02.01.06:02
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09.21.22:51
ひみつの たからもの
「しかし、なんでこうも、私の家は綺麗にならないのでしょうかねぇ」
三本のアームの内、物を掴んだり、動かす腕はたった一つしかない。
その唯一の一つのアームには、簡素に割った竹を接着剤で合わせ、先端にはボロ切れ──元は薄汚れてもいない代物だったのだろうが──が数枚合わさって一つにしばったものを竹が挟みこむ形で加えられていた。絞った先はばらけていて、持つ者のアームが上下左右に動いては、ぼろきれがばたばたと不規則な動きをする。所謂ハタキとよばれる物だった。
そんな、前時代のさらに前時代の掃除用具だったものを、薄汚れ、ところどころに錆が浮いた金属のアームが掴んで、かつては棚の役割を果たしていた場所を叩いていた。勿論掃除の為である。埃を飛ばし、床に落ちた埃を次の段階で使う箒ではたくというのが、彼の日課であった。──爆弾が投下する前も、その後である今日に至るまで。
三本の腕を持ち、腕の中心にある筒からは炎を吐き出しながら浮いた状態で自立移動できるロボット、商品名はMrハンディ、そして持ち主が名前を付けたその者の名前はコズワース。爆弾が投下されても壊れる事無く、彼(?)は二世紀の後にかつての主人が家に戻るまで、ずっとこの日課をこなしていた。
主人が無くなってから最初の数十年は一番つらかった、何故なら掃いても掃いても空から死の灰が降ってきたのだから。それは放射能を帯び、彼の金属製の身体や内部にあるメモリーパッドに損傷は与えられなかったものの、周りに生き残っていた人間はばたばたと体に痣のような斑点をつけて死んでいった。
余所の家の主が死んでも、コズワースは一人家の管理をし続けた。毎日ハタキで埃を落とし、それを箒で玄関に吐き出す。この繰り返しを二世紀続けてきたことで、主人の家に放射性降下物の影響がなくなったのは一世紀を過ぎてからだった。爆弾が直下ではなく、相当南のボストン郊外に落ちたのも影響を薄める要因でもあったのだろう。やがて死の灰は降らなくなり、空を覆っていた分厚い雲は徐々に姿を消し、やがて空に再び青空が見えるようになったころ、主人が帰ってきたのだ。
そして、家の主が戻ってきても、コズワースは欠かさず毎日の日課を行っていた。そこで、最初の台詞に戻ると言うわけだ。
コズワースはそんな愚痴とも諦めとも似つかない言葉を吐きながら、アームを器用に動かして棚をはたいていた。別の棚に移り、上から順にハタキを叩こうとした時、ハタキの持ち手が根本に近すぎたせいで、棚の上部まで届かない事にきがついた。
アームが二本あれば、片手でハタキを持ち、もう片方で持ち手の位置をずらす事も出来るのだが、生憎それが出来ない仕様のため、仕方なくコズワースはアームをめいっぱい上げることで、棚の上部にハタキが当たるようにしようとした。……ギギギ、と金属がしなる音がする。
「もうちょっと……もうちょっとです!」
と一人ごちたものの、不自然な大勢でいたせいでコズワースの筐体がぐらりと揺れた。おおっと、と言いながら慌てて体勢を戻そうとした矢先、伸ばしに伸ばしていた腕がぶん、と弧を描くように動いたせいでアームからハタキを離してしまった。かたん、と音を立ててハタキが床にはね落ちる。
「ああもう、落とす位なら最初からこうしておけばよかった」
などと言いながら、コズワースが床に落ちたハタキを再び握ろうとした時、ちゃりん、と音が背後で鳴った。──また何か落ちたようだ。
「やれやれ、今度はいったい何が──」
ハンディ型ロボットの特徴である、三つのセンサーアイのうち一つをぐるり、と背面に動かして、センサーアイ内部にあるズームレンズをフォーカスしながらそれを彼のメモリーに認識できる位に確認した時──コズワースの動きが止まった。
「ん……んん、……朝、か」
薄い目を開けつつ、周りを見ると、ガラス片が申し訳程度にくっついている窓の向こうから日差しが目に飛び込んできた。既に日は青空の中腹程度まで上がっており、だいぶ寝過ごした事が見て取れる。
それに、こっちもな。と言わんばかりに内心ごちてから、俺は自分の腹に手を当てた。──空いている事を証明するかの如く低く唸るような音が手を通して耳元に届く。
隣で寝ていた奴はもう起きているのか、自分が寝ていた部分を除いてベッドは冷たくなっている。ふあぁ、と欠伸をしながら身を伸ばし、さっと起き上がって身支度を整えると、寝室として利用している部屋を出た。
部屋は仕切りが点在するものの、個室となるであろう仕切るための扉は既に無くなって久しい。壁に開いた枠をくぐり、部屋から出てダイニングの方へ向かうと、カウンターテーブルを囲むようにして、コズワースと、隣に寝ていた男が顔を突き出すようにして見合っているのが見て取れた。何を見ているんだろう?
「おはよう。……寝坊しちまったな、悪い」
声をかけると、コズワースと彼が同時にこちらを見た。ふっ、と男の方が笑みを浮かべてくる。
「おはよう、マクレディ。気にしてないよ。朝ごはん、食べるか?」
俺の名前を呼んだ男に、俺は黙って首肯してみせるとカウンターテーブルに置かれてあったものを皿ごとこちらによこしてくる。ソールズベリー・ステーキのベリーソース掛け。もう何度となく口にしたものだが、文句も言える立場でもないし文句を言うつもりもないため、俺は黙ってそれを口に運びつつ、
「ありがとう。……さっきから何をじっと見てるんだ? ネイト?」
彼の名前を呼ぶと、ああ、と言いながらネイトは、彼とコズワースの間に置かれてあった物をつかんで、俺に突き出した。
赤茶けたそれは、円状の先端から、ネイトと呼んだ男の手に握られている細長い板状のものがくっついていた。板状の部分には幾重にも彫り込まれた筋がある。それは長いものもあれば短いものがいくつもより合わせられており、それと対になっているであろう錠前の構造が難解なのも見て取れた。──鍵だ。
「ずいぶんひどく腐食された鍵だな、どこで拾ったんだそんなもの」
「拾ったんじゃないんだ、コズワースがずっと持っていた物らしいんだ」
え、と言うより早く、コズワースがセンサーアイを三つ同時に縦に振った。
「先程掃除してた時に、ちょっと体勢を崩した際に私の内部にあるインベントリ・スペースから落ちたようでして。
この鍵の事を私もずっと忘れておりました。旦那様から預かった物にも関わらず、旦那様が戻ってきて大分経つというのに、今頃になって出てきたのですから」
へぇ、二世紀ぶりに主の元に戻せるってわけか。ふんふんと納得しながら俺はソールズベリー・ステーキを平らげると、
「……で、ネイト? これは何処の鍵なんだ?」
促すと、ネイトは困ったような表情を浮かべた。おや、と思うより先に彼が口から出た言葉は、
「分からないんだ。……俺がこの鍵をいつ、コズワースに預けたかもわかってなくて。何の鍵かも思い出せない。……コズワースは預けた時の事を、見つけたと同時に思い出したみたいなんだけどさ」
勿論です、とコズワースはちょっと自慢気に言った。
「私が覚えているのは、旦那様が出かけてきた後に、家の扉を開けるなり私に近づいて、こう仰ったのです。
『これを預かっててくれないか、コズワース。……これか? これは大切なものが閉まってある所の、鍵なんだ。俺の秘密の宝物が』と」
これは、二世紀もの間、忘れられていたものの話。
一つの事象がきっかけで、再び巡り合えるお話。
──そして、その出会いが、また新たな出会いを繋ぐ話。
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これまた半年ぶりに文章を書いてみたが、どんどん語彙力が落ちてる気がするぞい。
ご無沙汰してます。もう秋めいてきた季節ですが、いかがおすごしでしょーか。
上記の話は冬コミ(C97)で出す予定の新刊の物語の冒頭一部分です。文章化としたせいで割と詳細に書いてますが、漫画にすれば細かい部分は端折ると思われます。
当初、前回のブログに書いてた話でいこうかな、と思ってたのですけど、またシリアスの話に戻るのはちょっと嫌だな、と思い、短編ショートショートなものを作ってみました。クエストMODとしてあってもおかしくない話かもしれません。 …まぁ、もしかしたらこの話もボツになって別の漫画を描くかもしれませんけど。
コンセプトは、「もう一つあってもおかしくないじゃないか」です。何がもう一つあってもおかしくないかは秘密。
ブログタイトルはそのまま新刊のタイトルになる予定です。今回も歌から取ってる上に邦楽のタイトルです。検索すれば出てくると思いますが俺と同年代じゃないと誰だこの歌手は、になるかもしれません。はっはっは。
とはいえ、中の人はまだネームも書いてなければ物語のあらすじは脳内に入ってるため、まだまだ執筆段階には至ってません。色々あったのもあるせいで。
いい加減決別を付けないと、自分がどんどん罪悪感と背徳感とやるせなさで押しつぶされて同人活動を辞める可能性もあるので(今は考えてませんが・・)、何とか折り合いがつけられるよう、向き合っていく所存です。相手とね。
まぁ、ネタがこうしてぽつぽつ浮かんでるのだから、やる気はなるんでしょう、たぶん。
さてこっからはちょっとゲイ向け(?)の記事になるので、見たくねー人はブラウザバァァック!!
一応区切っておきまっせ。
最近ついったでシムズの話を呟いてませんが、時々遊んでます。
パパマクが結婚しちゃったので、ひと段落してますね(爆笑
結婚式の一幕。ネイトがマクレディに情熱的なキスをしてる図(笑)
結婚式は大成功で、色々と買える家具が増えたりしました。
末永く爆発しろ。
並行してFO4もプレイしてます。
大体がMODプレイですけど、ポーズMODでSSS撮ってというのはいつも通り。
本来ならばTumblrとかでSSの方は公開してるんですけど、裸とかはAIが即時察知して公開停止しちゃうのが辛いですなぁ。昔はやばいゲイ動画とか沢山見れたのになー(俺は見てませんが)
なのでこっちの載せておきます。
まぁあまりいいポーズじゃないので俺は気に入ってないんですけどね・・w
俺が前にここで紹介したアレ用のMODはVerUPしたらAAF必須になったので、AAFを入れたくない俺は旧Ver使ってますねえ。
なので今後もVerUPの記事は見込めないと思ってください(笑)
ついったとかに載せてなかったもので同じ構図の別Ver。
一枚目の、地面の血だまりは全部マクレディが流した血です。出血多量でとっくに昇天してもおかしくない血液量ですねえ。
パパがぼーと突っ立ってますけど、tfcコマンドで操作を受け付けない状態になってるせいで、パパの魂は抜けてます。そういうときでも攻撃受けたら死にますし、画面がブレたりしますけどね。
という後半よくわからない二弾構成でお送りしました。
次は来月辺りに書くと思います。また見に来てやってくださいませ。
ではでは。また次の更新日に。
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