忍者ブログ

SkyrimとFallout4・76の二次創作メインブログです。 たまにMODの紹介も。
02 2024/03 1 23 4 5 6 7 8 910 11 12 13 14 15 1617 18 19 20 21 22 2324 25 26 27 28 29 3031 04

03.29.14:02

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

  • 03/29/14:02

04.16.23:18

One day Whiterun

「そうかそうか、やっと身を固める決心がついたのか。にしても……やはり一年前、お前に言ったとおりじゃないか、従士ジュリアン。あの時お前は精一杯否定しておったが……まんざらでもなかったな?」
 言いながら──俺の杯にワインを並々たっぷり注いでくる。今日はあまり飲むつもりはなかったのだが……予想外な事になっちまったな、こりゃ。
 俺のグラスに目一杯まで注ぎ終えると、今度はセラーナに向かっていかがかな、と聞いてくる。訊かれた彼女は首を僅かに振って──心なしか、グラスをバルグルーフ首長から遠ざけたのを俺は見逃さなかった。
 ここはドラゴンズリーチ内、謁見の間。いつもはここで首長と謁見し、意見を交わす程度でしか使っていない場所だ。謁見を申し出る者を囲むように長テーブルが置かれ、室内の一番奥、ホワイトランの紋章である白馬を模したそれが描かれたタペストリーが、掲げられてある下に首長の椅子が置かれてあった。周りには首長を守るべく控えている衛兵、執政が見受けられる。
 そんな厳かな場所に俺は居た。俺だけではない。首長バルグルーフ、そしてセラーナ。執政や衛兵も勿論居るが、この時だけはいつもと違っていた。……いや、執政や衛兵はいつもと変わらない。変わっているのは俺達と首長だけだ。
 俺達は謁見の間におかれてある長テーブルの一角に居た。その一角だけ、飲み干したワインの空瓶がいくつか転がっており、テーブルには豪華な料理……が置かれていた跡しか残っていなかった。元々無かった訳ではなく、俺達がたいらげた訳だが。──何故ここで歓談をしているかって? 俺だってそんな事予想だにしていなかった。何処で聞きつけたのか、ホワイトランに着いてすぐに衛兵の一人が俺を呼び止めてきたのだ。
「従士ジュリアンだな? 首長バルグルーフがお前を呼んでいる。すぐにドラゴンズリーチに来い」
 面食らった。いや、今まで何度か呼ばれた事はあるのだが、到着してすぐに呼ばれるなんて気味が悪い──そう思ったのも事実で。
そのため殆ど城下町で挨拶を交わすことなくドラゴンズリーチに赴いたら、待っていたのは先程聞いたことと殆ど同じ事──即ち、結婚した事を祝うための招聘であった。ということだ。

「……ああ、あの時って……あれか、蒔種の月にやった……」
 一年前。──セラーナと久しぶりにホワイトランに戻った際、同じように首長に呼ばれて赴いたら、農家の種蒔きの儀式に出ろ、というものだった。その時セラーナも一緒に連れて行った時の事を言っているのだろう。並々と注がれたワインを揺らさないようそっと口に近づけ、一気に半分ほど口に含む。ジャズベイ・ブドウの独特の酸味が口いっぱいに広がった。
「ああそうだ。あの時ジュリアン、お前は力いっぱい否定してたな、彼女は旅の連れだ、と。力いっぱい否定する態度はおかしいと思ったもんだったが……やはりセラーナ殿に気があったのだな?」
 無い、とは言い切れない。でもあの時はまだ俺自身セラーナへの好意なんて全く気づいてはいなかったが。……周りが冷やかすだけで。
「まぁ、……無かった、とは言い切れないですね」
 首長の手前、口調は酔っても丁寧語は忘れない。
「そうだろう? 私は思ったものだ、いずれ二人は結婚するだろう、って──それが本当になってしまった。だから私はジュリアン、お前を招聘したのだ。わがホワイトランの従士としてこんなに喜ぶべき事はない、とな」
 酒を一気に呷って、がははと威勢よく笑う。珍しい──というより見た事ない姿だった。こうも陽気に笑う人だったのか、と。
 と、すぐに真顔に戻ったバルグルーフが今度はセラーナの方を見据え、とんでもない事を口に出した。
「セラーナ殿は、従士ジュリアンの何処に惹かれたのかな?」
 どきっとする事をさらりと口に出すとは、首長というのは恐ろしい──って何をいきなり聞き出すんだ。
「えっ、私ですの?」
 突如話を振られたセラーナは瞬間、きょとんとした表情を浮かべ──すぐに気を取り直し、言葉の意味を気づくやいなや思案するような、照れ臭いような、顔を俯かせてしまった。
「………何処、に惹かれたか……」
 鸚鵡返しに反芻しながら考え込む彼女を他所に、俺は内心どきどきしていた。セラーナが何処に惹かれたか俺も興味があったのだ。……そういう俺はどうなんだって? 
「そう、ですわね……彼の謙虚さ、ってところでしょうか」
 謙虚さ? わが耳を疑った。俺……謙虚なところなんてあったっけ?
 それは首長も同様だったようで、「謙虚さ? たとえばどんな?」と聞き返してきた。
「たとえば、……彼はドヴァーキンと呼ばれるのを嫌いますわ、ドラゴンボーンと呼ばれるのも。自分が特別扱いされるのが嫌いなようですのよ。そういう所が謙虚だと思ったのですわ。違いまして?」
 セラーナの問いは俺達には聞こえなかった。何故なら彼女の返答を聞き終わる前に、俺と首長は腹を抱えて笑ってしまっていたからだ。
「は、はははははっ! ……そうかそうか、そういう謙虚さか……! 確かに我がホワイトランの従士殿はそういうきらいがあるように見えるな! しかしそれが彼女の心を靡かせたのだから、喜ぶべきか、なあ、従士殿!」
 笑いながらばんばん俺の肩を叩く。先日フルダにも叩かれたぞ、そこ……
「そ、そうですね……はは、嬉しいやら情けないやら……」
 首長はよほど笑いのつぼにハマったのか、笑いが止まらない様子だった。セラーナは何故笑っているのか分からないらしくきょとんとしている。……全く、俺にはもったいない位よく出来てるよ、セラーナ。
「首長、そろそろ就寝の時間です、夜遅いですし今日はここらへんでお開きにしていただかないと」
 と、いつの間にか執政のプロベンタス・アヴェニッチが首長の傍らに近づいて小声で報告してきた。いつの間に移動してきたのか。……俺も少し酔っているのかもしれないな。
 時計を見れば22時過ぎ。ずいぶん長居してしまったようだった。首長に呼ばれたのは夕方過ぎだから、5時間近く居た事になる。
 笑ったことで酔いが回ったのか、眠そうに目をこするバルグルーフに挨拶をして、俺達は辞する事にした。バルグルーフは歩くにも飲みすぎたのか力が入らないらしく、執政と衛兵に肩を持ち上げられて引きずられるように自室へと引っ込んでいった。先程まで談笑が響いていた謁見の間が、急に静かになる。やたら広い室内に俺とセラーナだけが取り残されてしまった。
「……ブリーズホームで一泊するか。帰ろうぜセラーナ」

 外に出ると、ひんやりした空気に思わず身を縮む。空はすっきり晴れており、マッサーとセクンダの双子の月が漆黒の空に浮かんでいた。
「綺麗だな──」
 ソルスセイムはモロウウィンドが近く、レッドマウンテンから出てくる噴煙で殆ど星空は見えない日のが多いため、すっきり晴れた夜空なんて本当に久しぶりだった。それと同時にずいぶんあの島に長居していたんだな、と気づかされる。
「ええ、綺麗ですわね」
 セラーナも隣で呟く。寒さを感じさせないように、俺はそっと彼女の肩を抱いた。……こういう事が出来るのも彼女と結婚したからだ、そう思うと嬉しくなった。
「……ところでジュリアン」
 セラーナが唐突に聞いてくる。
「ん? 何だ?」
 見上げてた視線を空から彼女へと移す。ドラゴンズリーチ周辺を灯す松明の明かりで薄暗くても彼女の顔は判別できた。輝くような赤い瞳も。
「私、先程首長に聞かれた事、何かおかしい事言いまして? ジュリアンまで笑ってたのには意外でしたわ」
 ああ……、となるとセラーナは正直に答えたというのか? 
「……本気で俺の謙虚な所に惹かれた?」
「それは……」少し言い淀んで、「……全部、って言ったらなんか恥ずかしいじゃありませんの。まるで何も考えてないみたいで。だから……」
 何だ、全部って言ってくれてもよかったのに。と心の中で呟く。
「おかしくは無いさ。ただ……首長には意外だったんだろうな。
 世界を救った英雄が、そもそも謙虚である筈ないと思うのは常だ。それを真っ向から俺は謙虚だ、そういうのに惹かれたと言ったから、君に対しても俺に対しても、首長は相好を崩したのさ。……本来ならば俺のような人とは違う存在を疎ましく思うのは上の者としては当然なんだろうけど、俺は別に首長だ上級王だ、という椅子を欲しがってないし、セラーナはそんな謙虚な俺に惹かれたなんて言われりゃ首長はほっとしただろう。だからあんなに笑ったのさ、……おそらくな」
 そう言うと彼女は肩を竦めた。「ジュリアンが無欲なのは私が一番よく知ってましてよ。あなたはドヴァーキンであって、ドラゴンボーンでもあるのにそれを言われると逃げたくなる性分だというのも。特別扱いされるのを嫌がるというのも。
 でも私はそれが新鮮でしたわ──私の父とは正反対ですもの。王であるが故に狂気に陥った父と、英雄であるのに無欲で傭兵として生きるジュリアンはぜんぜん違いますわ。……そう思えるだけで、私は安心しますの」
 そう言って、彼女は抱いている俺の腕に寄りかかってきた。……無欲ね、確かに俺は無欲だ。セラーナ以外はな。
「……俺は全部だから」
 ぽつりと言う。セラーナは何が? とはさすがに聞いてはこず──ぽつりと「なら、私も今度からそう言いますわ」とだけ言った。
 嬉しかった。


「取り込み中すまないが、その……扉の前で新婚ぶりを見せ付けるのはやめてくれないか。結婚してない者達も多く居るのでな」
 と、辺りをうろつく──見回りをしている、だが──ホワイトランの衛兵に茶々を入れられたのは、また別の話だ。



------------------------------

ご無沙汰してた「ある日のどばきん」シリーズのホワイトラン版です。
これまである日のどばきんは何回か書いてきましたが、今回は結婚後の話なんで、若干Relationshipが変わってます。思い付きをだらだら書いてみました。
ある日のどばきんシリーズはいつも思い付きから筆が進む感じで書いてます。

えー前回の結婚話は本当に大変失礼しました。お目汚しにも程がアル・・のにもかかわらずまた甘い話書いてるジャマイカ! と怒ってる方がいたらごめんなさい。書いちゃいましたーw
だってセラーナかわいく書きたいんだもん!w
まぁでも結婚おめでとうという言葉も戴いたりしたので感無量ですw

今回の話の冒頭の「種蒔き云々」は一年前ほどにかいた二次創作カテゴリ内「寝覚めは最悪? それとも最高?」という記事に書かれてあるので興味のあるかたは是非。

久しぶりに定期更新日になんとかブログかけた。よかった><;
感想その他はいつもどおりお待ちしております。返事は200%確実に。

それでは次の更新日にまた^^そろそろゲームの方の日記もあげていきたいな、と。


拍手[0回]

PR
URL
FONT COLOR
COMMENT
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
PASS

TRACK BACK

トラックバックURLはこちら