。
「ああ、わかっているさ。部屋がなくてもいいさ、今夜はそこに泊まろう。とりあえず衣服はやむないとしても、せめて身体だけでも拭きたいもんだな」
 つい先ほどまでフェラル・グールと戦って──マクレディがスニーク能力がからきしだというのを知ったのは彼を雇うようになってすぐだ──いたため、浴びたくもない体液をまともに浴びてしまっていた……RADを含んだ体液をさっさと取り除かないと、自らもフェラルになりそうであまりいい気持ちがしない。まぁ、体液程度で変質する事はないのだが。

 バンカーヒルは先程マクレディが言ったように連邦全域を旅するキャラバンの本拠地というだけあって、施設内の一角には荷物を下ろされ身軽になったバラモンが水や餌を食む姿が見受けられるし、店先には品物を仕入れようとするキャラバン隊の者達が談笑する姿がうかがえる。店の数も品物の数もそこそこあるし、何より都会の真ん中にある記念塔を囲むようにして覆われている高い塀、そして電気の灯す明かりを見て集まる者達も多い。チャールズタウンという川沿いに近いボストンの一帯を指すその地名の中で、唯一人の行きかう場所だからだろうか。
 敷地内に入るだけでほっとする。すっかり辺りは暗闇に覆われた中、誰もいない都市部の廃墟を徘徊するのはあまり気持ちのいいものではない。自分がたとえどんなに強かろうと、だ。
 ジョー・サボルディが経営する休憩所にまっすぐ進み、息子のトニーに声をかけると、ちょうど一部屋だけ空いているとのこと。……一部屋だけ?
「もう一人分のベッドはないのか?」
 食い下がってみたものの、無い袖は振れないと断られてしまった。困ったな、と思った矢先、
「ジュリアン、俺のことは気にしなくていいから」
 気を遣ったようにマクレディが言ってくる。余計な心配をかけさせまいとしたのに裏目に出てしまったらしい。
「交代で寝るしかなさそうだな」
 言いながら俺はトニーに10キャップを寄越す。彼はうれしそうにそれを受け取り、懐の財布に入れ込んだ。
 借りた部屋といっても、親父が仕切る休憩所の上にしつらえた、小屋というのはお世辞にも程がある四角く切り取られた瑣末な屋内にマットレスが敷かれた程度の部屋だった。別々の部屋とは一応、申し訳程度の寄せ集めの木々で作られた壁で区切られているとはいえ、プライバシーも何もあったものではない。隙間風は入り込む上に扉すらないのだ。
 とはいえ文句が言える程の身分でもなければ状況でもないため、とりあえず荷物を置くだけおいて、貴重品──といっても最低限の護身用の銃器とキャップだが──だけ持ち、部屋を出た。マクレディは階下で突っ立ったままこちらを待っていたが、俺は黙って通り過ぎ、ジョーからビール瓶を二つ買い込んで一つを彼に投げて寄越す。
「いいのか? ……いつも悪いな」
 一応遠慮するそぶりを見せるだけましかもしれない。雇い始めた頃はそんな態度すらおくびに出さなかったし。
 ジョーの店は混雑していたため、俺とマクレディは記念塔の近くまでぶらぶらと歩き、めいめい壁に寄りかかってビール瓶を口に運ぶ。
 ……しばし、互いに黙ったまま、喉を潤していたが、その沈黙を破ったのはマクレディの方からだった。
「俺さ、時々……思うんだ」
「ん? 何をだ」
 傾けていたビール瓶を口から離して傍らを見る。マクレディは視線を右手に持つ瓶の口に向けながら、思ったことを考えながら口に出している様子だった。
「最初はそんなこと思ってはいなかったんだ。……ああ、最初に断っておくが、前に話した、俺の知ってる奴と勘違いした奴の事じゃないよ。確かに似てるけど、あんたと彼は違うってはっきり分かったし。
 その話じゃないんだ……俺の予想を超えていたのさ。あんたの強さは想像以上だった。まさか俺以上に射撃の腕が強い奴……だなんて」
 今更お世辞か? と笑ってすごしてやろうかと思ったが、マクレディの口のほうが早かった。
「それだけじゃない。あんたの性格や人間性も他とは格別だって事さ。人助けをする事も厭わない、……そしてあんたのその性格に俺も頼っちまった。息子の病気を治す薬を見つける手立てまで探してくれて──」
「マクレディ、それに関してはあんたからは十分すぎるほどお礼を言われたし、今更またお礼を言われる事じゃないよ。俺はただ、俺みたいな境遇をこれ以上増やしたくはないと……」
「だから余計に思うのさ」やや強めの口調でそう言うと、マクレディは視線をビール瓶から自分にまっすぐ向けた。青い瞳はじっと俺のそれを見据え、ぶれることはない。
 ……彼の態度に瞬間、言葉を詰まらせたものの、
「……思うって?」
 とだけ言い返すと、彼の表情はふっと、寂しげなそれに変わった。
「なぁ、ジュリアン。……こんな奴でもいいのか?」
 は? こんな奴って?
 問いかけられた事に対して答えられないでいると、マクレディが再び視線を落とし、
「……俺がかつてガンナーと行動を共にしていたのは話しただろ、ウィンロックとバーンズ。……彼らはあんたの協力もあって俺達が倒したけど、それじゃない。問題はそれじゃないんだ」
 じゃあ何が問題だと言うのだろう。俺は黙っていると、促されていると思ったのか、マクレディは再び口を開いた。
「俺がガンナーだった頃を知る奴が俺を見て、俺と行動を共にしてくれているあんたを見てどう思うか、……分かるか? そこであんたの評判が落ちるんだ。あんたが人助けをやってる側から、俺がいるだけであんたのやってる事を俺が無駄にしているかもしれないって事実を。気付いていない訳じゃないだろう?」
 ちらっ、とこちらを一瞥するかのように視線を向けたマクレディだったが、すぐに申し訳なさそうに視線を元に戻し、「……だから時々思うんだ。俺みたいな奴があんたと一緒にいてはいけない、ってさ」
 彼は意を決したように言ってみせた様子だったが、俺からすれば寝耳に水同然の話で、ぽかんとしていた。……そんな態度を彼は悪い様に受け取ったらしく、
「すまない。……本来なら、あんたに助けられるなんてされてはいけなかったんだ。もし過去に戻れるならガンナーに入ろうとする自分に止めとけ、って言ってやりたいぜ、ジュリアンと会う事を知ってたらこんな事──」
「ちょ、ちょっと待て……マクレディ。勝手に話を完結させるな」
 このままじゃ勝手に別れを切り出されかねないと、慌てて口を挟んだ。マクレディは言葉を切って、つと遠慮がちに顔をこちらに向ける。
「俺の人間性がどうこうとか、だからお前が俺と一緒にいてはいけないとか、勝手に思わないでくれ。俺はマクレディがどんなにひどい口の利き方をしようが、人間性が悪かろうが、そんなの一向に気にしない。あんたにキャップを払って雇ったのは俺だ。……まぁその金はお前が返してはくれたけど。──それに」
 一気にまくし立てるのはあまり得意でないため、俺は一旦口を切ってビールを一気に流し込む。酒精が頭を駆け巡り、饒舌にさせてくれるのを知っていてのことだ。
「……俺はお前を頼りにしている。マクレディ。
 俺のほうがお前より強いだって? そんな訳ないだろ。俺は目覚めてまだ半年足らずの奴だぜ、そんな奴がお前に勝てる筈ないだろうが。人間性が悪いって? 俺は知ってるんだぞ、グッドネイバーのデイジーが言ってた、お前はいい奴だって、ただ人に誤解されがちだけど、と──
 あんたは不器用だ。けど不器用なりに必死になって俺に助けを求めたんだ。その結果、一人じゃ無理なことを俺とやってのけた。
 何で手を貸したのかって、マクレディを信頼しているからだ。そう言えば……筋が通るだろう」
 彼の面倒を見てあげて。悪い人じゃない。ただ、人を頼るのが苦手なの、恐らくこれまでの人生の中で人を頼るという選択肢を持てない環境に居たせいだと思うわ、あんたなら彼を変えられるんじゃないかしら──
 グッドネイバーで店を構えるデイジーがそう言ってたのを思い出す。恐らく彼は酷く──傷つくのを恐れて生きてきたのだ。だから今もこうして、悪いのは自分だから、と傷つかないように自らを守る布石を敷いて俺に言ってきた。
 でもそうじゃない。と俺は言いたい。彼の人生の中で頼る事、それは甘えだと思って生きてきたのだろう。でも人間どのみち一人では生きながらえない、ましてこんな殺伐としたウェイストランドでは、弱味を握られるのは自らの死を招く要因にもなりかねないのだから。
 人々が俺やミニッツメンを頼るたび、マクレディがいつも怪訝そうな表情を浮かべていたのを思い出す。恐らく内心こう思っていたのだろう──なぜ頼るんだ。弱い奴なら受け入れるのもやむを得ないだろう、と。でもそれを受け入れていてはいつまでたってもこの連邦は殺伐としたままだ。
 彼を変えるのは、即ちこの連邦を変えていくのと同じ事──それが分かったから、俺はマクレディと行動を共にし続けると決めた。いずれ彼が気付き、頼られる時が来た際に共倒れしないようにと。
「そ、……そんな事、」
 彼は動揺しているらしく、頬を赤く染めてぷい、と背を向けてしまった。見掛けによらず照れ屋らしい。案外かわいい性格しているんだな。
「ま、そういうことだから。勝手に俺の目の前から逃げ出したりするんじゃねぇぞ、マクレディ。……さて、ビールも尽きたしそろそろ寝るか」
 瓶は素材として再利用するために俺は空になったそれを手にしたまま、借りた部屋のほうへと歩いていくとマクレディも黙って後をついてくるので内心胸をなでおろした。
 さっきまで俺に背を向けてたくせに、と思うとちょっとからかいたくなってしまうのが俺の悪い性格で──
「そうだマクレディ、一緒に寝ないか? 一人分のマットレスに二人ってのは密着状態になるけど、案外寝心地はいいかもしれないぜ?」
 踵でくるりとターンし、後を追うマクレディの方を向いて提案を述べると、彼はどきっとした表情を浮かべ──次の瞬間顔を紅潮させ、
「い、い、いや、俺はいいよ、だ、大丈夫だから。寝てる間に俺があんたから離れたりするとか思ってるのか? それを危惧して言ってるんだろ? もうさっきみたいな事は言わないよ、約束する」
 取り成すように弁明する彼の姿がおかしくて、俺は笑ってしまった。はは、と笑う声に、辺りにいる居住地の住人やキャラバンの者達が俺達にいっせいに視線を向けた。
 マクレディは辺りの視線を一手に引き受けてしまってるのに気付いて、顔を紅潮させながら困ったような表情を浮かべつつ、しかし口元は笑っていた。
 大丈夫だ、マクレディ。世界はあんたが思うほど、刺々しいものじゃないよ。
 笑い声は裸電球の灯るバンカーヒルを囲む廃墟のビルや高速道路の残骸まで響き──その上を、名も知らぬ星々が瞬きながら闇に包まれた連邦を見下ろしていた。
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「俺(わたし)の知ってるマクレディじゃない!!」
 という声が聞こえてきそうな話を書いてしまった(笑)
 まぁ自分もまさかこんな展開になるとは思ってなかったので・・w

 マクレディって時々話しているというんです、
「俺があんたにとって一緒に居ていい奴じゃないってのは分かる」みたいなことを(正確になんといってるかは忘れましたw
 んな訳ねーだろw と思って書いたのがこれですw
 結構彼は自虐的な面もあるのかなー なんて思ったりして。

 殺伐とした世界で人を信じて頼るというのは綺麗事、みたいな感じが漂うこの連邦の中でマクレディがどうやって生き抜いてきたかは想像するしかないですが、もともと市長だったためプライドが高く、けどそれを捨てきれず、頼る事をせずに息子に薬を与えようとメッドテックに一度は一人で向かうも歯が立たず、そこで自分を雇った奴が自分以上の腕前だったから初めて自分から頭を下げて息子を助けてくれと懇願した、と思うと彼が恐らく今まで頼られることはあれど、自分から人を頼るということはしなかったんじゃないかなーと思うのですよ。

 だから111のパパ(ジュリアン)に頼るのは相当勇気がいったんじゃないかな。彼の人生の中で人に頭下げて者を頼むってなさそうでしたから。
 けどそれをしたことで彼も変わったのだから、やはり人を変えるのはロマンス・・じゃない、愛なのだなーと(爆笑)

 そういうことが言いたいだけのお話でした。
 とりあえずマクレディはいいぞ。といっておくにとどめてこの場を終わらせます。
 ではまた次回の更新日に。






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